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子供に恋人ができるのか心配で…

《 ライチ局長の勝手にチャイナ Vol.4 》

その時は、「子供に恋人ができるのか心配だ」という話になった。
10数年来の広州の友人である医師が招いてくれた宴会の席だ。

友人は、広州の医科大学時代の親友5人と卒業後も家族ぐるみの付き合いを続けている。友人同士、年齢も同じだから、子供の年齢もほとんど同じ。
小さい頃から幼馴染として育ってきたお互いの子供達はよく知った仲である。一年で、何回か、顔を合わせては近況を語り合っている。

私自身は、友人の日本人友人代表という不思議な立場を与えられ、この親友グループの集まりに何回か加えてもらっている。
実は、広東語で彼らが話している内容はほとんど分かっていない。

でも、集まりに招かれる度に、近所の子供が大きくなっていくのを見守るような気分で、彼らの子供の成長を楽しみにしていた。

ちなみに、彼らは医師の子供なので、家庭環境は申し分ない。
今時の格好に身を包み、スタイルも良く、スマートな受け答えをする。

ただ、医師6人の子供達は、1人残らず高校卒業後に海外の有名大学に進学したか、進学を目指していた。

広州の上流階級である彼らの子供たちが、なぜこんなにも海外志向が高いのか気になって、一度友人に質問をしたことがある。

友人の回答は、

「詰め込み型の中国の教育では子供に自由な発想が育たない。海外の教育を受けさせて、広い世界を体験させてあげたいのだ」

ということだった。

中国の高度な教育を受けて成功を収めた彼らが、中国式の受験教育に限界を感じているのは、とても興味深い点だった。

さて、そんな中、今年の集まりは、広州市内の宿泊型医療療養施設に泊まり込みで行われた。こんな所、医師の友人に招かれない限り、多分、来ることはない…。

コロナの影響で、今年は子供たちも全員留学先から帰国している。

最高級の茅台酒で、父親たちが何度も乾杯をし、それぞれ顔が赤くなり、声が大きくなっていく横で、6人の子供たちは皆、静かに携帯をいじっていた。

そんな姿を見かねた母親の1人が、急に子供の恋愛事情について心配をはじめた。

「この子は、最近、全く家を出ないのよ。ずっと携帯をいじってばかりで、ゲームしたりとか動画を見たりとかばかりしているの。こんなことでは出会いもないし、恋人ができるのかが心配よ」

とのこと。

周りの母親たちは、それぞれに思い当たるところがあるようで、一気に「ウチも、ウチも」と同意しはじめた。

子供たちは、携帯から目を離さない。

「そんなことないだろう。20歳前後の若者なんて、きっと親の知らないところで恋愛しているだけでしょう…」と言いかけて、ふと考え込んだ。

確かに、今の中国の子供たちは、どんな形で恋愛をするのだろうか…。

買い物は、E Cサイトで楽しむ方が断然便利になった。
映画といっても、携帯上でも映画もドラマも楽しめる。
交通が便利になって、街中で車がないと移動できないところはない。
美味しい食事は、デリバリーサービスがウチまで運んでくる。
話をしたくなれば、オンラインを通して、いつでも顔を見て話ができる。

なお、広州市内では、コロナ感染を効果的に抑えていて、特に外出に規制はない。

だけど、一体、今の中国人は、どんな時に外に出ようというのだろうか?

そう思って、母親に質問してみると、

「確かに…。今は、中国はすごく便利になったのよ。スーパーの商品もオンラインで届けてくれるようになって、毎朝、時間指定して注文したら、ちょうど帰ってくる時間には食材が届くから、仕事帰りに寄り道することがなくなった。今の中国では外に出ていく用事はあまりないわね。」とのこと。

コロナ禍による外出規制で、中国のオンライン世界での便利さは、更にレベルアップしたように思う。

…、と同時に、これだけ便利になると、コロナが終息した後に、人は以前のように外へ出ていくのだろうか?という心配も生まれる。

家の中での暮らしが最適化された世界。

いや、正確に言うと、ヴァーチャルな世界と現実世界のリンクが強くなり、ヴァーチャルな世界の方が、居心地がよくなりつつある世界。

家という空間は、もはやヴァーチャルな世界に浸るために最適化された場所になっているのかもしれない。

父親たちは顔を赤くして白酒を乾杯し続けている。

携帯から目を離さない子供たちは、ひょっとしたら携帯のS N Sを通じて親の文句を言い合っているのかもしれない。

これこそが人類の進化…、ということなのか。


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