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死んでしまった彼との時間


これは、
「私を置いて死んでしまった彼との時を綴るnote。」

(そうすることでなにかが見えてくるかもしれない)

おもってしてみていること。

何が見たいのかもわからない。

ただ、今、自分のためになるやもしれぬと綴るだけ。

自分のためになどならないかもしれないけれど、それでもいい。
綴っておこう。

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「金もないけどね、一緒に流されよう」
と、言われたと思う

出会ってすぐの頃、私がつきあいをためらうようなことを言ったときに、そう言われたと思う

いや、言われた!

それは
好きとか愛してるとかそんなんじゃなくて
ちょうどいい言葉だった
本心だなって思えた

それで

流されてみるのもいいかなと
思えて、、、、

わからないけど
なんだか思えて

流されてるくらいだからね
ほんとよくわかっていなかったと思う

彼は、私とのあれこれを他の誰かに安易に
ましてや面白おかしく話したりはしないだろう

彼には
そこにある種の「美意識」があって
それが私の気に入るものだったんだと思う

彼にとって、私の話は自分の話

下手に話して自分のプライベートをさらけ出したりはしない

これ、
「話してほしくない」に重きはなくて
「話さない人」に重きがあるわけなんだけど、わかるだろうか

実際、彼と居た数年の間、誰かといて下品な話を彼がしているのを聞いたことはない

彼は
部屋もキレイにしていた
靴の棚も
もちろん靴自体も
キッチンも
もちろん調理道具も
トイレもキレイだった

着る物も
持つ物にも
身の回りのものにも
彼なりのこだわりがあった

そして
私といる時は、ほぼニコリともしない
けれど
ほんとは優しい

私が病院に行かなければならないとなれば
連れていってくれて
終わるまでの長時間を待っていてくれた

はじめての私の誕生日には、
船上での食事を用意してくれて

いつだってどこかに行けば
なにかをお土産にしてきてくれた

ニュースをみていてどこかの地で被害があれば
そこに住む知人にすぐに電話をする彼が好きだった

彼を頼ってくる人たちはとにかく多かった
けれど、その対応はいつも誠意があって優しかった
そしてアドバイスはいつも冷静で正しかった

彼は運転する車内で電話を受けていた
ハンズフリーだから内容は嫌でも全部聞こえてしまう
彼がどんな人かをそこで知った

ある時、いつも酔っ払っているおじさんがフラッと店の前で言った
「彼は、仏様のようなひとなんだ」と

きっと、お金があった頃に何らかの形でおじさんを助けたんだろうと察した

その時間には、優しい空気だけがその人と私と彼を覆ってた

私は、なにをしたのかと彼にもその人にも詳しく聞くことはしなかった
彼もその場でもその後にもなにも言わず
普通の顔して普通に過ごしてた

そういうところもかっこよかった

父親とまではいかずとも
かなり歳の離れた恋人は
敵か味方かで
全く違う顔を見せる

私も40代
充分大人だったはず
だったはずなのだけど
彼からすればいつだって小娘だった

彼の交友関係は経験の数だけ広く
彼の店に数人の知人が集まっていた時のこと

私は《ただ店を手伝う人》に見えるように、出過ぎないように、していたつもりだった

にもかかわらず、
その中の1人から

「こんな可愛い子、どこに隠していたのよ」と
突然始まった

それに対して
私はニコリと返して良いものか
笑ってしまえばよかったのか
お茶を出す手をとめることすらできずに
また、聞こえてるんだか聞こえてないんだかを装った

彼とその方の関係性もまだわからない頃のことで、どうたち振る舞えばいいのかまったくわからなかった

もしや私が思うよりもずっと
私の存在はあからさまだったのか。。。とだけが頭の中にぐるぐるするだけ

今思えば、、、
私が気にかけるより
彼にとってだれかに見抜かれることなど
百も承知だったのかもしれない

なにか言われたとて
彼にとっては大したことではなかったんだろう
もしかしたら、彼は口で言うほどには見抜かれて困ることはなかったのかもしれない

「箪笥の引き出しに大切にしまっておいたの」
とその人に言った彼のちょっと笑った顔が忘れられない

その中に、、、
《店の人》である私にすら丁寧に
「お邪魔します」と言って頭を下げた女性がいた

まさか、後々彼女が私を悩ませる人になろうとはその時は思ってもいなかった

彼に何度も彼女との関係を問い正してみたけど
「大事なお客さんの娘さんなだけ」
というばかり

いやいやいやいや、彼女のことを気に入っていたのは事実だとは思う
けれど、それも今思えば
気にやむほどのことではなかったのかも?

彼女の話はまたいつか、気が向いたらにしよう


彼は、強靭だった
彼のエネルギーは、本人が患っていた病気をも吹き飛ばしたかのようにも見えるときがあった

けれど
本当は本当は、たくさんつらい症状がでていた

強靭が故に
大丈夫そうに見えたけれど
実際はそんなに甘いものではなかった

我慢強いのにも程がある
だから誤解されることもあった
それは最後まで私を苦しめた

彼が言うに
「金の切れ目は縁の切れ目だよ」とのことなのだけれども、、、、

一方、晩年、彼が一緒にいた方々の
男気には、頭が下がる

ここから見たものはたくさんあった
学び深いものだった

お金とは、、、、ね

けれど彼が
弱きものには優しかったのは、
私と出会う前からもそうだったのではないかと私は思うのだけれど
出会う前の彼のことは、知らない

会ったことのない私の母のこともいつも気にかけてくれていた

自分が体調の良い時には
海へ、山へ、街へ私を連れて行ってくれた

桜が咲けば桜を追って
藤を
牡丹を
躑躅を
ひまわりを

それは、いつだったか
私がSNSで呟いたものだった
それを実行してくれたんだなと
今思う

花火もあちこちに連れて行ってくれた

まるで、最後の桜と
最後の花火と言わんばかりに
追いかけた
暗黙の了解
2人ともそうとは言わずに
花を花火を目に写真に残した

父と娘と思われることもしばしばの私と彼
いつだって
腕を組んで歩いた
手を繋いで歩いた
その時間はあたたかかった

彼がポケットに手を入れてちょっと前を歩けばくっついた

車の中で
「助手席と運転席の間に椅子があれば運転中もくっついていられるのに」
と言ったら

本気にして、どうにかしようとした彼は可愛かった

2人で躑躅を見にいった公園
なんだったか、彼がいつものごとく不機嫌になっていた

いつものことと、知らんぷりしてくっついて歩くと
すれ違いざまに
「素敵ねー♡」と声をかけられた
振り向くとおばちゃんたちがニコリと笑ってアイコンタクトをとってくれる

年齢を重ねた女性たち
かっこよかった

私が彼をみて笑うと
彼もちょっと嬉しそうにしてた
少しだけ不機嫌解消

私もいつか「歳の離れたそんな二人」がいたら
そんな風に思える女性になるだろう





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