絵本の読み聞かせ、タスク化する? しない?

「寝る前に絵本の読み聞かせをしましょう」
子どもを持った親に、必ず言われる言葉。

情緒が豊かになる、精神的に安定する、寝付きが良くなる、などメリットがたくさんあると言われています。

親が毎晩3冊選んで読み聞かせる、小学校に入るまでの6年間で◯百冊読むのをノルマにして、達成するために、読書メーターを壁に貼ってがんばった、読み始めたら、一冊終わるまで我慢強く読ませた。というように、家庭によって方法もさまざま。

各家庭ごとに教育方針があり、それで効果があった(と感じた)例もたくさんあるので、否定するわけではないのですが、ここでは、私と4歳の娘の読み聞かせ事情について紹介させてください。

読み聞かせのやり方をざっくり分けると、

・毎晩必ず読む、月に◯冊読む、などと決める「タスク型」
・子どもが読みたいタイミングで、読みたいだけ、自由に読む「フリー型」

の2種類に分類できるかと思います。

わが家はフリー中のフリーで、子どもが「読んで」と持ってきたら、幼稚園に出発する直前や、鍋を火にかけているときなど、本当に余裕がないタイミングを除き、いつでも読むようにしています。

読む本のバリエーションもさまざま。
壁に並べた本棚にある、私の本(育児書、レシピ集、マンガ、雑誌など)も自由に手に取っていいことにしています。
2歳ごろは、カバーを外すのが楽しい遊びになっていて、ひたすらカバーを外して満足気にしていることがよくありました。
3歳半ぐらいになると、同じサイズの本のカバーを取り替えるいたずらを覚え、ママが「あれっ?」と驚くのを見て、よく笑っていました。
「本を大事にするように教えないといけないのに!」と、憤るかたもいらっしゃるかもしれません。実際、カバーにも、本文にも、落書きの跡が残っています。結局、カバーが再起不能になってしまったものも。
それでも「本は楽しいもの」と教えたかったので、何も注意しませんでした。内容がわからなくても、ぺらぺらめくるのが楽しいな、とか、カバーを外せること、紙の本のにおいや感触など、本とはどういうものか、今まさに学んでいるのだと感じたからです。

ここでひとつだけ注意を。子どもに触れてほしくない、大切な本は、絶対に手に届かない場所にしまっておいてください。あらかじめ避難させておけば、大事な本にいたずらされて落ち込むことも、子どもを叱ることも防げます。

娘の本棚には、0~1歳まで取っていたこどもちゃれんじの絵本、幼稚園で配られる「こどものとも」シリーズ、私が大好きだった「ぐりとぐら」「しろくまちゃんのほっとけーき」「3びきのやぎのがらがらどん」や、ほとんどの家庭にある大ヒット絵本「だるまさん」シリーズのほかに、娘が自分で選んだ図鑑も、10冊ほど並んでいます。
手で動かして遊べるしかけ絵本も「お、かお?」「ころりん・ぱ!」のような赤ちゃん向けのものから、大日本絵画から出ている「不思議の国のアリス」「オズの魔法使い」のような本格的なものも、特に区分けせず、雑多に並べています。
それでも、お気に入りの絵本は、手に取りやすい棚に自然と集まっていくものです。

0~1歳のときは本をなめたりかじったりし、その後もしばらくいたずらの標的としていましたが、4歳となった今、繊細なしかけ絵本は慎重にめくるなど、大事に扱うようになりました。もちろん、ページを折ったり、落書きすることもまったくありません。
落書きしちゃだめとも、破っちゃだめとも、何も言っていないのに、自然と本を傷つけずに読むようになったことを、少し不思議に思います。
きっと、いたずら(と親は言いますが、子どもとしては、それが何なのか探求しているだけなのです)を十分したので、もう必要がなくなり、大好きな本をきれいなまま読みたい、という気持ちが生まれたのかなと思っています。
ただ、気をつけていても、破れたり折れたりしてしまうことはあり、しょんぼりした顔で「ママ、ここ直して」と持ってくるので、すぐ直せるように、絵本修復テープのストックを切らさないように気をつけています。

図鑑は、MOVEシリーズがインパクトのある写真で目を引くようで、一番多く持っていますが、大好きな魚・水の中の生き物の図鑑は、欲しがれば「魚はもう持っているでしょ」とは言わずに、買うようにしています。

魚なら「魚の図鑑」とひとくくりにしてしまいがちですが、窓をめくって開けるような、しかけ絵本タイプから、MOVEのようにビジュアルで魅せるタイプ、生態について細かく書かれた、一般的にイメージする図鑑まで、それぞれに特色があります。

デフォルメのイラストで描かれたクロマグロと、実際の写真を見比べたり、ニュウドウカジカは、陸に揚げられてぶよぶよになった姿が有名ですが、あのまま泳いでいるわけではないこと。同じ種類について、複数の図鑑を見比べることは、イメージとしては、複数のレイヤーを重ねていくようなもの。
より理解が深まるので、車好きな子どもには各出版社の車図鑑、のように、同じテーマの図鑑を複数与えることをおすすめしたいです。

図鑑は、分類について知るきっかけにもなります。
最初は、マグロも、クジラも、タコも、みんな「お魚」という認識でしたが、魚図鑑を買ったのに、大好きなクジラが載っていない! どうして? という疑問から、クジラにはヒレがあって泳ぐけど、実は自分と同じ哺乳類であること、タコは魚図鑑には載っていないけど、水の中の生き物図鑑に載っていて、その図鑑にはナマコやサンゴ、貝も載っている。海の中に住んでいるのは魚だけじゃないんだ、と、そこまで理解しています。
うちの娘はたまたま魚に興味を持ったので、魚を例に出しましたが、車でも電車でも、仮面ライダーでも、なんでもいいです。
ぜひ、お子さんの興味のあるテーマの図鑑を読ませてあげてください。
「魚なら勉強になるけど、車の種類を覚えたところで、勉強には役立たないのでは?」いえいえ、そんなことはありません。
私の知り合いに、道路を走る車の車種をすべて覚えていて、次から次へと言える子がいます。瞬時に形で車種を判別する識別能力、瞬発力、記憶力は素晴らしいものですし、車はどうやって走るんだろう、と疑問を持てば、STEAM教育の”Engineering"(工学)の入り口になりますね。
子どもが自ら興味を持つものは、なんでもいいんです。ばかにせず、切り捨てず、大事にしてあげてください。必ず、学びのきっかけになります。

さて、ここからは、なぜわが家では読み聞かせをタスク化しなかったか、読み聞かせをフリーに行うメリットについて、お話していきます。

「読み聞かせ」というと、多くは物語になるかと思います。年に◯百冊達成する、とノルマ化している家庭で、大人向けの図鑑なんて読み始めたら、とても達成はできませんね。探しもの遊び絵本「ミッケ!」シリーズや、ゲーム要素の高い「こんがらがっち」シリーズなどは、寝かしつけとして効果が期待しにくいのはもちろん、ここで終わりね、と子どもを納得させるのに苦労するかもしれません。

娘には、本を読みたいタイミングで読んでほしい。

読みたい本を自由に読んでほしい。

そんな思いから、わが家では、時間に関わらず好きに読み、寝る前の読み聞かせも習慣化(タスク化)しませんでした。

子どものうちから読書習慣をつけることが大事だと、どんな育児書にも書いてあり、もはや常識と言えるでしょう。世界的に活躍している人に、読書好きが多いのも事実です。

ただ、大人でも、今日は疲れたからすぐにベッドに入りたい日、仕事が立て込んでいて、読書の時間を取れない日はきっとあるはずです。
だからといって、今日は本を読めなかった、もう読書は嫌いだ、なんて思うでしょうか。思いませんよね。

本が好きな人なら、お休みの日に、お気に入りのコーヒーを淹れて、もしくは、愛猫を膝の上に乗せて、読みたかった本を読むのが至高の時間なのではないでしょうか。
想像してみてください。まだ昼間だから読んではいけない、とか、それじゃなくて別の本にしなさい、とか、寝る前に必ず本を読まなくてはだめ、などと言われたらどうでしょう。
少なくとも、私はいい気持ちにはなりません。

上記は極端な例です。相手は子どもですから、親からの働きかけはもちろん必要です。
しかし、小さい子どもでも、本を読みたいタイミング、読みたくないタイミングがあり、今読みたい本を選ぶ力は持っていると思うのです。
子どもの様子をよく観察し、必要なときに手を貸せる親でありたいです。

一方で、寝る前の読み聞かせが楽しみで仕方なくて、そのために急いでおもちゃを片付け、着替えてベッドに入り、大好きなパパやママの声で紡がれる物語を聞きながら眠りに落ちるのが、最高の幸せ、というお子さんも少なくありません。私自身、両親に読み聞かせをしてもらう時間が大好きでした。
今でも、ありありと思い出せるくらい、大切な思い出になっています。

今は私が母となり、娘を育てるなかで、夢中でLEGO作っていて「読み聞かせしなきゃいけないのに、早く終わらせないと寝る時間になっちゃう」と焦ってしまうことがありました。
また、絵本を読み始めても、おしゃべりに夢中で、何度も中断することもありました。

そんなとき、娘が集中して取り組んでいることを中断させてまで、今日の楽しかったことをママと共有したいという娘の気持ちを無視してまで、読み聞かせをすることに疑問を感じたのです。

家に本がたくさんある子は勉強ができる、という研究結果に基づいて、子どものいる家庭に絵本を配布したものの、効果は出なかったという失敗例があります。
そして、親がたくさん本を読む家庭は、子どもの学習能力が高いという研究もあります。親が読書の楽しさを知っているから、自然と、子どもも、その楽しさを知るのだと思います。

子どもへの絵本の読み聞かせが良い、というのは、少し大ざっぱな言い方かもしれません。
大切なことは、読書の楽しさを知ること。本の魅力に触れること。

「早く読み聞かせしなきゃいけないのに、遊びを終わらせない」「その本より、こっちの本を読ませたい」「また読み聞かせの途中で子どもが飽きてしまった。うちの子は本が嫌いなの?」という親のストレス。
「今日お友だちと遊んで楽しかったから、ママやパパに聞いてほしいのに」「もう眠くなっちゃったのに、読み終わるまで寝ちゃだめって言われる」「この本が大好きだから、毎日読みたいのに、読みたくない本を選ばれちゃった」という子どものストレスは、不要なもの。

読み聞かせをタスク化するか、しないか。

ぜひ自分と子どもの様子をよく観察して、各家庭に合った、一番いい方法を見つけてほしいなと思います。

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