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飼っていたヒョウモントカゲモドキが亡くなり、お骨になるまで

筆者が飼育していたヒョウモントカゲモドキ(通称レオパードゲッコー、以下レオパ)のレモンが2021年10月9日に亡くなった。正確な年齢は分からないが、販売店の情報に基づけば3歳弱であった。レオパードゲッコーの飼育を始めたのは2018年。ペットリザードとして家畜化された愛くるしい振る舞いと、時折見せる野性的な行動の二面性、そしてお世話の手軽さにすっかりと魅了され、気が付けば我が家のトカゲモドキは5匹に増えていた。

亡くなったレモンは2番目にお迎えした個体であった。モルフ(品種)はゴジラジャイアントトレンパーサングロー。メスということもあり、ゴジラの名前からも分かるような巨大化因子を持った血統にしては少々小柄であったが、人や物音を全く怖がらず、むしろハンドリング中は手の上で暖を取るほどの穏やかな性格をしていた。爬虫類に詳しい人の間では、彼らは人に慣れても懐かないと言われている。私自身もその考えに同意するが、この個体に関しては人馴れを通り越し、"人懐っこい"とさえ表現したくなるほどの温厚な気質だった。

そんなベタ慣れ個体を失った筆者が己の傷心を癒すため、そして似たような体調不良の兆候・症例を示した個体を飼育している方がいち早くその変化に気づき、一匹でも多くのレオパが幸せに天寿を全うする一助となることを願い、ここに最初の兆候から亡くなるまでの一切と、弔いの記録を記したい。


2021年2月 交尾

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レオパのケージを掃除する際、彼らを一時的にどこかへ退避させておく必要がある。掃除は長くても15分ほどしか掛からないので大層な仮住まいは必要ない。筆者は背が高めのプラケースを退避場所として使用していた。この時は亡くなったレモンと別のオス個体のケージを同時に掃除するため、それぞれを別のプラケースに入れていた。ここで事件が起きる。

プラケースには蓋が付いていたが固定する鍵などはなく、中から強く押し上げれば開けることは可能であった。このオスの個体は筆者が最初にお迎えしたレオパで、ペットショップが海外の有名ブリーダーから輸入した、それなりに希少なモルフである。こういった個体が成体で輸入される場合、ブリーダーの元で繁殖用として使用されていたケースも多いらしい。この個体もまた性欲旺盛で、レオパであればオスメス問わず、何なら飼い主である筆者(男性)にまで発情するほどの絶倫であった。そんな彼がメスを目の前に行動を起こさないはずがなかった。

ケージの掃除を終えて戻ってみるとそこには繋がった二匹の姿が。蓋をこじ開けてメスのケージに入り込むなんて、なんという執念…トカゲ※の知能を侮ってはいけない。こと食欲や性欲が絡むと驚くほどの賢さを発揮して扉開けなども平然とやってのける。「しまった!」と一瞬パニックを起こしそうになったが、このオスは既に6歳。レオパの平均寿命が10年前後であることを踏まえて、実は近いうちに子どもを取りたいと思っていたのだ。つまり、この交配は想定はしていなかったが、望んでいたものではあった。交尾から一月後に最初の産卵が始まる。

3月 第1クラッチ、第2クラッチ

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ヒョウモントカゲモドキのメスは一度の交尾で複数回の産卵を繰り返す。生まれてくる卵は(ほぼ必ず)一対で2個。この産卵単位をクラッチと呼ぶ。クラッチの回数には個体差や体調の影響もあり、1クラッチで終わる個体もいれば、6クラッチまで産む個体もいる。抱卵と産卵はメスに大きな負担をかけるため、クラッチが長引くと瘦せ細ってしまうことも珍しくない。

交尾から約一か月後、レモンが最初のクラッチを産み落とした。続いて2週間後に第2クラッチも無事に産卵。どちらも有精卵であったが、繁殖初挑戦の筆者には上手く孵すことができなかった。産卵後、メスは失った養分を補おうとして食欲が爆発的に増す。この時はまだレモンもコオロギをバクバクと10匹くらい食べていた。

4月19日 第3クラッチ

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第3クラッチの卵も無事に有精卵で生まれてきた。この卵はふ化に成功し、現在もすくすくと育っている。産後のレモンの食欲の戻り方も正常であった。

5月 第4クラッチ

最初にレモンの体調から異変を感じ取ったのは第4クラッチの直後だ。本来ならば爆発的に増幅するはずの産後の食欲に勢いがない。せいぜいコオロギ3匹でプイっとイラナイ!してしまう。3匹というのは平常時の給餌量。産後はその何倍も食べるものなのだ。ただ、レモンはもともと偏食の傾向があり、定期的にコオロギに興味を示さなくなったりミルワームしか食べなくなることも多々あった。故に筆者はこれは偏食であるとして重く捉えず、次の産後は別のものを与えてみることにした。なお、第4クラッチ以降は全て無精卵であった。

6月 第5クラッチ、第6クラッチ

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第4クラッチを終えてもレモンの産卵は止まる気配がない。たった一度の交尾でこれだけの卵を産めるのだから、自然界でしたたかに生き残っているのも納得である。第5クラッチの後は嗜好性の高い餌、ハニーワームを与えてみた。これにはレモンも大喜びで大量のハニーワームを平らげた。なんだ、やっぱり偏食だったんだと筆者も胸をなでおろした。しかし体重は一向に戻らず、そのまま第6クラッチを産卵。栄養を蓄えてあったブリブリの尻尾も目に見えて瘦せてきたので、さらに栄養価が高いとされる餌、ピンクマウスに切り替えた。レモンはこれにも喜んで食いついた。

7月 拒食の本格化

最初はハニーワームやピンクマウスに喜んで飛びついていたレモンであったが、この頃からどちらにも強い関心を示さなくなっていた。それでも細々と食べてくれてはいたので、まだ筆者の危機感も強くなかった。しかしながら体重は全く戻らなかった。

8月 ピンクマウス吐き戻し、最初の通院

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8月初旬、与えたピンクマウスをレモンが吐き戻してしまう。レオパが餌を吐き戻すというのは一般的にかなり好ましくない行動だ。体を休める体勢にも異常があり、大抵、レオパは床にぺたっと体を付けて休むのだが、レモンは上半身をケージの角に立ててバナナような姿勢で休むようになっていた。これは明らかに何かがおかしいと感じた筆者は爬虫類専門病院の予約を取り付け、診てもらうことに。

先生は次々とレモンの体に起きている異常な点を指摘して下さった。まず、舌の色が白かった。通常、レオパの舌は綺麗なピンク色をしており、白は体調が悪いことを示すサインである。この個体はアルビノであったため、非アルビノ個体よりはやや白みがかった舌の色をしていたのだが、確かに言われてみれば白っぽいというよりも真っ白だ。さらに、レモンの腹部に光を当てた時、全くといっていいほど光を透過しなかった。健康なレオパの腹部は光に透かして見ると一部の内臓以外はおおむねピンク色をしている。レモンは真っ黒であった。

加えて、何らかの原因で内臓が腹腔内上部に押し上げられていることがレントゲンによって確認できた。誤飲による床材などは画像内に認められない。これらの状況から推測すると、産卵または抱卵時に輸卵管かその他の生殖器系で出血を起こし、腹腔内に血が溜まって内臓が押し上げられてしまったのだろう、というのが先生の見立てであった。呼吸を楽にするために角度を付けて休んでいたことにも合点がいく。

これはかなり深刻な症状だ。だが、大抵は腹腔内で大出血を起こした時点で絶命してしまう個体が多く、最後の産卵からかなり時間が経っていることを加味すると、幸運にも出血は既に止まっているであろうということだった。強運と、この子の生命力の強さに助けられたらしい。

先生は腹腔内に溜まった血を溶かす薬と栄養剤を処方して下さった。ちなみにネット上では高栄養価で産後の立ち上げに良いと言われているピンクマウスだが、実際のところ量に対しての栄養価が抜群に高いというほどでもなく、与えなれている餌をあげるのが一番であるとの指摘もいただいた。

8月末 脱皮不全と皮膚の剥離

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投薬を始めると、腹部の黒ずみは外からも分かるくらいに薄くなっていったが、それに反してレモンは日に日に衰弱していった。もはや自力での採食は不可能で、強制給餌が欠かせなくなっていた。健康なレオパであれば2~3週間に1度のペースで起こる脱皮も既に7月からしておらず、代謝が大きく落ちていることが見て取れた。

8月末、ついに脱皮が始まる。しかしこの脱皮も明らかにいつもと様子が異なり、いつまで経っても全身の皮膚が白くならない。ネット上でレオパ等のかわいい脱皮画像を見たことがある方ならご存じの通り、彼らの脱皮は古い皮膚が尾から頭にかけて徐々に白く浮き上がり、用意が整うと着ぐるみのように頭から脱皮を始めてツルっと一気に剥けてしまう。この時のレモンは全身がまばらに白くなるだけで、頭部などは数日たっても元の色のままであった。

脱皮不全は放置すると古い皮に圧迫された箇所の血行が悪化し、指や尻尾が壊死してしまう深刻な問題である。放置はしておけず、人間が手で剥いてやることにした。すると…

ベロン

古い皮膚の下にあるはずの新しい皮膚が...ない。皮が剥がれた下に肉が見えている。衝撃的な光景だった。もはや新しい皮膚を形成できないほどに代謝が落ちているのか…すぐに病院の予約を入れたが、同時に最悪の結果を覚悟しなければいけないことを悟った。

上記の写真はその時の脱皮のものである。やや生々しい写真のため載せるのをためらったが、同じような症例の子がいた時の参考までに掲載させていただいた。

9月上旬 2度目の診察

先生に皮膚のことを話し、再度レントゲンを撮っていただいた。腹部の黒い影は消失しており、代わりに透明な腹水が溜まっていた。その主成分は白血球から成り、免疫系は作用しているようだった。ただ、皮膚が突然剥がれた理由は分からず、生殖器系以外の内臓にも何か深刻な問題がある可能性が高いということだった。2週間、抗生物質を投与し、さらに様子を見ることに。この頃からレモンは自力で立ち上がるのも困難な状態になっていた。

9月中旬 最後の診察

抗生物質の効果もあってか、皮膚は数日のうちに回復の兆しを見せ、一週間もするとかなり治っていた。久々にレモンの目にも光が戻り、時折おぼつかない足取りで動くものを追うような様子も見せてくれた。闘病開始後、二度目となる脱皮も起きた。レモン自身に脱皮する力は残っていなかったものの、人間の手で綺麗に剥がすことができた。複数の状態が好転し、希望を捨てなくて良かったと思い始める。しかし相変わらず餌には全く反応せず、腹部も腹水でパンパンのままだった。この時まで便の状態は正常だった。

前回の診察から二週間後、再び病院の診察を受けた。抗生物質を投与しても大きな改善が見られないことから、悪性腫瘍の可能性もあると告げられる。ただ、仮にそうだとしてもレントゲンで見えるようなサイズではなく、開腹してみないとわからないどころか、病巣があっても見つけられないかもしれないということであった。これだけ小さな動物の場合、人間の患者でも発見に苦労するような悪性腫瘍をレントゲンや触診で見つけることは極めて難しい。小動物の開腹手術はそれだけでもリスクが高いし、ここまで弱っていると致命傷になりかねない。爬虫類は代謝がゆっくりで抗生物質が効き目を出すまでに時間がかかるので、続けて二週間ほど抗生物質の投薬と栄養剤による体力増強を試みてみて、それでも改善しなければ一か八かにかけて手術をするか、別の選択肢ーつまり延命療法で看取るかを選ぶということになった。これが最後の診察となった。

10月上旬 弱っていくレモン

この頃からレモンは目を閉じていることが多くなった。自力ではほぼ動けず、呼吸も不規則になっていた。それでも懸命に生きようとする姿に飼い主も奮い立たされ、最後まで希望を捨てず投薬と給餌を続けることにした。病院から処方していただいた栄養剤はそれ単体だとすぐに吐き戻してしまうため、コオロギパウダーと混ぜて強制給餌していた。これならば吐き戻さずに飲み込んでくれた。便には軟便が混じり始め、過剰分泌された胆汁によって緑色がかった糞も排泄するようになっていた。

10月9日 その時が来た

この日の朝はレモンの呼吸がさらに不規則になっていた。喉を軽く膨らませる通常の呼吸に混じって、数回ごとに何かを吐き出そうとするような動作をしていた。とても苦しそうで、本人も落ち着かない様子で這いずるようにケージをうろうろとしていた。

昼過ぎ頃、レモンのケージから聞きなれない「ギュー」というような鳴き声を聞いて思わず振り返る。レオパは律儀にも決まった場所で排泄を行う動物である。レモンにもトイレの場所があり、どんなに体調が悪化しても指定の場所以外で排泄することはなかった。だが、今回はまるでトイレとは違う場所で排泄を始め、そのまま途中で力尽きたのか動けなくなってしまっていた。

急いでレモンを抱きかかえ、体に付着した排泄物を洗い流すために洗面台へと向かう。お湯をかけてやると身をよじり、ついにはぐったりとうなだれてしまった。もう自力で頭を上げることも、目を開けることもできなくなっていた。

だらんと力なくうなだれたレモンを手の平の上に乗せる。爬虫類には横隔膜がないため、彼らは肋骨や喉を伸縮させて空気を取り込む。喉はまだ動いている。そう、確かにまだ生きていた。しかし呼吸はとても浅く、その時が近いことは明白だった。悔しいが、してあげられることは何もない。一息、また一息...徐々に遅く、浅くなっていく呼吸の間隔をじっと見つめながら、永遠のような時間をレモンと一緒に過ごした。

一時間ほど経っただろうか。レモンの喉の動きが止まった。あまりに見慣れた寝顔そのままなので、死んでしまったのかどうかの確証すら持てなかったし、いつ息を引き取ったのかも正確には分からない。でも、その体から魂が抜けていることは直感で分かった。わざわざ飼い主が休みの日に手の上で看取らせてくれるなんて、最期まで人間に優しいレオパであった。

お別れ

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ペットは最後まで面倒を見るのがあらゆる飼育者の務めである。それには亡くなった後の遺体の処理も含まれる。不法投棄なんてもってのほかであるし、人様の私有地に埋めるのもご法度だ。レオパのような小型の爬虫類の場合、燃えるゴミとして出す飼育者の方々もいらっしゃるようだが、私にはそんな鋼のメンタルはなく、犬猫と同じように見送ってやるという選択肢しか取りえなかった。死亡を確認後、すぐに個別訪問タイプのペット火葬サービスを予約した。プランター葬というのにも惹かれたが、借り住まいでは最終的な土の処分に困るかもしれないので今回はやめておいた。

紙か木で棺を用意して欲しいとのことだったが、お世話になった病院への連絡や火葬の手配を済ませているうちに、もう夜になっていた。棺の代用になりそうなものは手に入りそうもなく、仕方がなくティッシュペーパーの箱を1/3に切ってそれっぽくした。棺のほかには副葬品として生前に好きだったものをいくつか入れてよいとのこと(プラなどの不燃物はNG)。しかしベタ慣れレオパといえどやはりトカゲである。彼らはオモチャで遊んだりしないし、大好きなのはご飯と隠れ家(シェルター)だ。いちばんの好物であるコオロギを入れてやりたかったが、業者の方が虫嫌いだったらぎょっとするかもと思い、一見では虫と分からないペレット状のドライフードを入れてやることにした。レモンはあまり好きじゃなかったけれど、お腹を空かせるよりはいいよね。

当然、燃やしようがない素焼きのシェルターは入れてあげられない。それでも何か葬式らしいものを添えてやりたくなり、亡くなった翌日に受診するはずだった病院の予約券でツルを折ってあげた。花屋はもう閉まっていたので、近くで採った小さな花をひとつまみ。豪華な副葬品ではないけれど、少しは棺っぽくなかっただろうか。

翌朝。昨日はまるで寝ているかのように安らかな様子だった遺体もかなり青みがかり、死んでしまったのだという実感が再び湧いてきた。爬虫類の遺体は哺乳類等と比べて傷みやすいという情報は本当のようだ。亡くなってしまったら、その日のうちか翌日には何らかの形で送り出してあげたほうが良いだろう。傷むスピードを緩めるために保冷剤で冷やすのも忘れずに。

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日曜の朝だというのに火葬業者の方は嫌な顔もせず親身に対応して下さった。その対応にかなり救われた。わずか60g未満の小さな動物ということもあり、火葬は15分ほどで完了。長い闘病生活で骨まで弱っていたので残るかどうか心配だったが、下あごや大腿骨など、一部の骨はまだその原型を留めていた。丁寧に収骨、納骨して下さった火葬業者の方には心の底から感謝を申し上げたい。火葬を選んでよかったと思う。

業者の方の話によれば、昨今ではペットとして飼われることも多くなったレオパもまだまだ火葬の依頼は多くないようで、この記事が弔い方を決めかねている方への一押しになれば嬉しい限りである。

レモンの死から学んだこと、学びたいこと

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レオパの平均寿命は10年前後、長生きする個体は30年近く生きることもある、かなり長寿な動物である。それを3歳弱という短さで落としてしまった飼育者としての未熟さを心から恥じている。同時に、この死で学んだことを次に生かすことも飼育者としての務めだ。

今回の件で分かったのは、レオパ、いや爬虫類の繁殖には常にリスクが付きまというということだ。一般的に繁殖に使ったレオパ、特にメスはその負担から寿命が短くなる傾向があると言われている。繁殖の前後はあらゆる小さな変化に目を光らせ、少しでもおかしいと感じたら病院に連れて行くべきだ。今回、チェックすべきだったポイントは主に

・舌の色 (健康なピンク色をしているか)
・腹部を光に透かした色 (真っ黒など、明らかに異常な色をしていないか)

この二つだろうか。レモンの症例以外でも健康のバロメータとして役に立つ情報だと思うので、日ごろからチェックするようにしていきたいし、飼育者の方にはぜひしていただきたいと思う。そしてこういったチェックを行うためにもハンドリングは欠かせない。不必要に長時間レオパを拘束して強いストレスを与える必要はないが、手に慣れさせておけば健康チェックや投薬、いざという時の強制給餌がスムーズに行える。実際、この個体はとてもハンドリング慣れしていたため、投薬、強制給餌どちらも全く手こずらなかった。必要な処置を素早く済ませられればそれだけ生体への負荷も少なくできる。

病院の先生曰く、今回のように産卵・抱卵によって輸卵管やその周辺の臓器から出血してしまうのはレアケースではなく、そしてその原因には"濃すぎる血"が少なからず影響しているらしい。

爬虫類に限らず犬や猫にも言えることであるが、品種を作り出す過程においては、その特有の形質を色濃くするために、同じ遺伝因子を持った個体や似た形質を持つ個体同士を掛け合わせる。これを実現するためにはどうしても近い共通祖先を持つもの同士の交配が必要となり、結果として血が濃くなる。ウマ娘のヒットでよく聞くようになった人も多いと思うが、いわゆるインブリードだ。

インブリードは理想的な表現を出す上で重宝される一方、虚弱体質が生まれやすいというデメリットも併せ持つ。レオパも例外ではなく、素晴らしいブリーダーの方々によって美しいモルフが日々作出されている一方、これらもまたインブリードとは切っても切り離せない関係にある。最近ではインブリードとは別に、ほぼ確実に悪性腫瘍化して死に至る遺伝因子を持つモルフの市場への流通が問題になっている。こういったレオパの健康問題の解決をブリーダー側だけに求めるのは難しい。需要があるから供給が生まれるのだ。私たち一般飼育者側も、このレオパという愛らしく魅力的で小さくていたいけな生き物が、その本来の長い寿命を健やかに全うできるよう、健康なモルフを選ぶという考えを重んじる段階に来ているようにも感じた。

この記事が誰かの役に立つかどうかは分からないが、特に産卵期のレオパのメスにおける異常の兆候や、モルフ選びという飼育前段階での選択肢を再考する一助になれば幸いである。

楽しい時間をありがとう、レモン。辛く長かった闘病から解放されて、どうかゆっくりと休んで欲しい。いつか自分がそっちに行く日が来ても、レオパがいるならそんなに悪くないかもなあ。

※ヒョウモントカゲモドキはヤモリの一種であるが、ヤモリ下目自体がトカゲ亜目に含まれるため、トカゲと呼称しても間違いではない、と思う。ヤモリとイモリを混同する人は少なくないので、筆者は自分のペットを人に説明する時にはトカゲと言っている。

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