【詩】「傷」「川」「壁紙」

両手を塞ぐと都合が良い
歩く速度が落ちるから
転んでも無防備だから
両手は何も握りしめない
銭と鍵は相棒だ
スイングしながら歩くのだ
閉店間際の古書店で
ポケットの金は消えた
寄り道をせずに帰った

2024/06/06 夜の商店街にて


川の歌を聞きたい
遠い海を夢見るように
あまりの凪に満潮の夜
私が飛び込んだ水は
息ができるほど暗い

2024/06/06 夜道にて


壁紙

あらゆる港町を見て回ったとしてそれで満足か?
必死になったとしてそれだけで満足か?
走らせた車 だたの外周
一日が終わった また一日
騒がしく水平線に消えていく…それを
追いかける船
追いかける雲
追いかける夜
音楽はやっと鳴り始めて
地響きに包まれる島…それが

2024/6/10 長い回想 自宅にて


作:矢野南

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