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Thank you, Jane Birkin

こんにちは。
ジェーン・バーキンさんが 7月16日(現地時間)に他界された、というニュースが飛び込んできました。76歳でした。

Getty Images

1946年生まれ。ロンドン出身の歌手そして俳優。囁やくような歌声と、自由で艶やかな魅力に世界が魅了されました。
"Je t'aime... moi non plus"が脳内をめぐります。

Photo: AFLO

才能豊かな3人の男性との間に3人の娘をもうけたジェーン。自分たちなりの独自の関係性を貫く様は見事。

21歳の時に出会ったセルジュ・ゲンズブールと。Photo: BOTTI/STILLS/Gamma/AFLO

2011年3月の東日本大震災発生後、4月という早い時期に来日し、復興支援としてのチャリティーコンサートを開催して下さいました。

1971年来日時の一枚。シャルロットがお腹に。

Photo: Bertrand LAFORET/Getty Images

ジェーン・バーキン、で思い浮かべるのがあのエピソード。
ロンドン行きのフライトで隣り合わせになったジャン=ルイ・デュマ(Jean-Louis Dumas:エルメス5代目)との会話。

ジェーンが機内でバッグから物をぶちまけてしまった時、「ポケット付きのバッグを持った方がいいね。」とデュマ。「あらっ、エルメスがポケット付きのバッグを作ってくれたらいただくわ。そうね、ケリーより大きくて、スーツケース(セルジュの)より小さいのがいいわ。」

Jane Birkin, front row at the fall 2012 Hermès show, with her Birkin bag.

この会話から生まれたのがバーキン。1984年のこと。
ジェーンが「機内オーダー」したバッグを受け取りに行った際、デュマはバッグを提供するかわりに、バーキンの名をこのバッグに付けることを提案します。(エルメスはジェーンにロイヤリティーを支払っていますが、それらは彼女が指定した慈善団体に寄付されています。)

Hermès Fall 2008

あーFall 2008のヒマラヤなキャンペーンは今でも一番好き!

Hermès Fall 2008 

ジェーンが放つ魅力のように、「バーキン」というバッグの磁力も強烈。
皆それぞれこのバッグに惹かれる理由があるでしょうが、私はやっぱり馬。どこまでいっても馬の要素に惹かれます。

Hermès Fall 2023

エルメスのバッグは、馬の鞍=サドル、の縫い方「サドルステッチ」で縫いあげられています。
2本の針と錐を持ち、穴を開けると同時に裏から針を通す。10年程前かなー挑戦させていただきましたが、これが結構難しい。

この後、指ぶっ刺しています。

馬の鞍を「縫う」とはこういうこと。

体のどこかに痛いところがあると馬は不安になり驚きやすくなります。馬が驚くと馬車がひっくり返り乗客が死んでしまうことすらある。良い馬具商人は見た目の美しさだけではなく頑丈さ安全にも気を配らなければならない。職人の縫い目のひとつ、釘の一本、糊のひと塗りにも人の命がかかっているのです。
バス・デュ・ランパール通り56番地に小さな馬具工房を開いたティエリ・エルメスは比類ないエレガンスと、仕事への情熱ですぐに評判になりました。

Hermès

リボンの白いステッチがそれです。

エルメスの栗色のリボンの両サイドは白いステッチが飾ります。これは「サドルステッチ」という職人技へのオマージュ。
縫い目などという普通は隠そうとするものをあえて見せるという発想は当時奇抜なものでした。自分たちの仕事のコツ、それを隠すような肝っ玉の小さい職人はいない、と。

Hermès

馬好きの私が乗馬雑誌で「馬具商エルメス」を知ったのは小学生の時。障害飛越という競技があることを知ったのもこの頃。
(記事「エルメス主催の馬術競技 Saut Hermès / ソー・エルメス 2018〜パリ旅行記⑴」)

1980年創刊の『乗馬ライフ』。2016年10号までこの誌名で発行されていました。

今でも私にとってエルメスは馬具商。ブレスレットの金具ひとつ締める時にも、サドルステッチで手縫いされたバッグを持つ時も、馬装しているような特別な感覚があるのです。

エールフランス パリ発ロンドン行きの機内の会話から生まれたバッグ、バーキン。
そこにはジェーンの自由で快活な魅力が映し出されているように感じます。底鋲が付いているこのバッグは、床に無造作に置ける、最高に優雅で最高にカジュアルなバッグなのです。

飛び切りチャーミングな生き方をありがとう。

photograph: Jacques Haillot / Sygma via Getty Images








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