おすすめ画像診断・放射線科の教科書〜勉強法、教科書の使い方編〜

私は画像診断医・放射線科診断専門医のるなと申します。下記アカウントで日々、画像診断のことなど呟いております。よかったらフォローください。



今回は私のnote記事の中で最も読まれている記事が「画像診断おすすめの教科書〜医学生/研修医/後期研修医/放射線技師向け編~」です。

ただ、私のおすすめ教科書の記事を読んだにもかかわらず、勉強の仕方が分からないという声が質問箱に日々寄せられています。もしかして、いい教科書があってもどれでどのように勉強すればいいのか分からない人が多いのでは?と案じて、今回「画像診断の教科書の使い方・勉強法」についての記事を書きました。あくまで私案ですので、ご意見色々あると思いますが、参考にしていただければと思います。

今回は新しい教科書はもちろん、前回紹介した教科書についても掲載しておりますので、この記事さえ読まれれば大丈夫というものにしています。ただし、”医学生向け””初期研修医向け””後期研修医向け”と立場ごとに記載しているので、そちらはそちらで未読の方はお読みください^^。

本邦には多数の画像診断の教科書があります。
そのvariationや分かりやすさは世界屈指であり、母国語でこれだけの教科書がある状況は非常に学習に恵まれた環境であります。一方、教科書がありすぎてどれを選んでよいかわからない、どのように学習して良いか分からないという声も聞かれます。このように無数にある教科書からお勧めを紹介する前に、これらの教科書を明確な目的持って有効に活用するために教科書を勝手に4つのタイプ別に分類してみました。以下に概念図を提示します(字が小さくてすみません!)。記事内にて紹介する教科書もA~D型のいずれの分類されるのか、を記載しています!併せて参考ください!

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A:基礎網羅型
想定しているのは200ページ前後で頭部~骨までを網羅的に記載し、実践で使うことの多い疾患に絞った、カラー仕様で分かりやすい教科書を想定しています。初期研修医、後期研修医、画像診断を再度復習したい専門医がA型の教科書での学習に向くと考えます。内容は画像診断の基礎的なものが網羅的に記載され、全医師が知るべき最低限の内容と考えます。価格も安い教科書が多いので、購入をお勧めします。非常にイラストなどが多く、会話型・口語型のものが多く分かりやすいですが、情報量には乏しくテクニック的な要素が多いため、初期学習や画像診断を専門としない先生や既知の知識の再学習などには向きますが、A型の教科書だけでは内容的に不足すると考えます。


B:通読型
想定しているのは500ページ前後の「頭部」「腹部」などある程度テーマ性を持った教科書です。解剖や病態生理の基本からメジャーな疾患の各論が見開き1~2ページ程度で記載されいることが多いであり、特定の分野を勉強するのに最初に読むべき教科書と考えます。
詳細理解より網羅的・通読が大切であり、全体像の把握を目的すべき本と考えます。ある程度、放射線診断医のコモンセンスと認識されている知識が多く、放射線科専門医レベルであれば大半の内容は既知・復習となることが多い本です。長所は1冊で解剖~病態生理、疾患各論までが学ぶことができる所です。欠点は疾患の各論のページ制限があり、情報が薄く非典型例や稀少疾患には弱い傾向があります。こちらも価格はA型の教科書よりは若干高いものの1万円以下のものが多く、放射線科医や各科専門医(たとえば消化器科医は腹部の教科書、脳外科医科なら頭の教科書)などは購入を勧めます。

C:参照・再学習型
想定しているのは500ページ以上のボリュームがあり、この1冊さえあれば日常診療には困らないという本です。国内でこのようなタイプの教科書は多くないですが、洋書ではこのタイプの教科書が多いです(今回、洋書は割愛)。通読はもちろん可能ですが、時には難しい概念の記載もあり、一疾患の説明もかなり詳細で通読するのは骨が折れます。どちらかというと、読影室に一冊参照用に置いておきたい本、サブスペシャリティにするならば通読したい本という位置付けです。私は外勤時などに参照したいので購入してpdfにして持ち歩いていますが、値段も一万円を超えるものもあり、予算に限りがあるのであれば購入については限定的になると考えます。

D:その他
図では便宜的に専門性が低いという項に分類していますが、決してそういうわけではありません。ここには上記A~Cでは分類できない用途の教科書を想定しています。

主に以下です。

「所見から逆引き型」:読影時に所見から鑑別を考える際の逆引き型の教科書
「演習型」:後述の知識の定着に必要不可欠なOutputに効率的な本。
「資料型」:ガイドライン、癌取扱規約など治療や検査方針を決める際に参照する用の本

それでは、A~D型の教科書をどのように使用すべきか?
ということを私案ですが、紹介させていただきます。



医療者が最低限知るべき、医療者のはらむ法的リスクなどを弁護士・行政書士の先生に教えていただいた内容を掲載しています。全医療者が知るべき内容です!

以下に私が効率的と考える、画像診断の勉強過程の概念図を提示します。

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土台となる基礎知識の定着
初学の分野ではまず最低限の解剖、全体像、病態増の把握が必要不可欠となります。たとえば肝腫瘤の勉強をするのに肝の解剖や肝血流、肝細胞癌の血流などが分からないと各論へ進めません。それは他分野でも同様です。まず学習をするのに前提となる知識があります。これに適するのがA・B型の教科書で勉強します。特にB型の教科書では私は多少わからなくても通読することをお勧めします。不器用な人だと、分かるまでしっかり読み1日10ページ読むのに数時間かかったという人も見かけるのですが、とにかく分からなくても読み切ると言うことがそれなりに大切かな?と思っています。というのも、1つの教科書だけで真に知識を把握するのは難しいからです。複数の教科書に書いてあることの最大公約数を統合すると、1つの教科書で分からなかったことが案外分かることがあります。また、全体像を把握することで見えてくることがあります。これは受験のときも同様だったのではないでしょうか?まずは理解は不十分でもよいのでA,B型の教科書の通読を目指しましょう。

Input学習
基礎となる土台の知識作りが完了したら次はInput学習です。学会での教育講演やC型の専門的な教科書で勉強しましょう。これらのものはある程度の知識を前提としていることが多いので、①の工程がある程度必要となります。

Output学習
知識の完全定着にはOutputの工程が欠かせません。恐らく、大半のお医者さんは日々忙しく、②で学習が中断していることが多いのではないでしょうか?週末全部教育講演聴いたはずなのに、月曜日にはほとんど覚えていない、ということはよく経験されないでしょうか?(私もです・・汗)Inputした知識を有機的にするにはOutputが必要不可欠です。それが実践できるのが、日常診療の読影や試験勉強ではないでしょうか?私が読影の上達にある程度の実践(読影)が必要といってるのは、このOutputが大切と考えているためです。ただ、日常診療で経験できる疾患には限りがあり、これを補えるのが「演習型」の教科書です。演習型の教科書の他に、北米放射線学会のDiagnosis pleaseや雑誌、画像診断(秀潤社)や学会のイメージインタープリテーションはなどもこの工程に入ります。

恐らく、①がある程度定着した先生は②→③→②・・・の工程を繰り返すのが最も効率的ではないでしょうか?


放射線科専門医・診断専門医試験を研究して出題傾向に沿って作ったゴロ集です。単純暗記の手助けになればと思います。昨年のものより、大幅に数が増えております!

それでは、私の画像診断の学習に対する考えと教科書のタイプ分類を提案した上で、各分野のA~D型にあたるおすすめの教科書を紹介していきます!ちょっと長くなってきたので、教科書については別記事をご覧ください!

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