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質問:看護師の多くの業務が「診療の補助」ですが、「それは看護じゃない」と言われます。私たちが普段行っているものは何なのでしょうか?

「私たちが普段行っているそれ」は単なる診療の補助で、それ以上でもそれ以下でもないでしょう。
「療養上の世話」が優れている訳でもなく、「診療の補助」が劣っている訳でもなく、それぞれ独立したものです。
ただ、私は「私たちが普段行っているそれ」はいわゆる看護と言えると思います。

確かに「診療の補助」は「それは看護じゃない」という声は聞きますね。
また、個人的に言われることが多いと感じているのも、おっしゃる通り「診療の補助」に関する内容だと思います。

様々な人が看護を定義していたり、看護を語っていますので、「それがあなたにとっての看護なんですね」と言ってしまえばそれまでなのですが、それでは元も子もないので、私の考えは「誰にでも当てはまる考え方」と「個別に当てはまる考え方」の2通りで看護を考えみようと思います。


・誰にでも当てはまる考え方
ここでは、保健師助産師看護師法から看護を考えます。
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=80078000&dataType=0&pageNo=1
第五条で、看護師の業は「療養上の世話」又は「診療の補助」であると定義しています。
また、第三十七条で、「診療の補助」は医師の指示がなければ「①診療機械を使用」、「②医薬品を授与」、「③医薬品について指示」、「④その他医師又は歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずるおそれのある行為」をしてはならないと定義しています。ただし、「臨時応急の手当をし、又は助産師がへその緒を切り、 浣かん 腸を施しその他助産師の業務に当然に付随する行為をする場合は、この限りでない。」とも定義しています。

また、看護は看護師が患者やその家族へ何かを提供する中で生まれると考えるのが自然でしょう。
その提供するものは法律に定義されている業だけでなく、回復過程の支援や退院調整など相手の利益を最大限にするための行動だったり、何気ない気遣いのように、法律では定義されていないものまで様々でしょう。
そして、何か一つ特別なことをすれば看護が行えたと言えるのではなく、「療養の世話」や「診療の補助」だけでなくそれらに分類できない大小様々な看護師の行為が結果として患者やその家族へ看護を行なっていたと後々気付くと思います。
つまり、看護は看護師が患者やその家族のために行う全ての行為から生まれると考えられます。

以上より、看護師が患者やその家族のために「診療の補助」を実践する限り、それは看護と言えると思います。


・個別に当てはまる考え方
これは所属している病棟や経験されている領域など千差万別でしょう。
例えば、質問者さんが言われたように「診療の補助」が「看護ではない」と言いたくなる気持ちがあるとするならば、例えばリハビリをして退院を目指す場所や終末期で最後をどう患者と過ごすか考える場所などかもしれません。
ただ、「診療の補助」として「疼痛コントロール」が適切に行えればリハビリはより意欲的に取り組めるかもしれないし、適切に「鎮痛薬や鎮静薬」が使用できれば終末期の身の置き所にない苦痛が緩和されるかもしれないとすると、それは看護と言っても良いのではないのでしょうか?

つまり、最初に記したように「それがあなたにとっての看護なんですね」という考えです。
命を繋ぎ止め次へ繋げることを求められる看護師、できる限り入院前の状態に近づけることを求められる看護師、患者やその家族の想いや考えに沿って最後を迎えてもらうことを求められる看護師など、いろんな経験があって、いろんな価値観があって、それぞれの大切なものがあって、そういったものをひっくるめて看護が生まれるのでしょう。

以上より、「診療の補助」を「看護じゃない」という人もいれば、「看護である」という人もいるでしょう。

看護ってなんなのでしょう?
看護師である今でさえ「看護とはなにか?」が曖昧な状態ですから、仮に診療看護師(NP)になったとして、もっと悩むかもしれませんね。
私は昔も今も、正直よくわかりません。
ただ、患者やその家族は看護師に何を求めているでしょうか?
おそらく、話を聞いてもらいたかったり、着替えるのを手伝ってもらいたかったり、痛みをなんとかして欲しかったり、便秘や下痢をなんとかして欲しかったり、早く退院できるように支援して欲しかったりすると思います。
患者やその家族にとっては、「それが看護なのかどうかは正直どっちでも良い」と思うのではないでしょうか?

「私たちが普段行っているそれ」が「それは看護じゃない」と言われたとしても、「あなたにとっては看護ではないのですね」という話で、「患者にとっては正直どっちでも良い」という話だと思います。
「看護はこれだ」って言えたらいいですけど、言えなかったからといって患者やその家族に何か不利益があるかと言われると私は疑問です。
また、それを言えたとしても喜んでくれるのは看護師だけでしょう。


「私たちが普段行っているそれ」がなんなのか?
自分なりに答えが見つかるといいですね。
私も自分なりの答えを探してみます。


一緒に頑張りましょう。

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