滅多にないことが起きた

まだ薄暗くて寒い朝。
モコモコのパジャマと靴下で温もりを纏う。

今日は、久しぶりにスーツを着て、仕事に行く。
早起きして、お化粧して、鞄にPCを詰めこんだ。
時計を見ると、予定より少し早く準備が終わる。
マグカップのコーヒーを残りを飲み干した。

マグカップを洗って水切りに置く。
持って行くタンブラーに、熱いレモンティーを作った。

コートを着て、マフラーして、鏡でチェック。
OK。出る時間だ。
車のエンジンをかけて、音楽を選ぶ。
エアコンはまだ冷たい風。

さぁ、出発。安全運転で行こう。
冬の朝日は、眩しい。
道路はそんなに混んでいない。予定より早く着くかも。

エアコンから暖かい風が出てきた。
足元が暖かい。え?暖かい?

あ…

あ…

んといや、まさか…

やってしまった。
こんなこと、数年に1度のレベルだ。
そう言えば、着替える前に替えようと思ってたんだった。
あの瞬間何をしてたんだっけ?
考えれば考えるほど謎に包まれていく。

ズボンの裾にピンクのモコモコ靴下が見える。
どうりで暖かいわけだ。
もう目的地の半分まで来てしまったよ。
髪の毛もお化粧もスーツもコートもばっちりなのに
靴下だけなんでピンクのモコモコなのか。

あぁまずいまずい。
靴下を取りに帰る訳にはいかない距離だよ。
ここは田んぼの真ん中だよ。コンビニないよ。
あぁまずいまずい。

ちょっと遠回りすればコンビニがあるのを思い出す。
道が混んで無くて本当に良かった。
途中のコンビニに駆け込み、靴下を探す。あった。
それだけを買って車に戻る。

あったかいモコモコから薄い靴下へ履き替える。
それまでの温もりがすーっと消えた。
ほっとして、目的地に向かうことが出来た。
車を停めて、何事も無かったかのように歩く。

数年に1度レベルのハプニングでリラックスしたから
いつもより笑顔の「おはようございます」になった。
ちょっとだけ自分が好きになった。