見出し画像

1級眼鏡作製技能検定【視力の測定】

2022年11月16日
眼鏡作製技能検定の合格発表が行われた。1級と2級の合格者は26名+355名で合計381名。受験者が総数でおおよそ1760名程度ですので、第1期眼鏡作製技能検定の合格率は21.6%でした。

私は、1級検定の学科及び実技試験を受験したので、その合格率を出すと以下のようになります。

学科試験は受験者541名中、合格者76名で合格率14%
実技試験は受験者75名中、合格者26名で合格率34.7%
総勢541名が受験し、合格者26名、合格率は4.8%とかなりの難易度だ。

それと比較して認定眼鏡士のSS級、SSS級の特例講習会修了試験1級合格者は5708名で、合格率ほぼ100%の横すべり認定です。

まあこれを見て、どう感じるかは人それぞれとは思いますが、私は言いたい、身内び ゲフンゲフン があると。 おっと、失礼しました。

それはさておき一般枠にとっては、かなり狭き門となった。その中でも【視力の測定】が最大の難関だと思えるので、今後試験を受けられる方の参考になればと思い、私が受けた試験の内容を以下に記述しておきます。

先に言っておきます。個人的偏見と被害妄想が含まれる内容になるので、気になる方は読まないほうがいいかもしれません。

興味がある方のみ先にお進みください。


眼鏡作製技能士の実技試験当日

2022年8月某日
〇〇会場 午後から会場入り
この会場で1級の実技試験は5名、確か25名が1級の学科試験を受けたので、合格者はちょうど2割になる。

まずは待合室に入り、担当の人から実技試験の概要説明を受ける。

実技試験は、視力の測定⇒フィッティング⇒加工の順となった。説明があるまでは、受験者それぞれが3科目の実技試験を分かれてやるものだと思い込んでいたが、どうも違うらしい。

この会場での受験者人数が少ないのが理由だと思われるが、5名が同科目の実技試験を、同時進行することになっていた。

指定の時間となったので、視力測定の試験会場に全員で入った。会場には視力測定の設備が5列並んでいて、受験者それぞれが指定の席に座った。

私は席番号が3番になっているので、ちょうど真中の席に陣取る事になる。
担当の審査員は、受験者それぞれに2名ずつ配置されるようだ。そして私の目前には、高校生と思われる少年が被験者として座っている。

最初に実技試験の手順説明が行われ、そこで初めて試験用紙の書式を見ることができた。

乱視の検査の手順について、イ)雲霧法、ロ)クロスシリンダー法、いずれかを選んで記入するように指示されたので、私はクロスシリンダー法に〇印をつける。

バランステストの検査法は、イ)交互遮蔽法、ロ)偏光文字指標、ハ)偏光レッドグリーン法のいずれかを選んで行うように言われたが、〇印は実際にバランステストを行うタイミングで記入するよう指示されたので、今の時点では記入しない。

試験開始までの時間、器具の配置等を自由に動かしても良いということなので、私は普段からやり慣れている被験者の左側から検査できるように席を配置替えした。

リモコンの動作確認も何回か行い、同時に頭の中で手順のシミュレーションを繰り返す。

被験者の高校生の首から、ネームホルダーが掛かっている。被験者それぞれに設定があるようで、それには他覚検査の度数が記入してあった。

R)S-2.50C-1.00AX50 L)S-2.25C-1.00AX70と書いてある。
検査に支障が出ない程度に、他覚検査の度数は変更してあるという説明だったが、若いのに乱視軸が立っているので、少し違和感を覚えた。

私の被験者である高校生君は、現状でメガネを掛けていないが、メガネ自体は目の前のテーブル上に置いてある。パッと見ではS-3D~S-4D位のメガネ度数に思える。

実技試験が始まった、試験時間は30分だ。

【問診を行う】

年齢を聞いたが、高校3年生だということ。メガネを普段は掛けていないらしい、授業中だけだという。度数からして普段使いしないのは不自由だろうに、と思って高校生君に聞いてみたが本人曰く大丈夫らしい。

いつ頃メガネを作ったのか聞いてみたら3か月前で、そのメガネはよく見えていると言う。じゃあ、そのままでいいじゃないの、とは思ったが当然口には出さない。

後にいろんなトラップ? が仕掛けて有ることに気付くことになるが、そのことの説明の根拠として、自分の検査方法を先に述べておく必要が有るので、少し長くなるが記述をしておく。

私は、自社の新人スタッフに視力検査の教育を行っている。その際、特に気を付けていることが一点ある。それは検査時に、予測と検証をいれることで間違い(過矯正)を防ぐことである。

具体的には、裸眼視力からの最高矯正度数の推測、現用眼鏡の度数と視力を踏まえた上で、最高矯正値の予測と実際に出た度数との整合性、そして最高矯正値と現用眼鏡の視力から装用度数決定に至る視力の整合性を、常に意識しながら検査を行うようにと教えている。

こうやって書くと、難しい事のように思えるかもしれないが、実はとても簡単だ。視力0.4の基本を覚えると、そこから予測が行えるようになる。

まず、近視の場合、裸眼視力0.4ならS-1.0D前後の度数だろうと仮定する。
視力0.2なら、視力が半分に落ちているので度数は2倍強くなり、S-2.0D前後の近視。視力0.8なら、視力が2倍見えているので度数は半分になり、S-0.5D前後の近視という具合だ。

無理やり計算式にすると、0.4/視力=度数となる。だから新人スタッフに、乱視検査後の雲霧は一律に度数を落とすのではなく、必ず視力を0.4の視力表がやっと読めるくらいまで落とすように、と教えている。

なぜなら、雲霧検査時には、すでに乱視の矯正自体は終わっているので、あとは球面のみの補正となり、視力0.4がギリギリ見えるまで雲霧を掛けた場合、その時点でS-1.0D前後の残余近視があると考えることが出来るからだ。

故に、残り4段階S-1.0D度数を上げた所が最高矯正付近だと予測することが出きるので大きな間違い(過矯正)を防ぐことが出来る。

ということで、前置きが少し長くなったが、この予測しながらの実技試験が始まった。実技試験の進行には一応ルールが設けられている。ルールから外れると減点の対象になるらしい。

【まずは裸眼視力と現用眼鏡視力の確認】

被験者のメガネの度数は知らされていない(通常の検査なら、現用眼鏡の度数を調べないという選択肢はまずない)ので裸眼視力の予測は出来ないが、被験者が持っているメガネが見た的にS-3 D~S-4 Dという処から裸眼視力は0.1VA付近だと推測する。

視力表を0.1以下の表示にしてから検査を進めるが、すらすら読めてしまい右裸眼視力0.4、左裸眼視力0.5になった?????? とすると、右眼がS-1.0D前後の近視、左眼がそれより少し弱い近視が予測値となるのだが?

次に持っているメガネを掛けての視力測定(やっぱり-3D~-4Dに見える)左右とも問題なく片眼視力がそれぞれ1.2、だが両眼視力の確認は指示されていない。この時点では、なにも思わなかったが後に両眼視力を確認させられない? 理由が判明する。

【次にカバーテスト】

カバーテストは実技試験のルールで、現用メガネを掛けた状態で近方視40㎝のみの検査に定められている。

通常カバーテストは遠近セットで行うのだが、なぜかこの試験では遠方のカバーテストが省かれていて、とても片手落ちに感じた、これではAC/A比の予測もできない。

実は、遠方カバーテストをさせない理由もあるのだが、その理由はこの後すぐに判明した。

カバーテストは、他覚的検査と自覚的検査、両方の判定記載が必要となる。
まずは、ボールペンを眼前40㎝においてカバー・アンカバーテスト、判定は斜視なし。

続いて、交互カバーテスト・・・目線が内から外に向かって動く、判定は内射位。自覚検査確認のため交互遮蔽をしながらの質問、ボールペンの先は真横に動くのかそれとも斜めに動くのかを聞いてみた。

斜めらしい・・・まじですか・・・・上下射位もある。

一応判定は、上下射位が(ある・なし)の記載だけでよいのだが、右目を解放したときに下方向にボールペンの先が動くとの返答なので、右上射位を確認することができた。

思わず、被験者の高校生君に向かって、このメガネ辛くないですか、と言ってしまった。
その直後に審査員の顔を見たのだが、何故か目をそらされた。

本人曰く、辛くないそうです・・・・そうですか、そうですよね。

こんなに都合よく実技試験の被験者に、上下及び内射位の高校生がいるとは考えにくい。現用眼鏡に、何らかの細工がされていると思ったほうが、まだ納得ができるというものだ。

両眼視力と遠方眼位を検査をさせてもらえたなら、現用眼鏡への仕込みについてある程度の確証が持てただろう。今となっては憶測でしかないが、過矯正による輻輳過剰で内射位、もしくはプリズム装用による眼位ずれを起こしているのではなかろうか?

なるほど普段使い出来ないわけだ。

【さて乱視検査に入るわけだが】

裸眼視力0.4による予測値は、S-1.0D前後の軽い近視だと思われるが、実技検査ルールによる縛りが発生しているので、掛け枠に指示通り(S-2.50C-1.00AX50)他覚検査の度数をセットする。

予測値より大分強い度数なので、レッド・グリーンテストで、緑を乱発されると思ったが予想に反して、セットした度数で同じくらいといわれてしまった。

うーむ。

私は、検査手順でクロスシリンダー法を選択している。
まあ、過矯正だとしても被験者は若いので調節力は十分にある、乱視検査は出来ると判断してそのまま続けることにする(弱矯正前提の雲霧法を選択した場合、こうはいかないが)

多分まだ仕込んであるので、(この時点でかなり疑り深くなっている)乱視軸は180度方向にグリッと回るのだろうと思ったが、予想に反して、軸はそのままで動かない?

だが、その後の乱視度数検査で、乱視度数が“0”であることが分かった。
まさかC-1.00AX50が乱視なしとは、思わず審査員の方を向いて苦笑してしまった。

あーそういうこと、そこまでやるのね。

【乱視検査が終り雲霧だが】

ここで、どうしたものかと少し悩んでしまった。なぜなら今、掛け枠の右眼側には乱視度数(C-1.00D)が“0”になったので、S-2.50Dが等価球面補正によりS-3.00Dのレンズが入っているからだ。

検査手順をセオリー通りに続けるなら、4段階程度落としてS-2.00Dにするべきなのだろうが、裸眼視力からの予測で最高矯正値はS-1.00D前後なので過矯正はまず確定だ。

先に述べた通り、私は雲霧をかけるときの視力を0.4まで落とすようにしている。

となると、裸眼視力が0.4だったので球面度数は±0.0Dまで落とすべきなのだが、実技試験中はルール上、審査員に質問ができないし、なぜそうするかの説明さえもできない。

思わず、また審査員の方を見て“どうしたらいいの” みたいな雰囲気をかもしだしてみたが、当然のごとく審査員の反応はない。

審査員は手順を見ているので、理由も示さずレンズ無しからは始めるには、ちょっとした勇気がいる。仕方がないので予測値を超えないS-0.50Dまで落としてから検査を行うことにした。

結果 RVA=0.4(1.2×S-1.50)  LVA=0.5(1.2×S-1.00)になった。
裸眼視力の予測値より強めだが、そんなに外れていない度数になったので、少しほっとした。

【だが今度はバランステストで問題が発生した】

バランステストは偏光文字指標で行う予定だったが、右左がわからなくなったというか、手持ち偏光メガネを自分で掛けてみて、左右が上下で分離していないのがわかり、ひどく混乱した。

リモコンを何回も操作するが、上下が分かれて見えないのだ。
開始前のテストでは問題なかったのに、最後の最後でこんなトラップを仕掛けてくるとは。

おーい審査員の人、もう勘弁してくれと言いたい。 しかしながら、残り時間が5分しかない、このままでは試験完了できずに失格になってしまう。

悩んだ末に、検査方法を交互遮蔽法に切り替え、その旨を審査員に伝えて検査を続ける。 両眼バランス(R-1.25D L-0.75D)視力1.2でどうにか試験を終える事ができた。

検査終了後に、なんで上下が分離しないのか審査員に聞いてみた。
液晶ディスプレイ型のチャートは偏光の角度が浅く、正面からはいいが、少しでも斜めから見ると上下が分離しないそうだ。

私が普段使っているチャートはフィルム型の年代物なので、使い勝手が違うみたい。審査員の人、疑ってごめんなさい。

まあ、なんにせよ時間内に検査が終了してよかったよ。

【実技試験を終えてみて】

被験者の高校生達は、5名とも同じ制服を着ていた。
私の担当した被験者高校生君は、もう就職は決まっているといっていたので、今回はアルバイトなのだろう。

私は、少し早めに会場に着いていたので、視力検査の会場を覘いてみたら、結構な人数がいて、それぞれが視力検査を行っていた。

もしかして、実技試験が午前中に変更になったのかと少し焦ったが、あとでよく考えてみると、どうも高校生達のロールプレイングを行っていたらしい。

実技試験中、私は真中の3列目で検査をしたのだが、検査時、被験者の左側に座ったので、4列目と5列目の高校生を観察することができた。

私の被験者の高校生君は、自分の? メガネをテーブルの上に置いていたのだが、4番、5番の高校生達はメガネを掛けていないし、テーブルの上に置いてもいない。

もしかして、メガネを使っていない子達の検査をするのかと思ったが、実はちゃんと眼鏡を持ってきていた。

実技試験が始まる直前に、審査員が高校生たちに向かって、メガネを出すように促されてから、おもむろに4番、5番の高校生がシャツの胸ポケットから眼鏡を取り出したのだ。

えっ、メガネを日頃から使っている人が、メガネを裸のまま胸ポケットにしまうのか? と驚いてしまった、普通ならケースの中にしまうか、テーブルの上に置くでしょ。

高校生はそれが普通なのかなとも思ったが、2人同時なのは、あまりに不自然だったので鮮明に覚えている。まあ、自分のメガネじゃないだろうしね、メガネ慣れしてないのが見え見えですよ(笑)

実際、被験者の持っているメガネについて、断定はできないが仕込みだと私は思っている。まあしかしだ、冷静になって考えてみると、受験者の眼位テストの判定能力を試したいなら、それも有りなのかもしれない。

それに、世の中には過矯正のメガネを掛けている人は、少なからずいるわけだしね。

そうはいっても、通常の視力検査では考えられないイレギュラーだらけで意地が悪すぎる。

さすがは国家資格1級の実技試験というべきか、私的にはかなり難易度が高い意地悪な仕掛けが仕込まれて? いるので、よほど合格させたくないのだなと思ってしまった。

終了後に試験を受けた人たちと、少しだけ話をすることができた。内容は伏せるが、うわーっ! と思うような設定の人もいた。そんなのに当たらなくてよかったよ本当に、ご愁傷様でした。

【次回、1級実技試験を受ける人へ】

1) 持ってきているメガネは仕込んであるかもしれない、過矯正とプリズム。

2) 他覚検査値は全くあてにならない、かなりの過矯正、乱視は完全にフェイクだと思っていい。

3) 裸眼視力のみが頼り、予測をしっかり行うこと、できないと雲霧法の人は詰みますよ。

4) レッドグリーンの返答の仕方などは、嘘? で返してくることもあるので鵜吞みにしない。

5) 問診も、まあ設定? なので、あまり突っ込まないように、かわいそうなので(笑)

以上、 次回1級実技試験に行く人の参考になれば幸いです。 ご健闘をお祈りします。

追記
できればコメントも見てください。
質問に関する回答が載っていますので、参考になるはずです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?