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【随想】深雪にダイブ

幼少期を豪雪地帯で過ごしたため、
冬は好むと好まざるに関わらず雪遊びをしていた。

「ミニスキー」という小さいプラスチック製のスキー型のものを長靴の底に付けてローラースケートのように移動し、友だちの家に遊びに行くのだ。歩きと速さはほぼ同じなのだが、これが基本スタイル。

家の裏手に小さな川が流れており、
そこにいくまでの階段が雪に覆われるので小さなスキー場と化す。
そこでミニスキーやソリで滑り降りる。
助走までつけて、どうしたらケガになるのか試しているとしか思えないほど速さだけに特化して滑る。
エスカレートして転げ落ちるものの全て豪雪がクッションとなり絶対安全なのだ。

スリルが足りないので、ひとりが川を背にしてもう一人が河川敷の上から雪玉を転がす。
すると、みるみる内に雪玉が巨大化し、1メートルくらいの塊になって襲いかかって来るのだ。
文字どおり「背水の陣」なので全身で受け止める。
又は、本当にヤバいと思ったら横っ飛びで避ける。(背水の陣ではない)
何回かは受け止めきれずに弾かれて川に落ちる。
と言っても川は氷が張っており、なおかつその上に大量の雪が乗っている状態なので絶対安全なのだ。

そしてついに、少年は「3メートルくらいある土留めから飛び降りる」という遊びを思い付く。
その背景には雪クッションへの絶対安全が土台になっている訳である。
もはや「雪を信じている」状態である。

出来るだけ雪の深そうな所を探して、飛ぶ。

肩くらいまで深雪に埋まったが無事

さすがにこの遊びは、誰も一緒にやってくれなかった。
「雪教徒」は自分だけだったのだ。

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