【詩】地下道の落書き


地下道の落書き


広漠

おまえに殺されるならそれでいい。泥酔した心が草原にある。
路上の花を千切って共に歩いていくさ。ここには何もないさ。


うつろ

おまえが働いていない時
おまえはおれとすれ違う
休みの日のおまえ
休めないおれの目
おれが挨拶をしてみる時
おれはいつも笑顔を見る


暇つぶし

夏の夕暮れ 駅前の静けさ 南風の中に 
もっと寂しげな新しい道があって
新築マンションの裏口で 
すれ違うあなたは新聞配達員
タバコ吸うタクシーのおっちゃんは
こんな暇つぶしを初めて共有したと言う


異名

眠っているあなたに
僕も星になろうと思う
美しさを見ることなんて知らず
群衆に紛れて行くのよと言う


消失

痒みさえも現れた
全ての星が消えるまで
ぼくは眠れなかった


白髪

肌に触れている体毛
熱帯夜がどこまでも続くようだ
汗で流れた白髪
白髪を一本だけ抜いて 
また一本だけ抜く


冥界の詩人

冥界の詩人
空知らず
星見えず
欲しがるのはいつも悪名
誇るものは証明書だけ


花瓶

開けっ放しのドア 空っぽの病室
消灯時間の過ぎた部屋 閉店後の花屋だ 煙炊け


地下

視野を狭くしないと目の前の敵とは戦えない
群衆じゃないお前だ お前だ お前だ お前だ 
お前はどこにいた 声しか聞けないじゃないか


石切場

あの崖は切ったか起きたか
石の眠りは続く
Tシャツの顔と似た
ウインカーの音と似た


グッバイ チューニング

グッバイ チューニング
波の音を聞いてくれ
そうさ闇の中の海で
嫌悪してみろ 書いてみろ
Stop Genocide 鳥の死体の上に
Sexの隣人にGenderと書いた
舗装された壁 無菌室の地下
埃を指で拭いた芸術家たちへ


7/22 23:00 誰もいないトンネルを歩きながら

作:矢野南

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