縄跳びするウミネコ 銀塩写真

ふくらんだ水色のはばたき 沖の閃光
無数の呼気が点在する 鳥をのせたアンテナ
苺をまきちらしたの 顔が火のようだった
熱帯を祓いたがる母性愛のせい 粉末と粒子
不凍液を放たれた雛たちが 午前二時の光の中を
コップに吹きだまる 鹽水のカリエス
水族館 鳥たちはいうことをきき
チェック模様の化繊 その図像学
頭骨に涙の痕跡がある 歯を磨こう
よく眠らされてしまう こまった人たちだ
コバルトか 退屈 ほてった声 汽水域
耳鳴りは忘れさせる 寧波からのお手紙
ドアは開けっぱなしで 綿毛にあいさつする
春が重い 大嫌いなトレーナーを着て
明け方のネコ科 夜のサリン
コルトレーンのラジオ およびもつかぬ道徳
黄金の椰子の下で目覚める 天使が泣く
拾われて 裸形は死なない
海峡 輪くぐりの行列に風がふく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?