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嘘つきはお客様の始まり

サブスクビジネスが流行っている今、お客様の継続率(解約率)が非常に重要。しかし、これはサブスクビジネスに限った話ではない。飲食でも物販でもリピーターを失うことはビジネスにおいて大ダメージになる。なぜ、お客様は離れてしまうのか?なぜ、それを止められないのか?そこには、「嘘つきなお客様」の存在がいる。

このnoteは、僕の”妻”が体験したこと、それについての考察である。

習い事やめるってよ

僕の妻は歌の教室に通っている。いわゆる月謝制の習い事だ。毎週通っていて、課題曲を決めたり、家の中で口ずさんでいたり、と非常に楽しそうだった。そんなある日のこと。妻が「もう歌やめようと思ってるんだけど」と言ってきたのだ。楽しそうに通っていたのに、なんで?と思ったが、なにやら立て続けに教室で不快な思いをしたらしい。詳細は控えるが、簡単に言うと「納得できない予約に関する運営ルール」に対して改善をお願いしても「規約だから」の一点張りだったとのこと。それ以外にも数週間前に担当の先生が変わる際の引継ぎが適切にできていなかったらしい。そんな不満の連続で、ついに妻の「堪忍袋の緒」が切れたらしい。もうどうでもいい、と苛立っていた。どうも本気でやめようとしている。

針千本飲みたくないから嘘をつく

ここで不満の内容や運営側の対応を問題視することは、本質ではないからしない。問題なのは妻がした運営側への対応だ。もうやめる!と言い放った妻に僕はこう聞いた。「なんて言ってやめるの?」と。すると妻は少し考えて、こう答えた。

『子供の習い事で忙しくなったから』

え?不満は?そう突っ込んだ僕に妻が言った。「だって、やめるのに事を荒立てたくないし。それっぽい理由言ってやめるよ」と。これが、このnoteの本質。僕が伝えたいこと。

お客様は絶対!…ではない

お客様は絶対に大事である。が、お客様が言う言葉は「絶対真実」である!と思込んでいる人はいないだろうか?お客様は嘘をつく生き物。ロイヤリティが高いお客様ならまだしも、やめる直前の批判的なお客様であれば尚更。荒波を立てないよう、いい人で終わるよう、お客様は「やめる理由」で嘘をつく。これに気づかず、「あぁ、子供の習い事ならしかたないか」と思ってしまう人は多い。これは今回のような人を介す契約であれば、顕著に表れる。人を介して契約する代表的なものが『BtoB』のビジネスである。オンライン契約が増えてきたとは言え、完全に人と関わらないBtoBビジネスは少ない。よって、解約するお客様は「適当な理由」をつけてやめてしまう。

聞くことは無意味

このような「解約理由」を統計的に見ようと、アンケートやヒアリングを行う企業がいる。「やめる理由を教えてください」と。大体言われる理由が、コストが合わない、不要になった、など。この表面的な理由について統計を取ったところで意味はない。それでも、このデータを信じて『コストを下げよう』『不要になったのなら仕方ない』と議論する。当然、本当の解約理由は他にあるので改善してもロイヤリティは上がるはずもなく解約の連鎖はとまらない。解約理由を聞くことは、本当に無意味である。

結局カネが全て

お金を払ってサービスを受ける。これがビジネスの基本。これを考えると、前述の「コストが合わない」に関しては、実は嘘ではなかったりする。正確には、お客様自身も嘘と気づいていないケースだ。コストは契約時と変わっていないのに、コストが合わなくなる。なぜ?それは、「費用対効果」が合わなくなっているということ。契約した時は「完璧な状態」に対して『100のコスト』を支払う。100が200になった訳じゃなければ、費用対効果が合わなくなった要因は「完璧な状態」が崩れたということ。この要因が『不満』である。人間は不満があると、まず費用対価値を下げようとする。この日々の小さな不満の積み重ねが「価格高くない?」になっていく。だから、「コストが合わない」という理由はお客様すら言語化できていない『やめる理由』なのである。

完璧ダメ絶対

妻の話に戻そう。やめる理由を『子供の習い事で忙しくなったから』と嘘をついた妻。どうやったら阻止できていたのか?僕は妻に、こんな質問をした。

「今回の”規約のせいで出来なかったこと”を契約前にしっかり説明されていたら、そんなに怒りは沸いたのかな?」

妻は少し考え「それなら仕方ないって思えるけど…」と言った。つまり、『出来ない』という事実は変わらないはずなのに、事前に理解できていると許せるのだ。言うなれば、「完璧じゃない状態」に対して『100のコスト』を支払うということ。完璧じゃないと知っているから、その状態が露呈したとしても費用対価値は下がらない。「あぁ、例のやつか」で終わる。この考え方は非常に重要。ビジネスで言うと、契約のために営業が「大丈夫です!」と無責任に言うアレを無くすということ。出来ないものは先に理解してもらい、弱い部分は先に説明しておく、これを疎かにして完璧を演出すると、何かの拍子にその出来事が「不満」に変わる。事前に理解があれば不満になどならない。

聞くべきは "アレ"

お客様のロイヤリティが下がる要因はどう特定すればいいのか?「やめる理由は?」「不満なことは?」こう聞いても正確な情報は返ってこない。それは前述した通り、お客様自身も認識・言語化できていないから。では、何を聞けばよいのか?何を見ればよいのか?この問いに僕は僕なりの解を持っている。

『体験』である。

お客様が何をしているのか観察する。どんな出来事に遭遇したのか、その体験そのものを聞く。それは、必ずしも「不満」に直結するものはないかもしれない。それでも、お客様の体験した事実から、「こうしたら、もっと満足してもらえるのでは?」と想像してみる。この積み重ねでしか、プロダクトは改善できないと考えている。「モノからコト」なんて言葉が流行っている時代だから、お客様のリアルな「コト」に目を向けてほしい。

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