完成した事実婚の書類、気をつけた点をまとめてみた
前回の記事から時間が空きましたが、無事事実婚の書類が完成しました!書類はもともとできていたのですが、出すタイミングを検討していたため弁護士の方に最終版をもらわずにいたのです…
前回の話はこちら↓
難しいことを考えずに事実婚したい人は、書類なんか作らなくて良い方法がこちらにあります↓
書類を作る中でわかりづらい点がいくつも出てきました。今回は、弁護士の方に質問してわかったことについてまとめていきます。ちょっとマニアックな生活の話になるので、ちゃんと考えたい人が読むと面白いかと思います。
出来上がった書類の全文
まずは、完成した書類の全文を掲載することにします。(長いので見なくてもok)
xxxxxx(以下「甲」という)及びyyyyyy(以下「乙」という)は,双方の自由な意思決定に基づき,社会観念上の婚姻に相当する関係を築くことを目的として,本日,以下のとおり合意した。
第1条(相互の関係の確認及び誓約)
1 甲及び乙は,二人が愛情と信頼に基づく真摯な関係にあることを,相互に確認する。
2 甲及び乙は,互いに人生のパートナーとして,生涯にわたって助け合い,支えあって生きていくことを相互に誓約する。
第2条(婚姻等の禁止)
甲及び乙は,本契約の効力が存続する間は,他の者と婚姻し,又は本契約と同等若しくは類似の契約を締結しないことを誓約する。
第3条(同居,協力及び扶助の義務)
1 甲及び乙は,正当な理由がない限り, 互いに協力し扶助することを約する。
2 甲又は乙の一方が居住用不動産について所有権,賃借権その他の使用権限を有するときは,当該一方は,他方(以下「相手方」ともいう)に対し,当該居住用不動産に居住する権限を与える。
3 甲及び乙は,第1項の扶助にあたっては,相互に相手方の生活を自己の生活と同一水準で維持するものとする。
4 甲及び乙は,互いに相手方以外の第三者と性的関係を持たないことを約する。ただし,甲及び乙との間の信頼関係及び実質的共同生活関係が既に破綻している場合はこの限りでない。
第4条(婚姻費用の分担)
1 甲及び乙は,その資産,収入その他一切の事情を考慮して,両者の共同生活から生ずる費用(居住費,食費,水道光熱費,医療費,教育費,保険料その他の生活上の費用をいい,以下「婚姻費用」という)を分担することを約する。
2 前項の婚姻費用の分担は,本契約が解消されるまでの間とし,家庭裁判所の公表する養育費・婚姻費用算定表の額を基準として協議の上で定めるものとする。
3 前項の規定にかかわらず,本契約に違反し,かつ,甲及び乙の信頼関係及び実質的共同生活関係の破綻につき帰責性のある者は,相手方に対し,婚姻費用の分担金を請求することができない。
第5条(日常家事代理権の授与)
1 甲又は乙の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは,他方は,これによって生じた債務について,連帯してその責任を負う。ただし,第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は,この限りでない。
2 甲及び乙は,相互に,相手方に対し,日常の家事に関する法律行為にかかる代理権を授与する。
第6条(療養看護に関する委任等)
1 甲又は乙の一方が罹患し,医療機関において治療,療養,延命又は手術(以下「治療等」という)を受ける場合に備え,甲及び乙は,相互に,相手方に対し,治療等の場面に立ち会い,本人と共に,又は本人に代わって,医師その他の医療関係者から,症状や治療等の方針・見通し等に関する説明(カルテの開示を含む)を受けることを委任する。
2 前項の場合に加え,罹患した甲又は乙の一方は,その通院・入院・手術時並びに意識不明時及び危篤時において,相手方に対し,入院時の付き添い,面会謝絶時の面会,治療方針(延命の是非の判断を含む)の決定及び手術に同意することを委任する。この場合,相手方の決定は,本人の最近親の親族(子・父母・兄弟姉妹その他本人の当該時点における最も近い親等の親族を指す)に優先するものであることを相互に確認する。
3 甲及び乙は,前二項の受任事務を全うするため,平常時において,自己の治療等に関する希望,意向その他の意思を,あらかじめ相手方に説明するとともに,治療等に関する相手方の意思を常に確認し,理解するよう努める。
第7条(当事者間における財産の帰属)
1 甲又は乙の一方が本契約締結前から有する財産及び本契約の効力が存続する間に自己の名で得た財産は,その特有財産(本契約当事者の一方が単独で有する財産をいう。以下同じ)とする。
2 甲又は乙のいずれに属するか明らかでない財産は,その共有に属するものと推定する。
第8条(判断能力低下時の療養看護)
甲及び乙は,生活又は財産の形成過程にあり,任意後見受任者に委託する事務の代理権の範囲を特定することが困難である事由があるところ,甲又は乙の一方の身体能力又は判断能力が低下したときは,相手方は,身体能力又は判断能力が低下した者の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を可能な限り援助し,一方の意思を尊重し,かつ,その心身の状態及び生活の状況を配慮すること及び甲乙で必要が生じたときは速やかに,任意後見契約に係る公正証書を作成することに合意する。
第9条(子の認知)
甲が乙の子を出産した場合,乙は子の認知手続きを行うものとする。
第10条(子の教育監護)
1 甲が乙の子を出産して未成年者の親権者となったときは,甲は,乙に対し,当該未成年者の教育監護を委託するものとする。この場合,甲及び乙は,当該未成年者の福祉を第一に考えて,子の教育監護につき相互に協力することを約する。
2 甲及び乙は,前項の権限には,当該未成年者に医療行為が必要であると医師が認めるとき,その医療行為について医師から説明(カルテの開示を含む)を受け,手術その他の医療侵襲の同意をし,又は治療方針の決定に同意することを含むことを確認する。
第11条(死後事務の委任等)
1 甲又は乙の一方の死亡を停止条件として,本契約当事者は,相互に,死亡した一方(以下「死亡当事者」という)の死亡後における次の事務(以下「本件死後事務」という)を,他方当事者(以下「生存当事者」という)に委任する。
① 親族等の関係者への連絡
② 葬儀,納骨,埋葬
③ 未払の租税公課,医療費,入院費用,福祉施設利用料その他一切の債務の弁済
④ 家財道具,生活用品の処分
⑤ 行政官庁等への諸届出
⑥ 死亡当事者が当事者となっている契約の全部又は一部の解約及び清算
⑦ 以上の各事務に関する費用の支払
2 甲及び乙は,本件死後事務を処理するに当たり,生存当事者が復代理人を選任することを相互に承諾する。
3 死亡当事者の葬儀,納骨及び埋葬は,死亡当事者の生前の希望や資力等を考慮して,生存当事者が決定するものとする。
4 葬儀,納骨,埋葬その他本件死後事務を遂行するために必要な費用は,すべて死亡当事者の負担とし,生存当事者は,その管理する死亡当事者の財産の中から支出する。
5 死亡当事者の法定相続人その他の死亡当事者の地位の承継者は,生存当事者の承諾がない限り,本件死後事務の委任を解除することができない。
第12条(死亡による契約の終了)
1 甲又は乙の一方が死亡したときは,本契約は当然に終了する。
2 前項の規定にかかわらず,第11条(死後事務の委任等)の規定は,前項による本契約終了後においても有効に存続する。
第13条(合意による契約解除)
1 甲及び乙は,当事者双方の合意により,本契約を解除することができる。
2 前項の解除は,当事者双方が署名した書面でしなければならない。
第14条(合意によらない契約解除)
1 甲又は乙の一方は,次に掲げる場合に限り,書面による一方的な意思表示により本契約を解除することができる。
① 相手方に不貞な行為(自由な意思に基づいて本契約当事者以外の者と性的関係を持つことをいう)があったとき。
② 相手方から悪意で遺棄(第3条第1項に違反し,かつ,その違反の程度が甚だしいことをいう)されたとき。
③ 双方の合意によらずに相手方が別居し,その期間が1年を経過したとき。
④ その他本契約を継続し難い重大な事由があるとき。
2 甲又は乙の一方の生死が1年以上明らかでないときは,本契約は当然に終了する。
第15条(解除の効力)
1 本契約の解除をした場合には,その解除は,将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合において,当事者の一方に帰責性があったときは,その者に対する慰謝料その他の損害賠償の請求を妨げない。
2 前項の規定にかかわらず,第16条(未成年の子がいる場合の監護に関する事項の定め等)及び第17条(財産分与)の規定は,本契約終了後においても有効に存続する。
第16条(未成年の子がいる場合の監護に関する事項の定め等)
第13条又は第14条により本契約を解除する場合において,本契約当事者が未成年者を養育しているときは,甲及び乙は,当該未成年者との面会及びその他の交流,当該未成年者の監護に要する費用の分担その他の監護について必要な事項を,その協議で定める。この場合においては,当該未成年者の利益を最も優先して考慮しなければならない。
第17条(契約解消時の財産分与)
1 第13条又は第14条により本契約を解除する場合,甲又は乙の一方は,相手方に対して財産の分与を請求することができる。ただし,本契約の解除のときから2年を経過したときは,この限りでない。
2 前項の規定による財産の分与について,当事者間に協議が調わないとき,又は協議をすることができないときは,本項第1号に掲げる財産の総額から,第2号及び第3号に掲げる財産並びに第4号に掲げる債務の額の合計額を減じて得た額を,双方に等分に分与する。
①本契約解除時において甲及び乙が有する動産,不動産,預貯金その他一切の財産(取得又は稼得した際の名義,資金拠出者及び現在の名義の如何を問わず,本契約当事者の一方の特有財産も含む。)
② 甲及び乙が本契約締結時において有していた財産,及び本契約の効力存続中に相続その他の事由により自己の名義で無償取得した財産
③ 甲及び乙との間の信頼関係及び実質的共同生活関係が破綻した後に,甲又は乙の一方が自己の名義で取得した財産
④ 甲及び乙の一方又は双方が,本契約の効力存続中に,婚姻費用に充当するために負担した債務(住宅ローンを含む)
3 前項に規定する財産分与の請求は,自己名義の財産が前項の計算により算出された分与額よりも少ない当事者から,他方当事者に対して,当該差額分の支払いを請求する方法により行う。この場合,甲及び乙は,互いに相手方に対して,その有する財産の情報を開示するよう請求することができる。
第18条(解釈の指針及び協議事項)
本契約に定めのない事項又は疑義が生じた事項については,婚姻に関する民法その他の日本法(ただし,民法754条を除く)及び当該法令に係る過去の裁判例の判断に準拠して解釈するものとし,当事者双方が誠実に協議してこれを解決する。
以上
まあ、読むのが大変な文章ですね… フリーランスになって、契約書を読むのに慣れていてよかったです。とはいってもやはり、文章として難しく意味が理解し難いところもあったため、それについては弁護士の方に詳しく聞きました。
同居・別居の定義ってなに?
第3条1の項目、最初の段階ではこう書いてありました。
第3条(同居,協力及び扶助の義務)
1 甲及び乙は,正当な理由がない限り, 同居し、互いに協力し扶助することを約する。
※ 弁護士のコメント:別居婚がベースになる予定でしたら、「同居し」の部分は削除できます
そもそも同居・別居ってどういう状態のことを指すのでしょう…わからないので聞いてみました。
別居と同居の定義は、生活の本拠地(多くいる場所)が一緒かどうかになります。住民票や借りている家がそれぞれ別のものだと、同居しているかどうかは曖昧な状態になります。また、子供の学校をどこに通わせているかなども判断の基準になります。
とのことでした。もともと、夫婦の基本的な義務として法律により同居・扶助義務が定められており、一緒に住まないこと自体が離婚が可能となる理由になるため、今回の草稿にも入っていたようです。今回は不要そうだったので削除しました。
日常家事代理権の授与???
第5条(日常家事代理権の授与)
1 甲又は乙の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは,
他方は,これによって生じた債務について,連帯してその責任を負う。
ただし,第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は,この限りでない。
2 甲及び乙は,相互に,相手方に対し,日常の家事に関する法律行為にかかる代理権を授与する。
第5条にこんなテキストがあります。日常の家事、第三者と法律行為ってなに・・・と思ったけど、以下のようなことなのだそうです。
「日常の家事に関する法律行為」とは、例えば、クリーニング屋に二人の衣料を持っていき、クリーニングの依頼をするようなことです。この項目により、自分の日常の家事を代理で行う権利を与えることになります。そのためクリーニングについて「夫がやったことだから支払わない」とは言えないような状態になります。
相手が勝手に高額商品を契約する場合などが気になりますが、日常の範囲を超えた非日常・特例的な買い物(例えば、一般家庭での50万円の高級時計の購入)はこれに当てはまらないそうです。ただ、お金持ちで日常的に高級時計を買っている場合は、当てはまることもあるようです。
判断能力が低下したらどうすればいい
第8条(判断能力低下時の療養看護)
甲及び乙は,生活又は財産の形成過程にあり,
任意後見受任者に委託する事務の代理権の範囲を特定することが困難である事由があるところ,
甲又は乙の一方の身体能力又は判断能力が低下したときは,相手方は,身体能力又は判断能力が
低下した者の生活,療養看護及び財産の管理に関する事務を可能な限り援助し,一方の意思を尊重し,
かつ,その心身の状態及び生活の状況を配慮すること及び甲乙で必要が生じたときは速やかに,
任意後見契約に係る公正証書を作成することに合意する。
どういうことなんや… 何を言っているんや… でも、弁護士の方がついているから安心です。
任意後見とは
自分が認知症などで判断能力を失う時、誰に任せるか決めておくことです。普通は後見人を決めなければならない状況になった時に裁判所が決めますが、任意後見人を定めておくことで自分で後見人を選ぶことができます。
現状では、後見人を選ばなければいけない状況が来るタイミングがだいぶ先であるため、事務の代理権の範囲(誰が後見人となって事務作業を代行しなければならないか)を特定できません。そのため、後見人を選ぶことを先送りするということが、テキストには書いてあるようです。
実際には、任意後見を行うために別の公正証書を作る必要があるため面倒なのと、社会保障の関係もあるため、万が一の際には入籍してしまった方が早いとのことでした。
事実婚の子育てはどうなるの?
第9条(子の認知)
甲が乙の子を出産した場合,乙は子の認知手続きを行うものとする。
子育てについては興味があったので、事実婚のままで出産するとどうなるか聞いてみました。
項目にある通り、認知して届出ができます。ただ、通常は親権者は母親となり、両者が合意すれば父親を親権者とすることもできますが、共同親権とすることはできません。親権者になれない場合も、委託として育てる義務を渡すことが可能です。
共同親権がない場合に起こる問題としては、例えば教育方針で意見が食い違った時、親権者の意見が通ることなどがあります。
具体的に、出産する場合に書類や籍をどうするかについては、再度弁護士に相談するのが良いとのことです。
どちらかが亡くなった後の処理について
第11条(死後事務の委任等)
1 甲又は乙の一方の死亡を停止条件として,本契約当事者は,相互に,
死亡した一方(以下「死亡当事者」という)の死亡後における次の事務(以下「本件死後事務」という)を,
他方当事者(以下「生存当事者」という)に委任する。
① 親族等の関係者への連絡
② 葬儀,納骨,埋葬,永代供養
③ 未払の租税公課,医療費,入院費用,福祉施設利用料その他一切の債務の弁済
④ 家財道具,生活用品の処分
⑤ 行政官庁等への諸届出
⑥ 死亡当事者が当事者となっている契約の全部又は一部の解約及び清算
相続関連については、事実婚の場合は基本的に相続人になれません。それなりの資産や家ができた際に、不動産などの面倒な遺産がない場合は遺言を用意するのがおすすめです。面倒な遺産をお持ちの際は公正証書を作るのがよいでしょう。
最近では遺書を自筆で書いて法務局に預けるサービスがあるそうです。便利ですね。
また、パートナーが亡くなった際の契約の解約については、携帯電話、電気、インターネット、クレジットカードの引きおとし等が該当します。今だと、クレジットカードを止めると、大体のものが止まりますね。投資信託などは資産に該当するため、配偶者ではなく相続する方の範囲になります。
基本的には、全ての契約ごとは相続か解約かに分かれます。第11条1 ①に「一部」とあるのは「引き継ぐことで利益が発生するため解約しない相続分を除く」という意味だそうです。
こういった契約ごとや終末期医療関連の情報をまとめるために、エンディングノートなるものをつけるとよいそうです。調べてみると自分史をつけるようなものもありましたが、ちゃんと実用メインなものもありました。この辺りのものが使いやすそうな気がします。
そういえば、前回の記事でも悩んでいた「永代供養」の有無については、なくても問題ないとのことだったので削除しました。
相手がいなくなってしまったとき
第14条(合意によらない契約解除)
1 甲又は乙の一方は,次に掲げる場合に限り,
書面による一方的な意思表示により本契約を解除することができる。
① 相手方に不貞な行為(自由な意思に基づいて本契約当事者以外の者と性的関係を持つことをいう)があったとき。
② 相手方から悪意で遺棄(第3条第1項に違反し,かつ,その違反の程度が甚だしいことをいう)されたとき。
③ 双方の合意によらずに相手方が別居し,その期間が1年を経過したとき。(別居婚の場合には、除いてもよい)
④ その他本契約を継続し難い重大な事由があるとき。
2 甲又は乙の一方の生死が1年以上明らかでないときは,本契約は当然に終了する。
不倫や遺棄はアウトなので置いておき、合意のない別居と生死不明の状態についてです。原文では、合意のない別居については5年、生死不明の場合は3年で婚姻関係が解除できるとされていました。
この数字を変更しても良いか聞いたところ問題なかったため、私たちは合意のない別居「5年→1年」、生死不明の場合「3年→1年」としました。この項目は期限を過ぎた場合も解除必須ではないため、1年過ぎても解除しないことが可能です。
まとめ
こんな感じでした!なかなか難しいかつ、細かい内容でしたね… 事実婚は、ここまでちゃんと考えてもいいし、考えなくても一応成立するゆるさが魅力かなとも思いました。状況によって一番お得なやり方を考えて選びたい人には、結構良いかもしれません。
私もこれによって、結婚でできることについて、普通に籍を入れる場合よりもちゃんと理解することができたと思っています・・
また、書類を提出したときに面白かったら、続きを書くかもしれません!