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[第7回]ベトナムの口三味線?基礎練習方法からみえる音楽と言語の関係

ベトナム訪音記 第7回

タイニン省の伝統音楽教室VỀ NGUỒN(ベェンゴン)にてベトナミーズギターのレッスンがスタート!楽譜の読み方を教わった次は口三味線?で基礎練習をします。

前回、譜面の読み方については
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第6回 ベトナミーズギターレッスン開始!ベトナム伝統音楽の譜面を学ぶ

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ベトナムの口三味線?

前回、非5線譜であるベトナムの伝統的な楽譜について簡単に紹介しました。最初に楽譜の読み方を教わったら、次はそれを口三味線のように読み上げる練習をしていきます。

くちじゃみせん【口《三味線》】〔「くちざみせん」とも〕
①口で三味線の音や曲節をまねること。
②うまく相手を丸めこむように言いかける言葉。口車。「━に乗る」
大辞林より

口三味線とは?という方は、東京藝術大学小泉文夫記念資料室の動画をご覧ください。

まさに三味線を口で真似るという感じ。

西洋音楽の場合ソルフェージュという基礎練習方法があるみたい。

そしてベトナムの基礎練習方法。
動画では録音された音ですが、足で踏むカスタネットSong Loan/Song Lang(ソングロアン/ソングラング)でアクセントの音を鳴らしながら音階名をリズムに合わせて読み上げていきます。

音程をとらない理由

3つの練習方法を比べてみる。
ベトナムの練習方法が口三味線やソルフィージュと大きく違う点は「音程」をとらないこと。それは何故だろうか?
音程を一緒にとったほうが曲も覚えやすいのではないかしら。


仮説①
口三味線をするのが難しい
ピッチベンド・ビブラートのような音程が上下する技法や、速いフレーズ、1オクターブ以上音程がジャンプするフレーズも多く、音程を真似る口三味線が難しく初心者トレーニングに向いていない。

仮説
A=ラ=440Khzのように絶対音を設定せず、キーによって音階名の指す音程が変わるため

例えばHò Nhất(ホーニャット)というキーの場合「Liu」は「ソ」に近い音になるが、Hò nai(ホーナイ)というキーになると全ての音が全音(フレット2つ分)上がるため「Liu」は「ラ」に近い音になる。
このように、「音階名」が差す絶対音がないため。

仮説
音階名で覚えるため

仮説②で書いたようにキーによって音階名の指す音程が変わる。音階名で覚えておいてしまえばどのキーにでもすぐ対応できることになり、音程よりも音階名で覚えていることの方が重要になるため。

今回練習方法を思い出しながらブログを書くにあたって、3つの仮説を立ててみました。滞在中は疑問を持つ余裕もなく必死に練習をしていたなぁ。
こうやって出てきた新しい疑問は、次ベトナム行った時に先生に改めて聞いてみようと思います。

ベトナム音楽と言語の関係

基礎練習を反復することで少しずつ楽譜にも慣れてきます。
非5線譜面である楽譜と今回紹介した基礎練習方法から、ベトナムの音楽が「言語」をとても大切にしている印象を受けました。

ベトナム語は11の母音と6つの声調記号があるとても”音”にシビアな言語。アルファベットに母音発音と声調の音に関する2種類の記号が付加された言語表記。その2つの中でも声調記号の発音はまるでピッチベンドのように音程をコントロールしなくてはならない。
そんな音楽的要素を持つ言語を操るベトナム人の音楽だからこそ、逆に音楽の演奏をする時には歌や語りなど言語からの制約があったり言語の持つ重要度が高くなっているように思いました。

長くなってしまうので今回はここまで。
音楽と言語の関係については、個人的にとても興味深くベトナムの音楽を学ぶ上でとても重要なことだと思っています。ここには書ききれない譜面上の記号と言語の関係や、歌詞とメロディの関係の例などを出して別の機会に改めて書こうと思います。

最後におまけ。ベトナム語の声調記号について。
発音もリスニングもとっても難しい上に、地域ごとの方言もたくさん。

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次回は
第8回 教室通いの日々と弦を押し込む独自の奏法について

次回はホテルからかよった教室のとある1日の紹介とベトナミーズギター独自の弦を押し込む奏法について

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