クイズで学ぶ画像診断「1手詰」 読影のキホンが身につく必修手筋101~レビュー

今回、木口貴雄先生・山路大輔先生の著書である「クイズで学ぶ画像診断「1手詰」 読影のキホンが身につく必修手筋101」(金芳堂)をご献本いただいたのでレビューを書かせていただきます。

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木口先生について


書籍のレビューに入る前に、木口先生のことを話そうと思います。
木口先生のアカウントはこちら。

木口先生は今でこそ学会・勉強会での講演やtwitterなどで、知らない先生はいないといってもいいほど有名な先生です。しかし、一時期は各勉強会のフィルムリーディングでサラッと(←ポイント)優勝し、表彰式にはいらっしゃらない、という謎に包まれた先生でした。

「一位は一宮西病院の木口貴雄先生です。木口先生いらっしゃしますかー?あ、いらっしゃらないようですね。それではフィルムリーディングは終了になります」

このような光景がテンプレのようにどのフィルムリーディングでも起こり、

「一体木口先生とは何者なんだ…」

と思っている期間が非常に長かったと記憶しています。実はRadiologyのDiagnosis pleaseで超人的な実績も残されているということを後に知ることになるのですが。

前置きが長くなりましたが、それだけ木口貴雄先生は画像診断の実力は圧倒的であり、日本の至宝とも言っても遜色ないほどの実力者の先生なのです。まずその木口先生の処女作というところで、この本の価値はプライスレスであることを強調したいです。

書籍について

私は読み始めるまでこの本は「木口先生がその類まれなる才能と経験で解いてきた珠玉の難問症例集」である、と勝手に想像をしていたため、読み始めるまで一週間以上を要しました(気合を入れないと読めないと思ったため)。

しかし、その印象はいい意味で裏切られました。実際の書籍は「診断専門医であればほとんどがsnap diagnosisできるレベルの初級者~中級者向け」の演習書でした。一問数分程度でサラっと読め、非専門医であればinput後のoutputに最適、専門医であれば復習に最適な一冊です。余計な情報が一切ないため、ほんとにサクサク読めます(私のように気合をためてた人はすぐ買って読んでください、笑)。

しかし、このような本って他にもあるのでは?と思われた方もいらっしゃると思います。この本の素晴らしいと思ったところを何点か箇条書きにしたいと思います。

①問題と回答が表裏になっている
放射線科の教科書に限らず、意外と多くの問題集や演習書で「問題のすぐ下に解説・回答が書いており、見たくなくても間接視野で答えが見えてしまう」ものが少なくありません。この本は問題のページと回答のページが見開きになっていないので、余計なノイズなしに問題を解くことができます。詰将棋の本がお好きなお二人だからこそのこだわりと感じます。これは今後、他の演習系の書籍にも参考にしてほしいポイントだな、と感じます。

②診断の一手、この手筋をぼえよう
各問題の一番上に必ず「診断の一手、この手筋をおぼえよう」というコーナーが設けられています。私は将棋には詳しくないのですが、恐らく詰将棋というものは「定石」というものがあり、それを組み合わせて解くものであると推測します。いわば、この診断の一手は「画像診断における定石」です。画像診断も同様で、「定石」の組み合わせである程度の解答が導き出せると思っています。この「定石」の部分だけをまとめるだけでもかなり勉強になりそうな本であると感じました。もちろん、どの教科書にも「疾患のポイント」なるコーナーはあるんですが、結構色々書きたくなったり、結局どれがポイント?となってるものも多いと思うんです。しかし、木口先生の場合は、それが非常にcriticalなんです。

私は木口先生とは過去何度かクローズドな勉強会でご一緒したことがあるのですが、木口先生は言語化が非常にお上手で耳残りが良く、昔から画像診断の能力だけではなく、言語化のセンスが非常にある先生なんだなぁと思っていました。

「木口先生のtake home messageを本にしてください」と冗談で言ったことがありましたが(ご本人は覚えてないと思いますが)、このような形で実現するとは感慨深いです。そのような意味でも珠玉の一冊と言えると思います。

脇道にそれましたが、だからこそ木口先生が書いている意味がある教科書なのであるといえるのです。

③正常変異の掲載率が多い。
本書の中に「正常構造や正常変異を異常と誤診してしまうのは、異常を見逃すことと同じことくらい罪なことだ」という文章があります。私もこれは同感であり、「放射線科医が病気を作ってはいけない」と師匠にもよく言われていました。一方、異常のように見えてしまう正常変異が多いこともまた事実であります。正常変異はその性質上、どうしても巻末のコラムなどでわき役的にまとめられることが多いですが、いざこうして問題として出会うと、「あれ、〇〇という正常変異と〇〇という疾患って画像でどう鑑別するんだっけ?」と意外と頭が整理されていないことに気づきました。そういう意味で、病気と同様に正常変異を重視している本という観点からも本書はuniqueであると感じました。

まとめ


(書籍が有用と思われるシチュエーション)
全科の画像診断に携わる医師の初学のoutput、診断専門医試験の勉強、診断専門医の復習。

(本書の特徴的なところ)
・世界に誇る日本の画像診断医の処女作
・演習問題書として、解答者に配慮されたレイアウト
・コンパクトでサクサク読める。
・木口先生の類まれない言語センスによりまとめられた「定石」集。
・正常変異が多い。

最後に。
本書の出題の難易度は3段階でしたが、いつか5段階、いや10段階の木口先生にしか解けない珠玉の症例集の続編が出ることを楽しみにしております。

私はイメージインタープリテーションは本当に苦手なのですが、なるべく総会と秋季大会くらいは回答するようにしています。「難問奇問ばかり」といって敬遠する人も多いです。しかし、当事者意識をもって問題を解くことによって、解説で木口先生のようなエキスパートがどのようなところに目線を移し、どのように思考したかを知れるのはイメージインタープリテーションだけです。

前回の総会ではイメージインタープリテーションで入賞された木口先生がどのように考えられたかnoteにもまとめられてらっしゃいます。

これからも1人の木口先生ファンとして先生の活躍を見守っていきたいと思います。

読んでくださり、ありがとうございました。

私も今月末に書籍を出版します。
よかったら手に取ってみてください。


画像診断を中心とした医学系の記事を投稿したいと思っています。よろしくお願いします