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かかわり方の学び方:馬と、ひとと|遠野(別編「インタビューのワークショップ」)

2024年2月11日(日)〜15(木)
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*受付終了(1/22)

馬が半分、ひとが半分の滞在プログラムをひらきます。午前は「馬とひと」、午後は「ひととひと」のコミュニケーションを扱う2色パンというか螺旋構造ようなワークショップで、朝から昼は遠野の徳吉英一郎さんを軸に、昼すぎから夜と5日間の全体は私(西村佳哲)がファシリテートします。

初の試みで、「インタビューのワークショップ」の別編になると思う。少し説明します。

最近「インタビューのワークショップ」は遠野・安曇野・清里の3箇所でひらいています。安曇野では穂高養生園という場も手伝って、身体を意識しやすい。清里は12月末ということもあって、一年をふりかえる機会にもなりやすい。

安曇野/穂高養生園(2023)
清里/清泉寮(2022)

遠野/クイーンズメドゥ・カントリーハウスにおける「インタビューのワークショップ」の特徴は、「馬がいる」ことです。
クイーンズメドゥでは、パドックや馬房に、でなくその辺にふつうに馬がいる。もっぱら草を食んでいて、気がつくと近くで耳を立てていたり、木立を駆け抜けている。

Photo: Ichiko Uemoto


2023年2月に「馬と暮らす、その方法と実践」というワークショップをひらきました。各地から6名が集まり、徳吉さんから馬とのかかわり方、馬と生きてゆくことの可能性を学び合った。終了後に書いたレポートを部分転載します。

最初は鞍をのせて乗馬もしてみたようだ(クイーンズメドゥの話)。でもメンバーは旧来の「調教」に段々と違和感を覚えるようになり、馬をめぐる一般常識がすこしずつ外されてゆく。ハミ(銜)を付けない。鞭を持たない。馬房で飼わず、木立に放牧する。

中でも徳さんは、使役動物として、つまり馬をその利用価値で見てそれを最大化する方向に洗練されてきた、旧来の調教手法から離れてゆく。

「馬とより自然で調和的な関係を築きたい」と思う人は世界各地にいるようで、数少ない先駆者が、その経験を本に書いたりYouTubeに動画を上げている。徳さんは10年ほどの時間をかけて、本や動画で学んだことを、実地でコツコツ試していった。

note から

徳吉さんと私の出会いは、震災のあった2011年にさかのぼります。三陸沿岸部から秋田に向かう途中、ふと思い立ってクイーンズメドゥに寄った。『ひとの居場所をつくる』の執筆準備を始めた頃で、田瀬理夫さんが手がけた場所を訪ねておこうと。初めての訪問でした。

2011年

車から降りると二頭の馬が「だれ?」という感じで近づいてきた。鼻面で匂いを嗅がれて。建物に入ると、当時管理を任されていた徳吉英一郎さんがいて、そのままインタビューさせてもらう流れに。そのときの話は『いま、地方で生きるということ』に収録されています。

応答と反応は違うんです。たとえば馬も、力づくでかかわれば反応はする。でもそれは心を殺して従順になるか、恐れを感じて逃げるかなんです。応答じゃあない。

応答のポイントを見つけるのはとても難しくて、たとえば乗馬クラブのレッスンでは、僕はそれを知ることができなかった。馬の「乗り方」は教えてくれます。扱い方と、馬に対する指示の与え方も丁寧に教えてくれる。でもそれで馬から返ってくるのは、いつも同じような反応なんですよ。

馬の話が、そのままひとの話に聞こえた。

子どもとの関係でもそうだけど、お互い大胆になってくれば、かかわり合いはダンスのようになり、自由な表現になる。はたから見ていると、一見制御が効いていなさそうで危なっかしい。

でも両者の間には、未来を一緒につくっているような安心感が確固とあるんですよね。
おそらくほとんどの人が、馬と人の間にそんな応答のポテンシャルがあることを知らないんじゃないかな。

いま、地方で生きるということ』より

私はその少し前に、自分のインタビューが以前と変わってきたことに気づき、「インタビューのワークショップ」を始めるようになって、ちょうど一年くらい経った。そんな頃だったと思います。

徳吉さんが聞かせてくれる話は『わかるわー』という感じだった。「未来を一緒につくっているような安心感」は、ひとの話をきいてゆくとき、自分が感じることとすごく近い。
ききながら自分の話はしなかったけど、『そうそう!』という気持ちで頷いていた。「馬とひと」を語る彼の言葉が「ひととひと」の話に重なる。対人関与。先生と生徒、親と子ども、上司と部下、そして友だち同士の相互的なコミュニケーションと。

移動中だったので、その日はすぐにクイーンズメドゥを離れた。追って年に何度か訪ねるようになり、徳吉さんと話す機会も多々あり、親しさはある、けどそれほど深く話を交わす機会のないまま10年ほど経って。最後の約3年は徳吉さんもクイーンズメドゥから少し離れていた。

2023年2月

グッと距離を縮めたのは2月の「馬と暮らす、その方法と実践」でした。クィーンズメドウの若手2二人があらためて徳吉さんから学ぶ時間を、集まったメンバーと拡大的にすごした。

その時間を経たGWの「インタビューのワークショップ」では、5日間の最初に、徳吉さんに来てもらって「馬とひとのコミュニケーション」を教わる時間をとるようになった。滞在中、馬とどうかかわればいいか。どう近くにいるといいか。どんなふうに一緒に歩けるか。

2023年4月

今回はそこからさらに三歩くらい踏み込みんで、馬との時間を初日の数時間だけでなく、毎日半分設けて、かかわり方の学びが「馬」と「ひと」で螺旋を描くような4泊5日を集まった方々と一緒につくってみたいと思います。

(この人はQMの松井さん。徳吉さんではない)

「インタビューのワークショップ」は、ひとの話を「きく」態度や手法の再構築を通じて、それぞれが「はなす」ことを再体験する滞在プログラムで、私の本でいえば『自分をいかして生きる』のつづきであり、『かかわり方の学び方』の実践編です。

いつもの、4泊5日を丸ごと「ひととひと」の〝きく〟〝はなす〟に使う「インタビューのワークショップ」に関心のある人は、今回でなく別の機会に参加していただく方がいいと思う。次は5月に同じく遠野でひらきます。馬はそのときもいます。
でも、馬を通じて非言語的に得られるものには不思議な柔らかさがあるし、その方がフィットする人もいるんじゃないかな。馬とかかわることで、より感覚的に、自分の「きき方」を再検討できるんじゃないかと思う。

真冬の遠野です(屋内は暖かい)。馬にもひとにも自分にも興味があって、この日程の都合がつく!ひとは、どうぞお申込みください。

かかわり方の学び方:馬と、ひとと|遠野(別編「インタビューのワークショップ」)
2024年2月11日(日)〜15(木)

会場:クイーンズメドゥ・カントリーハウス
定員:7名
参加費:89,000円
宿泊費:71,000円
>お申込み|Googleフォーム
*部屋は相部屋です

参考テキスト:
馬とゆけば|「馬と暮らす、その方法と実践」レポート(note、2023年3月)

清里の「インタビューのワークショップ」|告知ページ(note、2023年11月)


かかわり方の学び方
ひとの居場所をつくる


クイーンズメドゥ・カントリーハウス(Queen's Meadow Country House)について

私は『ひとの居場所をつくる』(筑摩書房・2013)の執筆をきっかけに、田瀬理夫さんが仲間たちと育ててきたこの場所を訪れるようになりました。

クイーンズメドゥは門戸が開いているようないないような、半開きの場所で、現時点ではつながりのある人々の滞在が中心です。来年から本格化する「ハヤチネンダ」という取り組みを通じて変わってゆくと思いますが、一般の宿泊施設のように予約して訪れるのはやや難しい。

広い敷地の中に馬がいます。雄が2頭。雌が3頭。乗馬用でもセラピー用でも使役動物でもない、かといってペットとも違う、同じ時空間をともに生きる存在として放たれている。野生馬ではない。不思議なあり方です。

ランドスケープのデザインは田瀬理夫さんで、建物の一つは住宅設計の名手・永田昌民さん。私は最近つくづく「なにか建てるときは、建築家を探す前に、ランドスケープデザイナーか造園家に相談して土地利用プランから考える方がいい」と強く思うのですが、その重要性を学べる場所の一つだと思います。

食事について

ワークショップ中の食事は、弘前で「ゆぱんき」というカフェを切り盛りしてきた山崎彩子さんが、一緒に滞在してつくってくれます。

「ゆぱんき」は不思議な場所で、オーナーが入れ替わりながらつづいている店。山崎さんはたしか6代目。山崎さんの中で、次の人にバトンを渡すタイミングが来たようで、まもなく弘前から新しい場所へ移る様子。人生の移行期。

Instagram @yupayakoより

滞在プログラムは、空間の質と清潔さ、そしてなんといっても〝食〟に支えられる部分が大きい。彼女との出会いは「岩木遠足」でした。クィーンズメドゥの滞在や、陸前高田「箱根山学校」でもお料理をお願いしています。いつも評判がいい。お楽しみに。