【詩】「赤い絵画」「電話」「林」

赤い絵画

赤い絵画
踏むためにはちょうどいいトマト
出発は赤
血を届けるポスト
生臭い泡が
初夏で弾けて
巡る朝にはちょうどいい
躊躇い ポスト躊躇い
時間合わせは
警告的...血潮
R O T R O T R O T
赤でも行け!
まだ暗闇の街の
巨大な交差点を
赤のままで行け
あなたは危険を手に取った
そして心決める間もなく
あなたは向こう側へ飛んだ
その黒い翼をちぎり
憂鬱な規約を塗りつぶした
追いかけろ
羽のない鳥たちと共に
行進から抜けろ
枝を折って進め
風よけの木々の中で
朝焼けが連れてきた轟音に乗車する

2024/06/05 特急の車内にて


電話

コーヒーカップの地獄耳
スペイン坂は和やかで
食べきれない量の食事
だって他の人はみんなさ...
だってあなたのせいでしょう?
責任と戦って
これといって
言い返したいこともない
だからこうして
ノートを取り出して書く
スペイン坂にある
フランス語の店で
ドイツ語を書いて
スコットランド発祥の
バナナとカカオの
スイーツを食べる
ここは東南アジア?南米?
小さな竹やぶが見える場所
安いコーヒーをすする場所
お前とは話したくないよ
何も言わずに電話を切る
しかし助けを求めないと
病院には行けないんだよ

2024/06/05 渋谷の喫茶店にて


空想の世界でも
集中力が切れている
口を開かず目を閉じて
帰ってくるまで寝ておいで

かつて

図書館の無機質な
空調の風に当たっても
眠りへ連れていかれた
記憶にない解答用紙が
目の前で気取っている
時間を待つだけだ
時間がやってきた
時間よ止まれと夢を見る

妙だ 随分と人が少ない

コンクリートを打ち付ける音だけが
眠気をほぐすマッサージみたいでさ
誰よりもはやく氷が
音を立てて笹の葉を冷やす

2024/06/05 代々木にて歩き疲れて


作:矢野南

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