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大丈夫という兆し

タイ古式マッサージをはじめてわりとすぐの頃、
「あなたの心の中にあることは私の心の中にもある」
という言葉を受け取った。
どこかから聞こえてきたような、
身体の中からふと湧いてきたような、
そんな感じだった。
で、今から3年くらい前のある日、
腹部に置いた手が勝手に動き出したので、師匠に確認したところ、「アムリタ」と呼ばれる手技だと教えてもらった。
「アムリタ(甘露)は甘露飴、甘露煮、甘露梅など、甘さや甘辛さを表現する言葉として日常生活にも浸透しておりますが、本来の意味は〈〉が消滅した、平穏な心の状態を表していて、辛い体験や苦しい体験も、延いては自分の心の栄養や糧となる」という意味があるようだ。
アムリタで自然発生した腹部の振動は、「辛い、苦しい」という過去の記憶がある場合、それらを記憶してこわばっている身体に揺さぶりをかける。そして「それはもう終わったことなんだよ」と感情(水)に気づき(火)のサインを送る。風を伝って振動が思考に届くと、頭の中は別の何かや新しい何かを考えるようになる。タイ古式マッサージには四大元素の論理(火→水→風が融合して足元(地)へと降りる)という工程が組み込まれている。そして「ちょうど好い自分になった所(今)から、また人生を始めて(行動して)みると、どんな感じになるだろう?」を確認していく過程も入っている。きっとそれが「生きる」ということで、本来の自分に近づいていく自分を、少し離れた所から眺めるようになる。テキトウに好い加減に心身のバランスを塩梅して、内側と外側を寄せて引いて、自分の内側と自分以外の人との関わっていく外側の世界との融合。寄せて引いてはタイ古式の基本的な技法で、この感覚は決断して行動していく上で役に立つ。タイ古式マッサージをやるようになると、人生を無理なく楽に生きていく方法が少しずつわかってくる。
生きていると、日々色々な出来事が生じる。変わること、変わらないこと、変えられること、変えられないこと、色々あるけど、そんな中を私達はグルグルと生きていて、腹部に触れると、お腹もグルグルと動き出す。
「これからもきっと大丈夫」と思えるから、私はタイ古式マッサージが好き。「なぜそう思えるようになるのか?」という理屈も、四大元素の理論が技の中にちゃん入っている。風に触れると、心配や不安という気の質が変化して、身体の内側からもお客様と私を取り巻く外側の空間からも、希望や期待という可能性が近づいてくる。「大丈夫」という心地よさを感じて、好い兆しを身にまとっていれば、混沌とした時代の中でもなんとかやっていけそう。タイ古式マッサージで「大丈夫」という感覚が確かめられれば、私は自分の中から生じる不安や恐怖とも上手く付き合っていける。
タイ古式マッサージは生きることで生じるあらゆる苦しみを軽減させるためのお釈迦様のマッサージ。「修行僧や悟りを開く人のため」というよりは、ここに生きるすべての人の心と身体の緊張を緩める休息の時間。と言っても、私の店は女性専用サロンで、男性のお客様はご紹介のみ。いつかその枠がなくなる日が来るのだろうか?流れに任せて様子をみることにしよう。

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