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散歩の記録

亀城公園近くで用事があり、用事の前に土浦の町を歩いてみようと思い、二時間ばかり早く土浦駅に来た。 12月になったばかりの土浦はウィンドブレーカーだけでは少し寒かった。 どうしても耐えられなければ、近くに地方都市特有の巨大なイオンモールがあるようなので、そこで何か暖のとれるものを手に入れるのもよい。 とにかく霞ヶ浦とは反対側、西口のほうへ歩き始めた。 電車の中から見えた桜川を渡ってみたかった。 ペデストリアンデッキというのか、立体的な駅前の歩道は、県庁所在地かと思うくらい広く

    • 縄跳びするウミネコ 銀塩写真

      ふくらんだ水色のはばたき 沖の閃光 無数の呼気が点在する 鳥をのせたアンテナ 苺をまきちらしたの 顔が火のようだった 熱帯を祓いたがる母性愛のせい 粉末と粒子 不凍液を放たれた雛たちが 午前二時の光の中を コップに吹きだまる 鹽水のカリエス 水族館 鳥たちはいうことをきき チェック模様の化繊 その図像学 頭骨に涙の痕跡がある 歯を磨こう よく眠らされてしまう こまった人たちだ コバルトか 退屈 ほてった声 汽水域 耳鳴りは忘れさせる 寧波からのお手紙 ドアは開けっぱなしで 綿

      • コルネリア印象

        床にモノが散らばっている。 マッチ箱。おもちゃのアコーディオン、またはふいごのようなもの。魚たち。花(しおれかけている)。ガラスのコップと水。幽霊。 十秒の呼吸。それから沈黙も十秒。 最初の言葉。 「『夜の来訪者』という本があります。フランスかドイツあたりで、戦前に書かれた本だと思います。青い駅前のような場所に、服を着た女や裸の女がたくさん立っていて、その間を火を持った女の子が歩いてきます。海の匂いがします。夜に人が来るって、たいてい犯罪者か夢かどっちかだと思うのですが

        • 蜂ねずみたち

           蜂ねずみたちの巣穴は、昼間は西瓜色のカーテンを通して窓が透きとおった光を放ち、それだけで文字が読めるくらいである。巣穴の中に三~数十匹で群生する蜂ねずみたちは、人語を解さない種類の硬骨魚に近い形態で眠り、ときおり数年前のカゲロウが入りこんできて尾骶骨の痙攣を起こすこともある。体内に音楽がないため、八月終わりごろになると水晶体とバルトリン腺を占拠している一種の寄生虫(それは金色の花火か、モールのような鬣を持つライオンの姿をしている)の脈拍にテンポ感が揃ってしまったまま、時間の

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