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ドラマ「#チェリまほ」の藤崎さんの事情

全世界を巻き込んで感動が渦巻いた奇跡の今期深夜ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いにになれるらしい」略して「チェリまほ」。
最終回手前の回では、黒沢の悲痛な決意にむせび泣くファン続出だったものの、期待を裏切ることなくラストは主役2人のエレベーターキス(手前?)、国宝級の顎ラインに悶絶瀕死の叫びがSNSを埋め尽くした伝説ドラマとなった。
最終回前に主役の1人である町田啓太さんがインスタライブをすれば様々な言語がコメント欄に飛び交うほどに世界のオタクも巻き込んだ今作。こういう純粋な恋愛ドラマが日本だけにとどまらないのは本当に嬉しい。

さて。主役2人の素晴らしさはもちろん、このドラマは脇を固める人たちのキャラクターもそれぞれに優しくて素敵でそういう意味でもほっこりするポイントがたくさんあった。

そのうち、主要メンバーの中では少し事情が異質な「藤崎さん」について今回語ろうと思う。

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ドラマの主役である安達(赤楚衛二)と黒沢(町田啓太)が務めている文具会社豊川の同僚として登場する藤崎さん。ドラマ版は少しキャラクターを変えているとのことで、原作とはやや解釈が異なる人物になると思うが、ここではドラマ版藤崎さんについて語る。

ドラマ冒頭、30歳の誕生日直前にこれまで一度も彼女ができたことがない、という事実を先輩社員にからかわれた安達。その際に、先輩社員が仲を取り持とうかと提案したのが同僚の藤崎さん。先輩調べでは現在彼氏がいないという。

後に7年片思いをしてきた黒沢が語るように、藤崎さんは安達の好みのタイプである。清楚で愛想が良くて、手作り弁当を持参する姿は家庭的に映る。

ただし。
ドラマ中盤で判明するように、藤崎さん自身は恋愛に興味がない「アセクシャル」だ。他者に対して恋愛感情がわかない(その先の欲求もない)人のことをそう言うそうだけれど、年頃の男女の話題の大半を占めるだろう「恋愛」に興味がない人物なのだ。
彼女自身年頃であるために、これまで何度となくそのことで居づらい空気になったり、無理に合わせて振る舞ってきたこともあるだろう。おそらく、彼女の両親も彼女のそういう個性について、理解していないのではないのか。

彼女自身はそういった様々な事情を乗り越えていて、社会人となった今は他人に合わせることも学んだし、適当に流すことも覚えている。その清潔感ある外見の意味が、瞬間ガラリと変わるエピソードだ。

人に触れることでその人の心の声が読める魔法が使えるようになった安達は、偶然にも彼女の心の声からそのことを知る。安達はいつも笑顔で接してくれる彼女を、可愛らしい人、くらいにしか認識していなかったところから一歩近づいて彼女の苦悩に触れ、自身のスタンスについても改めて気づかされるというシーンだ。

藤崎さんは見た目が可愛らしく気遣いのある女性社員という印象で存在しているのだけれど、最初からつい目がいってしまう彼女のパーツがあった。

それがネイルだ。

もしかして微妙な色の違いはあったかもしれないけれど、彼女の爪はいつもキレイに整えられていて、そこには色がついている。

そこにはいつもグレーがかった色があった。私はとても好きだけれど、どちらかと言えばやや個性的な部類に入る色味のような気がする。

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私の印象では当初から彼女は好んでこういった色をつけていた。まとめられた髪、優しい色合いの洋服、それにこの指先。

隙を感じさせない主張がこの小さな爪に一つ一つ丁寧に乗せられている気がする。

アップになると指先まで気を抜かない美意識のようなものを感じるけれど、決してそれは他人(特に異性)には向けられていない。

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アイドルが握手会にはつけてこないような色、お客さんから初デートなんですとオーダーされたネイリストが選ばなそうな色、モテファッションコーデには登場しない指先の色、美しさや美への努力が決して恋愛に直結していないことを感じさせる。

黒沢が個人的に好きなのでこのショットを載せてしまったけど、黒沢も安達も藤崎さんに相談事をしているし、藤崎さんの言葉は心に響く。恋愛真っ最中の彼らのことを社内でいち早く気付くのが藤崎さん。黒沢の片思いも以前から知っていたのではないか。

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恋愛に嫌悪感を抱いているわけではない、人が人として幸せになる方法はそれだけではないし、自分がたまたまそうではないというだけのこと。
藤崎さんの言葉や生き方に救われた人もいたのではないのかと思う。

最終回、安達と黒沢を尊敬する先輩として慕っている後輩六角(草川拓弥)がクリスマスイブの友達との予定が流れてしまったと嘆くシーン。泣きついた彼女に「藤崎さんは何してるんですか?」と問うたところで何事もないようにさらっと「1人でケーキ食べて映画でも見るかな」と答える彼女。

もし恋人がいない、恋愛をしていない自分が恥ずかしい、いないとダメなのかななどと一ミリほどでも感じていたら出ないような、フラットでナチュラルな返答だ。

そんな藤崎さんを演じているのは佐藤玲さん。

愛らしい声も特徴的なキュートな魅力満載のお方である。

私が彼女をよく知ることになったのは「架空OL日記」で空気の読めない若手社員のさえちゃんからだったので、その印象が強いのだけれどドラマや映画など数多くの作品に出ていて活動歴は8年。見ていたドラマにもレギュラー出演されているなど幅広い演技力が期待できる方なのだと思う。

彼女の今後にも期待が持てるし、今回の藤崎さんという役柄でさらに幅広いファンを獲得したように思う。

とにもかくにも、今年はドラマの撮影がこの騒動の影響で延期になったり中止になったり、作る方達も苦労されたことが多かったように思う。それゆえに余計、ドラマの評価が日本を超えて広がっていく様子は見ていて気持ちが良かった。

できれば続編を期待したいけれど・・・どうなのかな。


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