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美しい日本の宝物。特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」 東京藝術大学大学美術館にて開催中

2022.08.07
こんにちは。
東京藝術大学大学美術館にて、2022年8月6日(土)から9月25日(日)まで開催される 特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」の報道内覧会に行って参りました。

皇室に代々受け継がれた美術品類を収蔵する宮内庁三の丸尚蔵館の優品に、東京藝術大学のコレクションを加えた82件の多種多様な作品が、東京藝術大学大学美術館に展示されます。
東京藝術大学は1890年、岡倉天心が東京美術学校(東京藝術大学の前身)で行った日本美術史の講義を初めて体系的に行った場所。

「日本美術史」講義ノート(講述)岡倉天心 / (筆記)原安民 明治24年(1891)東京藝術大学蔵 通期展示
友人が6年間通った藝大にはよく遊びに行ってました。ここへ来ると一気に学生時代に引き戻されます。

この両者共同の展示は、鑑賞者が最初に見る作品のかたちやモチーフに焦点を当て、日本美術を分かりやすく、そして楽しんでもらえるようなアプローチをとっています。
4つのテーマでひも解かれた本展。

1章 「文字からはじまる日本の美」

平安時代、日本人の感性によって生み出された優美な仮名は、物語や和歌を発展させ、さらにそれらによる様々なモチーフが豊かな美術意匠へと展開していく土壌を築きました。

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱
文字って興味深い。ひらがなとても神聖な文字だと感じる。

雲母や貝殻の粉末を用いた雲母摺(きらずり)と呼ばれる唐紙や、雲紙に切箔や野毛(細長く短冊状に切ったもの)を散らした装飾料紙の上に、華麗な字が美しかった《巻子本和漢朗詠集》。

《巻子本和漢朗詠集》 伝 藤原公任 平安時代(12世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示(上巻:前期展示②、下巻:後期展示②)

様々な書風、趣のある紙、そしてそれらの組み合わせ。なんて情緒豊かな世界なんでしょう!書いた人の心の動き、その時の季節、土地の気などが紙の上に表されている。

高貴な紫の料紙に、仏の教えの不滅を願って金字で書かれた《紫紙金字法華経》。

《紫紙金字法華経 巻第二》 奈良時代(8世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示(場面替えあり)

2章 「人と物語の共演」

人々の日常生活、信仰、回想や幻想などから創出された様々な物語は、折々の日本の四季の風景や人々の有り様を豊かに描き表わし、深遠な日本美の世界に我々を誘います。

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱

疾走感溢れる《賀茂競馬置物》。
鐙(あぶみ)は、馬上での姿勢が安定する舌長鐙かな。

《賀茂競馬置物》 山崎朝雲 大正13年(1924)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示

パリ万博で世界にお披露目された、当時の日本における彫金の最高傑作《太平楽置物》。

矢を納めるやなぐいには矢は逆さに入れられ、「戦う意志がない」と平和の舞(太平楽)を象徴しています。両肩には龍の魔除け。

ドレープが美しい。

《太平楽置物》 海野勝珉 明治32年(1899)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示

3章 「生き物わくわく」

人は様々な生き物と共存する中で、生き物への愛おしみや尊崇、感謝などの様々な想いを、美術造形に表現してきました。生命あるものへの多彩な眼差しによる表現のかたちを見つめます。

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱

愛らしい表情をした鼬(いたち)と目が合いました。赤の色味が特徴の「素銅(すあか)」が素材。

《鼬》 明治時代(19世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示

羽の表現が見事な《矮鶏置物》。

この作品は、最初から一対で仕上げたのではなく、雄が完成した後に、宮内省からの依頼で雌が追加制作されたという。
寂しくなくて良かったね。優しさが伝わってくる高村光雲の代表作。

《矮鶏置物》 高村光雲 明治22年(1899)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期展示①

会いたかったわー子犬!

根付彫刻の技術を生かし、象牙で愛くるしい子犬が表現されています。羽箒の紐をくわえて遊ぶ、手のひらに乗るほどの小さく愛らしい姿と表情。

《羽箒と子犬》 明治〜大正時代(20世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期展示①

顔は龍、牛の尾と馬の蹄をもち、体は鹿に似ている麒麟。肉食はおろか
草さえも踏みつけることなく殺生を嫌う優しい性格の持ち主。
猛々しい姿が美しい滑りある白磁で表現されています。

《白磁麒麟置物》 十二代酒井田柿右衛門 昭和3年(1928)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 通期展示

そして大迫力の国宝《唐獅子図屏風》。言わずと知れた、桃山芸術を代表する狩野永徳の大作。現在は屏風のかたちですが、元は殿様が座る背後を飾る床壁貼付だったと考えられているそうです。

国宝《唐獅子図屏風》(右隻)狩野永徳  桃山時代 (16世紀)/  (左隻)狩野常信 江戸時代(17世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期展示①

勇ましい右隻も格好良いのですが、私は左隻の水辺で楽しそうに跳ねる唐獅子が好き。

手前:国宝《唐獅子図屏風》 (左隻)狩野常信 江戸時代(17世紀)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期展示①

4章 「風景に心を寄せる」

豊かな自然は人々の心を動かし、古くから文学や絵画に表現されてきました。身近な風景や自然現象に対する素直な感動や畏怖の表現は、美の世界を広げ、さらなる感動をもたらします。

日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱

25羽の千鳥が穏やかに飛ぶ洲浜の情景。銀泥の細やかな波と金泥の霞、波間と砂浜のバランスが見事です。

手前 :《七宝四季花鳥図花瓶》 並河靖之 明治32年(1899)通期展示、後ろ:《浜松図屏風》 海北友松 桃山時代 慶長10年(1605)前期展示① いずれも宮内庁三の丸尚蔵館蔵

約380匹のホタルが飛び交う蒔絵の料紙箱と硯箱。

《宇治川蛍蒔絵料紙箱・硯箱》 初代飯塚桃葉 江戸時代 安永4年(1775)宮内庁三の丸尚蔵館蔵 前期展示①

美の密度にクラクラして展示会場から出てきたら、若冲の鸚鵡とゾウさんが。「一緒に帰ろー。これ下さい」。

あっ、冨貴寄(ふきよせ)。
本展出品の《七宝四季花鳥図花瓶》の絵柄の風呂敷に包まれています。

銀座菊廼舎の干菓子を寄せ集めた「冨貴寄」はお遣い物によく選びます。缶を開けた時の美しさを崩さないようそっと食べる楽しみ。

銀座菊廼舎には色々な種類の冨貴寄がありますが、好きなのはピンクの富士山がカワイイ「ことほぐ」。

浅草 常盤堂雷おこし本舗の「雷おこし」は唐獅子巾着入り。

オリジナルのガチャガチャもあるよ。

紙ひとつにも鉱物を散らし、字にも心の動きを現し、肉眼と心の眼とを合わせて描いた美しい世界。繊細でダイナミックな心意気。この国土に生まれて良かった!と思わせてくれた展示でした。

特別展「日本美術をひも解く─皇室、美の玉手箱」

会期:2022年8月6日(土)〜9月25日(日) ※会期中、一部作品の展示替え・巻替えあり

前期展示:① 8月6日(土)〜8月28日(日)/ ② 8月6日(土)~9月4日(日)
後期展示:① 8月30日(火)~9月25日(日)/ ② 9月6日(火)~9月25日(日)

会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8
開館時間:10:00〜17:00、9月の金・土曜日は19:30まで開館(入館は閉館の30分前まで)
*本展は日時指定予約の必要はありませんが、今後の状況により入場制限等を実施する可能性があります。
休館日:月曜日(9月19日(月・祝)は開館)
※詳細は展覧会公式HP


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