【詩】「計測」「楽器」「雨上がりの雲」

計測

記憶のファンから解き放れて
飛び落ちた放射線の糸は空に散る
時計台の音が遅い

2024/6/11 夜中 自宅にて


楽器

食器を叩く
朝の鳥たちは
挨拶
雨を連れて
風に乗って
挨拶
エンジンのうねりで
ドアから飛び出たら
みなついて来て
みな歩いて行ってしまって
やや静まり返ってしまって
ピアノの音がよく響いた
鳥たちはまず耳を傾けた
動き出した街場はともかく
青空を見上げていた
我らは引き返してしまう

2024/6/25 朝 最も早いコーヒー屋の窓際にて


雨上がりの雲

雨が上がった
雲が近づいている
流れずに座っている
同じ傘の下にいるように
せっかちな鳥が鳴き出して
我先へとそれに続く者を睨む
その言葉は自ら隠れていたのだろうか
遠ざかろうとしたのではないだろうか
雲から落ちることなく水は
誰の足元に鏡を作る?

2024/6/28 神経痛の外で 雨上がりの街にて


作:矢野南

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