あの世から母が来る話

母が高級車にのって、天国にいってからの話である。

孫を使って、いろいろ要求をしてくるようになった。

はじめはわからなかった。
だが、母がもらって、大事にしていた、日本人形を
妹の子供(女の子)が
可愛いと急にいいはじめた。
抱き抱えられるくらいの大きさで、黒髪、着物をきていた人形。

かわいくはないし、母が亡くなる前は一切触ったこともなかった。

それが、急に可愛いと、髪までとかしてあげている。

ストーリーがすごい。弟がいる、という・・・
そこで、はじめて、私たち姉妹、???とおもいはじめ、
どうやら、その弟は母の亡くなった(両方亡くなってるからややこしい)
弟のことらしい、と気づいたのである。

それからである。

孫とコンタクトできる事がわかってから、
孫、うちは建て替えしたので、孫は一切前の家をしらないのに、
ここは畳だった、とか、事細かく説明をするようになる。

見た事ないよね、生まれてなかったよね・・・と大人思う(笑)

ある日、妹からメールがはいる。
実家の風呂を掃除しました、との事。
きっかけは、
子供が風呂場で亡くなった母がどういう風に掃除していたのか、
事細かく説明した、という事。

母は風呂掃除をする際に、風呂場用の長靴をはいて掃除をしていた。
子供がそれを引っ張り出して、
バーバはこれを履いて、こうやって掃除してたんだよ、と
身振り手振りで説明してくれた、と。


いやいや、難病の母、あなたが生まれてからは
掃除なんてできてないし、まともに歩くのすら困難でしたから・・

妹いわく、あまりに細かい説明で、
ニコニコしながら、言われて、
あぁ、お母さんが、お父さんが一人で暮らすことになって、
掃除が行き届かず、特にお風呂は無法地帯だったので、
心配のあまり、「風呂を掃除しろ」って事なんだろうな、と思い、
掃除をしたんだよ、と。

亡くなった人は亡くなっても生前と同じで、
神になるわけでもない。

こんな事もあった。

妹の子供、母の日の前日に泣きわめく事件。

子供が急に「明日はじーじのお家にバーバがくるから、
会いに行く」と言う。

バーバはもう死んでいない、事を懇切丁寧に説明。
そして、実家にも来ない事も説明。
天国にいるから、戻ってこない、とも説明。
ところがである。普段は全くそんな子供ではないのに、
実家に行くことを要求。
最後に泣きわめき、手がつけられず、
結局翌日母の日に実家にいくことになった。
カーネーションを「ばーば」のために
うれしそうに選ぶ子供・・・・

ケーキまでみんなで食べて、母の日終了。

よっぽど、母の日、祝ってほしかったんだろう、と思う。
ケーキも食べたかった、かな(笑)

妹の子供が空に帰ってしまったときも、
教えてくれたのは、母だった。

子供が7ヶ月過ぎの妹の大きなお腹を
急に指さして
「胎動がとまっているよ」と繰り返し言い。

はじめ、「タイドウガトマッテイルヨ」の
「タイドウ」がわからなかった、と言っていた。
子供、小学1年である。
それが、繰り返し言われ、お腹を指さされ、
やっと「胎動」であることに気づき、
お腹をさわってみると、お腹の子供が全く動かない事に気づき。

結局、即入院で死産だったけど、
生まれた日は母の命日で。
妹いわく、毎日子育て大変だから、
私が預かるわ、と言われた気がする、と。

だから、「死んでしまった」とか「生まれなかった」という
認識より、「お母さんが預かって、育ててくれている」という
意識の方が、私たちも強くって。

悲しいけど、悲しくない、みたいな、不思議な気持ちである。

だって、お母さんがちゃんと見て、預かってくれてるんだもん。
こんなに心強い事はない。

残念な事に、子供が大きくなるにつれて、
直接的なお母さんの言葉は聞けなくなってしまった。

でも、お盆の時にはキチンと帰ってきて、
私にアップルパイを要求する、可愛い母である。


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