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夏至の時間

新月と金環日食が重なる今年の夏至の日にした、いくつかのこと。

 夏至の夜に七種類の花をそばに置いて眠ると幸せに、といういいつたえ。わたしのために束ねていただいた花束とミッドナイトサマーの夢をともにしたこと。

 夏の祝福を祝う“光”と、冬の安息を労わる“闇”のふたつのカードデッキをまぜて陰陽にし、特別な日に特別な問いかけをしたこと。わたしのつぎの冬至までのキイワードは「弓」「新月」、そして「秘密」

 草花と石でラビリンスをつくったこと。

 日食、新月、夏至が重なる日は「死と再生」の日でもある。生きながら生まれ変わるためにそれまでの自分からさらに軽くなるための、それは再生。

 迷宮は「出口」のない場所だと思われているけれども、入り口があるなら出口はかならずあり、そして入り口は出口でもある。そこに入って迷いこむうちにおおきく渦を描いて自分を拡大させ、そこでおおきく育った自分はふたたび入り口からその場所を出て、また異なる「入り口」に入る。そのための祈り。そのために草花でつくったちいさな緑のラビリンスの道筋をその入り口から新緑の若枝でなぞったこと。死から再生へ、冬から夏へ。

 それから。

 思えば夏至の日の前々夜、花と香りとキャンドルで聖堂をつくって踊りのレッスンをしたのも「夏至のためにしたいくつかのこと」のひとつでもありました。手のひらに星屑を掬い天にかざし、大地とつながるために根となり、波に揺れるように見えない水面をたゆたう。肩甲骨に生えた翼とつながる両腕でおおきく輪を描く。自分の中心にある神殿とつながる。そんな神聖な儀式を踊ったこと。

 “儀式”のまえにオラクルをひき、出現した女神はペレでした。聖なる火の女神。山の奥深くに眠る“火”を目覚めさせるための、美しい情熱。夏至の前々夜をともにしてくれたモナルダの花に、おりしもそのペレの気配を感じたことが示唆的でもありました。

 雨の雫をまとったままの花。キャンドルの灯。呼吸が深くなるほどに頬の熱は肉体へとおり巡っていき、踊りの一部に。野性の聖域のなかに群生する、本能の火が燃えたつようなモナルダ。

 そしてこの夏至の日の新月で金環日食のことを、なんだか神話のなかの「岩戸隠れの女神」のように感じて、その“隠れてしまった太陽”を呼び戻すための方法が踊りであったこと。なんとなくそれとおなじようなことをしていたのかしら、とあとから密かに思って楽しかったのでした。

 エドワード・ロバート・ヒューズ/真夏の夜の夢

 乙女の夏至前夜。

 

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