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【掌編小説】昔馴染み

 おや?ほらアレ、子供が逃げるように走って遊んでるよ……まあ、君にはもう聞こえやしないか。分かってはいるけどたまーに寂しくなるね。

 それにしても、君は本当に大きくなった。ああ身体の大きさだけじゃないよ、大人びたって意味でさ。身長ならまだ僕の方が大きくなれるからね。まあ年齢に関しても、同じと言えるのかな?

 なんにせよ、君が無事に育ってくれてよかった、僕だって他人事じゃないからね。今でこそ壁にある黒い染みみたいなものだけど、それくらいが丁度いいのかもしれないね。

 でもなんだ、光の下を歩くのが辛くなったなら、たまには寄りかかってくれてもいい、特に夏場なんかはね。僕が君の救世主さ。日傘でも差してごらん、すぐにでも守ってあげられる、なんてね。

 さて、黄昏れるのもこのくらいにしよう、こう日が傾くと、あー……つい態度が大きくなってしまうというか、背伸びした考えになってしまう。きっとあの揺らめく夕陽のせいだ、そうだろ?

 だから今日はもう静かにしているさ、ってやっぱり君には聞こえてないんだろうけど。
 夜が来ると僕は、君の側に居られないことも多い。だけど心配しなくていい、なんなら夜の方が僕は大きくなれるからね。それこそ君が住む大地を覆うほどに。

 それじゃあ、また明日だ。僕の昔馴染み。


「"影ながら"見守っているよ」

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