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口遊む唄

とろとろと とろとろと
足音引きずり歩いてく
靴底すり減り 空は変わらぬ

どこへゆこう どこをゆこう
しるべも無いまま流れてく
棹差す水面は底もなく

とぷんと呑みこむ おまえはだあれ

気づきゃ私が水の中
息はできるが 流れゆく
声は溶けてく 泡の随に

はらはらと さらさらと
流れ流れる雫さえ
水に紛れて消えてしまうよ

此処へゆこう 此処へゆこう
しるべはなくとも此処へゆこう
腕の棹差しゃ痛いけど

伝う血が云う 今がおまえと

気づきゃ河原の石の上
肺に刻むは今の息
響け詠うよ消させやしない

詠いませう うたいませう
ちいさなちいさなわらべ歌
口遊むまま今をうたって



©2016  緋月 燈

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