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【宇宙のはじまり】感想文:身近な宇宙論

ある日会社に行くと、机の上にこの本が載っていた。

『宇宙のはじまり』多田将のすごい授業

社長氏は時々、おすすめの本を私の机に黙って置く。
たまに私も、やり返すことがある。
宇宙論や量子物理学の本も、そこそこ読んでいるのはお互いに知っている。

だから、今更宇宙論の基礎的な本が置いてあるのは意外だった。

どうせビッグバンの話でしょ
知ってるよ

と慢心していた私はそのまま放置する。

でもせっかくなので、ある日片手間に読み始めたのだった。

そこでわかったのは、この本は身近な物理的現象を引き合いに出して、これまでとは別の視点で、宇宙論を説いている、ということだ。

寒い冬に手を温める時、息をハァと出す。
これは、体温そのままに息を吐くので、手が温まる。

熱い食べ物を冷ます時、息をフゥと出す。
口の中で空気を圧縮して出すので、体外で急に体積が増えた息は、冷たくなる。

この原理を利用して、エアコンは室内の温度を上げたり下げたりする。
温度は、エネルギーの密度と関係があるのだ。
エネルギーを持つ物が圧縮されれば熱くなり、膨張すれば冷たくなる。
思わず何度も、ハァ、とか、フゥとか、息を手に吹きかけて、確かめた。
(これほど簡単な実証実験があるだろうか?)

物理的現象というよりは、食事をする時に、自然と身に付いた知恵から、その先へ思考を広げていくと、
『赤方偏移が示す通り、宇宙が膨張していっているのなら、過去にさかのぼった時、とても小さかった宇宙は、エネルギーの密度がとても高くて、とても熱かった』
ということがわかる。

この説が提唱された時、宇宙に変化して欲しくない一部の学者達は、ビッグバンというあだ名を付けて蔑んだというけれど、難しい議論を戦わせなくても、宇宙マイクロ波背景放射が発見されてもされなくても、こんなに簡単に、わかる人にはわかっていたんだな、と思った。

他にも、クォークやヒッグス粒子の説明も、とてもわかりやすい比喩で書かれている。
量子物理学は難解で、とりあえず「そういうものかな?」とあまり考えずに受け入れているだけの私には、一読の価値ありな本だった。



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