涙雨を抱いて
大気に孕まれた水が
空気の境を這い出してくる寸前
空があついねずみ色を帯びる
きっともう涙腺は限界なんだ
それでも泣けない君の背を
風があたたかく撫でてゆく
生温い風はヒトの不快指数を上げるけど
赤ん坊が泣くのは当然のように
悲しみを抱えきれない涙が産声をあげるのだって
当然じゃないか
涙を拭ったりなんてしなくていいよ
ただ 今は泣けばいいよ
寄り添う腕はそこにあるから
たくさんのものを見すぎた君
抱えきれないなら
投げ出してしまってもいいよ
赤茶けた惨劇の多すぎる世の中で
誰もが毀しきれない痛みを抱えてる
虚無を抱えて折り合う
せまっ苦しい視界に怯えながら
感情みたいに迷子な自分に迷う
君はどこにいたいのか
空のように天から動けないなら
今の自分を捨ててもいいのかもしれない
またはじめから積み重ねることになるけれど
©2016 緋月 燈
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