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書籍『イマジン?』

有川ひろ 2020 幻冬舎

久しぶりの有川作品。
単行本を1日1章ずつぐらいのつもりで、ゆっくりと読んだ。
少し前なら徹夜してでも一気読みしていたかもしれないが、今回はゆっくりゆっくり。
それは、私の体力や集中力がいまいちというだけではなくて、急いで読むのがもったいなかったのだ。
というのも、これは、長年のファンにはたまらない作品だと思ったから。

主人公は、良井良助。
別府出身。子どもの頃に観た映画『ゴジラvsスペースゴジラ』をきっかけに、映画・映像を作る側になることに憧れて育った。
今は、新宿でゴジラのディスプレイに見下ろされながら、チラシを配っている。
そんな良助が、制作という仕事の現場で成長していく物語だ。

雑誌掲載時に評判を聞いたようなうっすらとした記憶はあったが、前情報ゼロに近い状態で読み始めた。
そして、非常に興奮した。
だってですよ。第一章のタイトルは、『天翔ける広報室』。このタイトルだけで、一気にテンションがあがらないわけがない。
あの作品を思い出すタイトルで、原作のあるドラマを撮影する現場に、良助は関わることになるのだ。

ドラマや映画の裏方の一部である、制作。ロジスティックスを担当する雑用というか、隙間産業というか、土台を支える部門。
私は映像の裏方の役割分担をよく知らないので、職業ものとして楽しむこともできたが、それ以上に、あのドラマやあの映画の裏側ではこういうことがあったんだろうなぁという想像につながって楽しかった。
これまで映像化されてきた有川作品が、どれだけ大事に作られてきたかを教えてくれる物語だと思ったのだ。
これはあの時のとか、きっとあの作品でとか、それぞれの映像が目に浮かぶようだった。
あのドラマやあの映画の、キャストやモデルになった人たちと再び出会えたような嬉しい読書となった。

私にとってはファンサービスをいただくような贅沢な一冊であったが、もしかしたら、違うかもしれないけれど、映像化されるたびに現れるアンチな人への抗議のようにも感じた。
ここまで大事に大事に作られているものを、知りもしないで、観もしないうちから、否定するのか。
そんな風に、作る側に立つと、感じるのではないだろうか。
もちろん、多くの人にとって残念なケースというのもあるかもしれないが、それでも、大事に大事に作られたものだとしたら、一緒に盛り上げるのがファンの心意気のように思ったりもするのだ。
どうせなら、映像化されたものが盛り上がって、新たに原作を手に取る人が増えて、本と本屋さんが喜ぶような循環があるほうが、私は嬉しいなぁ。

有川浩さんが、有川ひろさんになった、第一弾。
それは、有川浩さん時代の作品で、映像化された小説たちのオマージュがいっぱいの作品で、きっとこれも愛される小説になる。
良助や、良助と一緒に仕事をする仲間たちが、魅力的な人揃いなのだ。上司たちも素敵だし、同僚も有能だし、そこで一生懸命に頑張る良助の姿は、なんといっても応援したくなる。仕事も、恋も。
この作品を入口として、有川ワールドにはまる人も、きっといると思う。はまってから、追いかけているうちに、後で映像を見て、えーっ!?と驚くのも楽しいだろうなぁ。

あー。面白かった!

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