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龍神様のおかげ


今回は、神様の夢のひとつ、夢に現れた龍神様であろう方のお話です。

この夢は18歳の春頃に見た夢です。
この頃もまた荒れていて、親と絶縁するかもしれないという程の大喧嘩をして自分は無価値なんだと言うことを感じていた時期でした。

そして1年前と同じく、死を決心した頃のことです。


少々長くなります。



龍神さまの夢



ふと気づくと、目の前に大きな本殿のような御屋敷がありました。

後ろを振り向けば家があり、こんな所にあるなんて有り得ないのですが何故かその建物に見覚えがあり、私はそのお屋敷をジッと見つめていました。


誰も住んでいないように見えた建物には、光も着いておらず人が住んでいる気配すら無かったのです。

ですが私は何故かモヤモヤとした違和感があり、そこの建物の扉を開けてみると、一気に温かい空気が私を包み込みました。
開けた瞬間に光が灯り、それと同時に流れ込んでくる懐かしさと切なさ。


本能が覚えているのか、玄関に上がり廊下を突き進み、階段横の奥の左手にある襖に手をかけました。
私の足はまるで誰かの元へと向かっているかのようにしっかりと進んでいました。

襖を開けると、何かを手に持った男性がそこには居ました。



綺麗なグレーにも白髪にも見える長髪と、淡いグレーがかった青色にも緑色にも見える着物。
そして、プリズムホワイトのような光の加減で色が変わって見える不思議な羽織を着ていました。

その男性は私と目が合うと、驚いたように「あっ」と声を漏らしていました。


この建物に入ってから感じる懐かしさと安心感、そしてその感情は男性を見て確信に変わりました。
"私の大事な場所だった"んだと。

男性を見た瞬間に溢れ出した感情を抑えきれず、私はすぐに抱きつきました。
それに対し、困ったように笑った男性は優しく微笑んでいました。


「また来ちゃったんだね、困ったなぁ」


父親の声と似ている訳ではありませんが、とても安心する包容力のある優しい声色です。
私はこの声が大好きでした。
ボロボロと溢れる涙が止まりませんでした。


「なんで忘れていたんだろう、私はここが大好きだったのに。久しぶり、ずっと会いたかった」


男性と会う前はフワフワとした懐かしさを感じる曖昧な何かが流れ込んでくるだけでしたが、男性を見た事によりそれら全てを思い出しました。

溢れ出す程に流れてくる記憶と思い出、感情でとても胸が締め付けられました。


忘れたくなかったのに、大好きだったのに。
なんで忘れてしまっていたんだろう。この空間を。


そんな私の溢れ出す疑問を男性は答えるかのように、優しく頭を撫でてくれて


「僕が忘れさせるようにしたんだよ」


と言いました。
それに対して「何で?」と聞き返すと


「覚えてない?君が幼い時のこと」


そう言われても思い出せず、唸る私に


「あれ、その記憶まで消しちゃったかな…。とにかくね、君にとって決して良い場所では無いと思うんだよ。君の住む世界とは…ほら、ちょっと違うでしょ?」


そう言われ、窓を指さされました。
私の住む世界と少し違った空間であることは一目瞭然でした。

この空間は私の住む世界とは違う時間の流れや概念、別の空間なんだと言うこと。
それは分かっていました。

それでも、忘れたことが嫌だったのです。


本当に好きで大切な場所だったんです。
ぐんぐんと思い出し、蘇る思い出が沢山ありました。

今の私になって初めてここへ来た日、古びた戸を開けて見たこともない不思議な男性がいて
声をかけてみれば嬉しそうに笑った。


「久しぶりだなぁ」


そう言って優しく迎え入れてくれました。
何かある度にここへ訪れ、その度に優しく迎え入れてくれて。

ここへ来る度に忘れていた記憶は戻ってきて、思い出してはまた消えていました。
家庭環境の事もあり、ここが心の支えになっている程だった事も全て思い出しました。


家族の形が無いにも当然だった私にとっては、本当に嬉しく、何より唯一安心出来るもうひとつの家のような空間が出来た事が嬉しかったんです。
本当に私のもうひとつの家だと思っていました。

何度も何度もこの家に足を運ばせていた事も思い出し、忘れていたことがとても悲しくて溜まりませんでした。

「本当に懐かしい…私ここ凄く大好きだったんだよ。あなたの事も凄く大好きで、ここが私の家みたいに思ってた」


思っていることを素直に伝えれば、嬉しそうに笑って私の垂れ下がってしまった前髪を耳にかけてくれました。


「そんな風に思ってくれてたんだね」


嬉しそうな反面、少し悲しそうに見えました。


「君はもう運命なんだろうね…」


その「運命」という言葉に強く「そうだよ」って思ったのを覚えています。


「もう忘れさせないで。忘れたくない」


私のワガママに困ったように「うーん」と唸りましたが、「お願い。ここが心の支えなの」と伝えれば仕方なく「分かったよ」と言ってくれました。


「だけど、ここばかり来ちゃいけないよ。これだけは約束してね」


そういう男性に私は勢いよく頷きました。
それに対し男性も頷き微笑んでくれました。
男性はふと顔を上げたかと思うと、「もう今日のところは帰りなさい」と促されました。

そう言ってまた、帰らせて記憶を消されてしまうんじゃないか。と警戒して「まだダメ?」と聞き返すと


「良いから帰りなさい。また来ればいいんだから」


と笑って私を玄関まで見送ってくれました。

私は仕方なく戸に手を掛け、そんな私を後ろから見守る男性は私に、「またね」と言って手を振ってくれました。


私もそれに応えて私は戸を開けて自分の世界へと戻りました。世界が変わる瞬間は、何となく分かります。

自分の住む世界に戻って今出た建物を確認したその時、少し遠くから慌てたようなお母さんが私に駆け寄り抱きついてきました。
何事かと聞いてみれば、今ここで地震があり、私の背丈ほどの波がここを襲ったんだと言っていたんです。

私が男性の家にいた時間は長くても数時間だったはずですが、母親曰く3日ほど経っていたという事でした。


「何も無くて良かった」


そう言って私を抱きしめる母と共に家に戻り、また普段通り生活をしていましたが
その日また父親と母親の喧嘩が始まりました。

私はすぐに外に出て、その御屋敷に向かいました。
戸を開けば、足音が近づいてきて私の目の前で止まる。


「…また来たんだねぇ」


小さなため息をついて私を見つめる男性に頷く。


「私ここで寝る」

「何言ってるの…」


半ば呆れたように笑って私の顔をのぞき込むように見ると「どうかしたの?」と優しく問いかけてくれました。
私の中ではいっぱいいっぱいで、堪らなかったので「助けて欲しい」と言うのがその時の一番の感情でした。


「私の住む世界はここからじゃ、あなたの住む世界からは見えないの?」


男性は少し難しそうに考えた後に、頷きました。

私は自分の人生で経験した苦しみ、楽しかったことを全て話しました。
頷いて静かに聞いてくれている男性でしたが、私は先程男性が「見えていない」と頷いたのは嘘なんだと感じました。


それでも男性は優しく私の言葉を受け止め、また暫くすると私を帰るように促しました。
落ち着いた私はその通りに戸を開き、外に出てお屋敷を出ました。





今回の夢も次回で自分なりの解釈、夢で見た詳しい光景を書いていこうと思います。


ではまた後ほど

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