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心花堂手習ごよみ

三國青葉 2018 ハルキ文庫

続きを! 続きを早く!!
読み終えた瞬間に身もだえた。
これは、この後の展開が気になってしょうがない。

江戸は日本橋、商家や武家の女の子だけを集めた手習い所が舞台。
師匠になりたての主人公・初瀬の悪戦苦闘の幕開けだ。
旗本家で祐筆をしていた真面目でうぶな女性で、甘いものを美味しそうに食べる。
私自身も塾講師などをしたことがあるから、初瀬の悪戦苦闘にはあーあるあるとうなずいた。
彼女の戸惑いや気苦労を経て、少しずつ師匠として落ち着ていく様子を応援したくなった。

なにしろ女子校の先生になるようなものなのだから、そりゃあ生徒たちだって一筋縄でいかない。
物語の中の少女たちは、現実の症状たちと同じように、それぞれの家庭の事情があり、それぞれの個性や思いがある。
そして、女の子たちというのは噂話が好きで、人の恋話が大好きなのだ。
甘いものと並んでの大好物と言ってもいい。
少女たちと、きゃあきゃあと騒ぎ立てる気分になり、何度も笑いを噛み殺した。

子どもたちの活き活きとした様子が可愛らしくて仕方がない。
作者の方の眼差しが、このように温かみがあり、慈しむものなのだろう。
時代小説というジャンルの中で、こんなに可愛くて楽しい物語と出会えたことが嬉しい。
きっと幸せな気持ちになれるのではないかという予感が働く語り口だ。

少女たちの成長を見守ると同時に、初瀬の恋の行方を見届けたい。
物騒な話に疲れている人や殺伐な話は苦手な人には、特にお勧め。
じれったい男女が好きな方にも、ぴったり。

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