【要約文】 Chatter「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法

『Chatter「頭の中のひとりごと」をコントロールし、最良の行動を導くための26の方法』イーサン・クロス著 を要約します。

読書をしても内容を忘れてしまうことが多いので、備忘録のために📝
また、この本にご興味のある方に少しでも参考になれば嬉しいです。

■「Chatter(チャッター)」とは
チャッターを構成するのは、「循環するネガティブな思考と感情」。こうした思考・感情が、「内省」という素晴らしい能力を、呪いに変えてしまう。

研究により、苦痛を感じているときに内声を実行しても、有害無益であることがわかった。仕事のパフォーマンスや判断能力を低下させ、攻撃性を助長させ、精神疾患を引き起こす可能性も高まる。

思考における言語の流れは非常に忙しなく、ある研究では、内政における独り言のスピードは1分間に4000語を発するのに匹敵することがわかった。
現代のアメリカ大統領の一般教書演説は通常、約6000語で構成され、約1時間にわたる。1日に活動している時間が16時間とし、内なる声がその半分の間活動しているとすると、1日に320回もの演説を毎日聞けるということ。

■内なる声はなぜ存在するのか
2010年に14ヶ月行われた研究で、ニューヨーカーの思考を言葉に発し、録音させた。しばしば悲観的な思考に向き合っていたが、それらの多くは、一つの思考から別の思考へのスキップ(連想)を通して行われた。

別の研究では、「想像上の遊び」によって、独創的思考、自信、良好なコミュニケーション、自己制御を促すことがわかった。内なる声が自己制御を促す方法として、目標への達成度を自己評価することが挙げられる。これは、スマホのリマインド機能のようなもので、心の中を頻繁に占めるものの一つである。目標達成のためには、岐路に立たされたときに正しい判断ができるよう、内なる声によりシミュレーションを行っているのだ。

2010年の研究では、内部の経験が、外部の経験を卑小に見せることがわかった。つまり、実際の経験よりも、内部で考えたことの方が、幸福度に影響するということだ。

■自分に話しかけることが引き起こす問題
1980年台の研究では、人は嫌な経験について他人に話さずにはいられず、負の感情が強いほど、ますます話したがることがわかった。

悲しみを抱える人を対象にした研究では、嫌な経験を反芻しがちな人は、損失を被ったとき、より多くのサポートを受けようとすることがわかった。さらに、社会的な軋轢を経験していることが多く、人からのサポートを得にくくするのだ。

■自分に関する情報を共有すると、高揚感がもたらされる
研究によると、誰かに魅力を感じたり、好みの物質を摂取したりするときに活性化するのと同じ脳回路が、「自分に関する情報を人と共有するとき」にも活性化することがわかった。
2010年ハーバード大学の研究では、人はお金をもらうよりも、自分に関する情報を共有する方を好むという。

■ストレスへの反応
第一段階では、脳の視床下部で始まる。視床下部は、脳の他の部位から脅威のシグナルを受け取ると、血中にアドレナリンを放出する。その影響で心拍数が速まり、血圧とエネルギーレベルが上がり、五感が研ぎ澄まされる。しばらくすると、ストレスホルモンのコルチゾールが放出され、体内のジェットエンジンが燃焼し続けることで、エネルギーレベルは維持される。その間に、差し迫った脅威への対処に必須ではないシステム(消化器系、生殖器系)は抑制される。
チャッターが頻繁に脅威システムを作動させると、炎症遺伝子が発現する。ウイルスを撃退する機能を持つ細胞が抑制され、病気が生じやすくなるのだ。

社会的ネットワークとの繋がりを持たないことは、タバコを1日15本以上吸うのと同等の死亡リスク要因である。これは、アルコール過剰摂取、運動不足、肥満、大気汚染よりも大きな要因である。

■問題と心理的な距離を置く
問題に躓き、柔軟にズームアウトする(視野を広げる)能力が失われると、内なる声は反芻に変わってしまう。ストレスへの心臓血管系の闘争・逃走反応が抑制され、脳内の感情活動が沈静化し、攻撃性は控えめになる。

ベルギーの研究では、傍観者の視点に立つことで、問題から距離を置くと、怒り・悲しみを感じる持続時間が短くなることがわかった。とはいえ、距離を置くことにより、ポジティブな経験もともに短縮されてしまう。よって、壁に止まったハエのようになるのではなく、ひたすら没頭するのがよい。

別の研究では、9年生を対象に、宿題をする大局的な理由に注目するよう指導すると(良い成績を取ればやりたい仕事につける、より社会に貢献できる)、成績は上がり、「退屈だが重要な問題」に集中し続けるようになるとわかった。

恋人と喧嘩をしたときにも、距離を置くことで恋人との関係は改善する。問題に対して埋没するタイプは、パートナーが自分に対して怒ったり軽蔑する姿勢を見せると、同じような姿勢を見せて応戦した。一方で、問題に対して傍観するタイプは、パートナーが自分に対して同様の姿勢を見せても、穏やかな姿勢で問題を解決した。

■ストレスを「脅威」から「挑戦」に変える
ストレスのかかる状況に置かれたとき始めにすることは、「この状況で求められていることは何か」「求められていることに対処するだけの資源を有しているか」を自分に問うことである。
「自分は対処に必要な資源を有していない」と判断すると、ストレスを「脅威」と評価し、「自分は対処に必要な資源を有している」と判断すると、ストレスを「挑戦」と捉える。
ストレスを「挑戦」と捉えた方が、より良く感じ、考え、行動することができる。距離を置いた自己対話は、より挑戦志向で考えるよう導き、状況を「世界の終わり」のように捉えるのではなく、「君ならできる」という激励を自分に送ることができる。

■他人との対話がもたらす功罪
2008年、ノーザンイリノイ大学で起きた銃乱射事件後、学生の約9割がFacebookコミュニティで事件のことを話し、その学生のほとんどが直後は気が楽になった。しかし事件から2ヶ月後、鬱やPTSDの症状に影響はなかった。
2001年の同時多発テロから10日の間に、事件についての感情を人に話した被験者は、そうでない被験者と比べ、さらに多くのチャッターに襲われた。最も頻繁に感情を共有した被験者は、苦悩が最も大きく、体調は最悪だった。

ネガティブな体験について人に話すとき、「何があったのか」「どう感じたのか」を詳しく聞かれるが、これによりネガティブな感情を追体験することになり、さらに鬱屈とした気分になってしまう。これを、「共同反芻」という。

■チャッターを制御するための方法

【自分だけで実践できる方法】

1.距離を置いた自己対話をする
自分を指すのに、名前や「あなた」を使うことで、反芻に関わる脳のネットワークが抑えられ、パフォーマンス向上、賢明な思考、ネガティブ感情を減少させることができる。

2.「友人に助言している」と想像する
問題と距離を置いて考えるためには、「今の自分と同じ問題を抱えた友人がいたら、どんな言葉をかけるか」を想像してみる方法もある。

3.視野を広げる
チャッターにより、直面する問題にしか目が行かないようにさせる「視野狭窄」が生じる。自分(もしくは他人)が今までに経験した辛い出来事と今抱えている出来事を比較したり、「尊敬する人が自分と同じ状況ならどう対処するか」を想像する方法がある。

4.「試練」と捉える
チャッターが始まるのは、ある状況を「脅威」(対処できないもの)と捉えたときに多い。脅威ではなく、「克服できる試練」と捉え直すこと。そのためには、過去に同様の状況で乗り切った経験を思い出したり、①の距離を置いた自己対話を活用すること。

5.チャッターによる身体反応を解釈し直す
ストレスへの身体反応は、ストレスかで結果を出すための適応反応であり、試練に立ち向かうための応援なのだと、自分に言い聞かせる。(この詳細は『スタンフォードのストレスを力に変える教科書』ケリー・マクゴニガル著を読むことをおすすめします。)

6.経験を一般化する
「同じような経験をしたのは自分だけではない」と知るのは、チャッターを鎮める有力な方法だ。

7.心のタイムトラベル
今抱えている問題について、1ヶ月後、1年後、あるいはもっと先に、自分がどう感じているかを考えてみることで、「後で振り返れば今の悩みもちっぽけに思える」と気づくことができる。

8.視点を変える
ネガティブな経験について考えるとき、壁に止まってその場面を下ろす「ハエ」のように「こっそりと他人を観察する」ような視点で見ることにより、経験への感情よりも出来事に目が行き、全体像の把握が促される。
カメラがズームアウトするように、ネガティブな経験をした場面を、切手ほどのサイズに縮小したイメージで眺めるという方法もある。

9.思ったままを書いてみる
ネガティブな経験についての気持ちを、15〜20分ほど書き出してみることでスッキリする。また、語り手の視点で見ることにより、問題から距離を置くことができ、ネガティブな感情を抱いた理由がわかる。

10.中立的第三者の視点を取り入れる
他者とのやり取りでチャッターを感じたときは、中立的第三者の視点に立つことで、ネガティブ感情が軽減し、相手との関係の質が改善される。

11.お守りを握りしめる、迷信を信じる
プラセボ効果の一つ。

12.儀式(意味を込めて定められた一連の行動)を行う
自己流で作り出した儀式でも、チャッターを鎮める効果がある。

【他者に支援を与える方法】

1.感情面と認知面の両方のニーズに応える
チャッターに感して他者に支援を求める人は、思いやりと支援などの感情的ニーズと、物事を前進させるための具体的助言など認知的ニーズを持っており、その両方を満たすことが必要である。共感するだけでなく、視野を広げさせ、希望を与え、経験を普遍化させるようなアドバイスをすること。

2.目に見えない形で支援する
話を聞くときに相手のニーズを考えずにアドバイスをすると、自己効力感(「自分は困難を乗り越えられる」という信念)を損なってしまうことがある。自己効力感が損なわれると、自尊心が傷つき、健康、意思決定、人間関係へのダメージが及ぶ。
当事者に気づかれないように助けることが、相手に決まりの悪い思いをさせないための秘訣である(頼まれていなくても家事をする、相手が仕事に集中できるような環境をつくるなど)。

3.子どもには「スーパーヒーローになりきってみよう」と言う
「バッドマン効果」と呼ばれる。困難な状況に直面したとき、憧れのヒーローになりきって行動するよう言い、そのキャラクターの名前で呼ぶよう促す。

4.愛情を込めて触れる
チャッターに圧倒されている人をこっそりと助ける方法として、「愛情の込もった身体的接触」がある。近しい人から、「愛情を込めて触れられている」のを感じると、安全で、愛されており、支えられていると解釈する。オキシトシンやエンドルフィンなど、ストレスを解消する物質が分泌され、ストレスに対処する力を向上させ、人間関係の満足度を高める。

5.誰かのプラセボになる
チャッターに対処できるか、いつまで困難が続くかなどの信念は、他者からの影響を受けやすい。「状況は改善する」という楽観的な見方を伝えること。

【支援を受けるための方法】

1.顧問団をつくる
感情的ニーズと認知的ニーズの両方を満たしてくれる人を見つけること。また、仕事や人間関係など、悩みの種類に合わせて適した人を見つけること。

2.身体の触れ合いを自ら求める
安らぎを与える無生物(テディベア、毛布など)を抱きしめるのでも同じような効果が得られる。

3.愛する人の写真を眺める
自分を気にかけてくれる人について考えると、「参っているときでも頼れる人がいる」ということを思い出すことができる。

4.儀式を誰かと一緒に行う
集団での瞑想、試合前のチームでのルーティーンなど、儀式は人前で行うとさらに効果的になることがある。

5.ソーシャルメディアの受動的使用を最小限にする
妬みなどの自虐的感情を招きかねないため。

6.ソーシャルメディアを利用して支援を得る
ネガティブな考えの衝動的な共有には、気をつけること。

【環境に関わる方法】

1.環境に秩序を作り出す
チャッターに見舞われると、「自己コントロール感を失っている」と感じがちである。片付けやToDoリストを作るなど、周囲の環境に秩序を与えることで、コントロール感を高めること。

2.緑地を活用する
緑が見える住居に住む人は、殺風景な都市景観しかない住居に住む人よりも、かなり集中力が高く、難しい判断を先送りにする傾向が少なく、前向きな行動をすることがわかった。
別の研究では、自然の写真を眺めたり、自然の音を聞くだけでも効果があることがわかった。(スピーチをした後、街路を写した6分間のビデオを見せた。木が1本もない通りに並ぶ家々のビデオを見たグループと、樹々が生い茂るビデオを見たグループでは、後者の方がスピーチのストレスから回復する力が60パーセント向上した。)

3.畏怖を誘う経験を求める
畏怖を感じると、自分が抱えている問題を超越して、対局的に物事を見られるようになる。息を飲むような眺望に触れたり、素晴らしい芸術作品を鑑賞したり、眺めるたびに畏怖の念を覚えるような空間を身の回りにつくるなど。

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