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【ぼくの思い出#01】ぼくとベトナム、日本とバオ君

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ぼくが高校2年生のとき、クラスにベトナムからの留学生が来た。

名をバオ君という。

バオ君がぼくのクラスにいたのはたった1年だったけれど、彼とは色んな話をして色んな影響を受けた。これはそんな彼とぼくとの思い出の話。


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バオ君は日本に来た時点でけっこう日本語が話せた。日常会話くらいならぼんやりとコミュニケーションが取れる程度には。
今思えば、バオ君は頭がキレたし、真面目で努力家でもあったと思う。ベトナムの何らかのプロジェクトの一環として派遣されてきた高校生なのだからそりゃそうなのだろうが、当時のアホなぼくにはそんな彼のスゴさにまったく気付けなかった。
彼はあっという間にクラスに溶け込んで、ぼくもバオ君とすぐに友達になった。

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バオ君は、日本語についてぼくによく質問をした。
たとえば、こんな感じ。

「なぁ、ぢぇぃ。「カ」と「力」なにが違う?」

お分かりだろうか。
バオ君はカタカナの「カ」と漢字の「力」の字の違いを聞いているのだ。バオ君曰く「引力」とかなら「力」が漢字だと分かるが、「ニュートン力学」みたいな文字列になるとどこまでがカタカナか分からなくなるらしい。

うん。そんなこと考えもしなかったけれどおっしゃる通りな気がする。

さらに、日本語にはもっと似ているものもあるらしい。

「なぁ、ぢぇぃ。「ヘ」と「へ」なにが違う?」

あぁ……ひらがなとカタカナの「ヘ」ね。そうだねぇ…うん…まぁ…そのぉ……なんつーか………全っっ然わからねぇ!というか、今まで生きてきて意識的に書き分けてきた認識が一度もない!むしろ同じでいいんじゃなかろうか!ぶっちゃけ上の「ヘ」の字もどっちがひらがなでどっちがカタカナかなんて分かる気がしない!どーだまいったか!

そう言ってやりたくなったが、言えるはずもなくてぼくは困り果てた。

「カ」と「力」は形は似ているけど、読み方は違う。「ヘ」と「へ」はもっと厄介で、これは形と読みが一緒の上にひらがなの方は場合によっては「え」と読むから、難易度が高い気がする。

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日本語って知っているつもりだったけど、実は全然知らないのかもしれない。そう思うきっかけをくれたのがバオ君だった。
よくよく考えてみるとカタカナの「ニ」と漢字の「二」もどう書き分けているのかよーわからん。

授業で「二クロム酸ナントカ」とか「ニクロム線」という言葉が出てきた時に、この頭の二の字はどっちの二なんだろうか。そんなことを感じた。


【ぼくの思い出#02】へ続く。


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100円→今日のコーヒーを買う。 500円→1時間仕事を休んで何か書く。 1,000円→もの書きへの転職をマジで考える。