サンタさん

小学四年生の時分、私は母親に論争をしかけた。

「お母さん。サンタさんはほんとうにいるの?」

「いるわよ。いい子にしていればちゃんとプレゼントを持ってきてくれるわ」

「いい子にしていればプレゼントを持ってくるかどうかと、それがサンタさんであるかどうかは関係ないよ。白状するとね、プレゼントを枕元に置いているのはお父さんで、調達しているのは叔母さんなんじゃあないかと疑っているんだ」

「あらなんてことを云うの。まぁでもたしかに、サンタさんには不思議な力があって、私も見たことがないから疑わしいわよね」

「見たことないサンタさんに、なぜ僕が欲しいものが伝わるのさ。お父さんとお母さん以外に、欲しいものの話なんてしていないのに」

「サンタさんには何でもお見通しってことだわね。わかったらもう寝なさい。サンタさん来なくなっちゃうわよ」

「僕が大人になって、誰かと結婚して、子どもが産まれたとして――」

「ん?」

「僕がまだサンタさんのことを信じていて、でもほんとうはサンタさんなんていなかったとしたら――僕の子どもにはプレゼントが届かないことになる」

「⋯⋯」

「ほんとうのことを、教えて欲しいんだ」

――諦めた母親は真実を語り出した。

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