#152 利益相反取引-⑨

さて,昨晩は寝付きが悪かったのに,結局ぐっすり眠ることができた古田です(寝付きが悪いときに大事なのは諦めることです。僕も,何度も何度も,「なんで?今日何か特別なことがあったわけじゃないのに,どうして眠れないの?」「眠れない理由がわからないよ」とベッドの上でぐるぐると考え込む日がありました。しかし,もうね,「理由もわからず寝付けない日」はあるんです,本当に。だから,前触れ無く「寝付けない日」が訪れるのは当たり前なんです。不可抗力なんです。「何の前触れもなく寝付けない日がくる」ことが当たり前なので,「どうして今日は眠れないの?」と考えることは全く無意味です。だって,眠れない理由なんてないのだから。そんな日は,諦めるしかないのです。眠ることを諦めてベッドにいるしかない。スマホを開けば,眠るための方法がいろいろと書いてあります。しかし,その方法が奏功するかどうかなんてわからない。だって,眠れない理由がわからないのだから。もう,全てを諦めてベッドにいましょう。そして,何か考えましょう。方法はそれしかありません。そうしたら,昨晩の僕は,寝付きが悪かったにもかかわらず,最終的にぐっすり眠れました。#完全に精神面での成長が見受けられる#悟りの境地)

さて,こんな話から始めてしまいましたが,利益相反取引の話です。昨日のブログ(こちら)の続きなんですが,昨日は,「株主総会の承認から始めます」,なんて,もうめちゃくちゃに広い大風呂敷を広げてしまったので,大変恐縮しているのですが,まあ,言ってしまったので,僕が語れる範囲で話そうと思います。

さて,「株主総会」なんてテーマで話す始めると,それこそ,何百ページにもわたって書くこともできるし,むしろ,会社法の本では,少なくとも数十ページほどは,株主総会について書くために割かれています。

まあ,いろんなテーマがあるのですが,結局,株主総会で何をしているのかというと,「議案」を決めているわけです。例えば,日産自動車と古田の例でいえば,「古田が日産自動車の取締役に就任する」という「議案」を,賛成して可決するのか,それとも,反対して否決するのか,ということを株主総会で決めているわけです。

(よく,会社法の教科書には,「議題」と「議案」の違いについて書かれていますが,こんな用語の区別を覚えても仕方ありません。気になる方はググってもらえればいいですが,何か,わかったようでわからない説明が書かれているだけだと思います。)

そして,賛成して可決するのか,それとも,反対して否決するのか,を決めるのは多数決です。株主の多数決ということです。そして,普通の多数決とは違って,1人1票ではありません。株主1人ひとり,自分が保有している株式の数のぶんだけ,投票できるのです。だから,1株しか持っていない人は,1票しか投票できませんが,100株持っている人は,100票を投票できます。

もう少し詳しく説明すると,持っている株式の個数と,投票できる票数は,一致するとは限りません。というのも,株主総会で投票できる権利のことを「議決権」と呼ぶのですが,普通は,株式1個につき議決権も1つ割り当てられますが,会社によっては,議決権のない株式を発行しているからです(他にも,議決権の内容に差を設けたりする会社もあります)。このような,議決権のない株式しか持っていないと,株式を持っているにもかかわらず,株主総会で投票することはできません。

でまあ,こうやって,議決権の数をもとに,賛成多数で可決なのか,反対多数で否決なのか,というふうに,株主総会で決めていくわけですが,この「可決・否決」の条件も,法律で決められています。頭数ではなく,議決権の数で決める,ということも書かれていますが,それだけじゃありません。

小学生の頃を思い出してみてください。たまに,クラスの多数決で何かを決めていませんでしたか?例えば,クラスでどんな出し物をするかとか,学級委員長を誰にするかとか。その場合,当たり前すが,クラス全員が平等に1人1票を持っていますから,「議決権の数だけ投票できる」という株主総会の投票とはそりゃ違うのですが,他にも違いがあります。

おそらく,クラスでの多数決では,クラスメイトのほぼ全員が出席していることが前提で投票がなされているので,「欠席が多すぎるので多数決はナシで」ということはなかったと思います。でも,株主総会の場合,「欠席が多すぎる」ということもありうる。日本では,株主総会が6月末に集中して行われているように,伝統的に,「総会屋」という,いわば,株主総会荒らしへの対策として,株主総会を同じ時期に一斉に実施されています。だから,自分が株を持っている会社の株主総会の日程がかぶるという事態があり得ます。そのため,クラスの多数決とは違って,「欠席が多すぎる」ということも出てくる。

「欠席が多すぎる」多数決がよくない,というのは,感覚的にもわかると思います。例えば,40人のクラスで,15人しか出席していない日に,学級委員長を多数決で決めたとしても,その多数決には残り25人の意見が反映されていませんから,「クラスの総意」の根拠に欠けるように思えます。

(ちょっと脱線しますが,めちゃくちゃ勉強になった「道路の権力」「道路の決着」という,道路公団民営化を詳細に記録した猪瀬直樹作品があるのですが,この本では「多数決」の弱さが,後半で書かれています。HUNTER×HUNTERでも,多数決の弱点について書かれていますが,結局,多数決というのは,反対意見があることが何よりも弱い部分なのです。HUNTER×HUNTERでは,少数意見が踏みにじられてしまうという文脈で多数決の弱さが語られていましたが,↑の道路公団民営化では,「意見の正統性が弱まる」ことが繰り返し猪瀬氏から指摘されていました。というのも,道路公団民営化の際,内閣府に民営化委員会が設置され,民営化の方針について意見を取りまとめ,内閣に提出することになったのですが,その意見の取りまとめ作業が,最終局面で紛糾します。その場面で,猪瀬氏は意見を最終的な文章にする作業をしていたのですが,どうしても折り合いがつかず,最終的に「多数決」(しかも,委員長が辞任した上で)となってしまいました。この場面で,猪瀬氏は最後まで全会一致にこだわっていたのですが,その理由が「意見の正統性」でした。「多数決」というのは,必ず,意見が割れていることを意味します。そのため,多数決だと,意見が正しいことの根拠・後ろ盾・権威=意見の正統性が薄まってしまうのです。この指摘は,全くそのとおりでしょう。多数決による決定は,その正統性を弱めてしまう側面があることを忘れてはいけません。その正統性を最低限満たすために必要なのが,ここで話している「定足数」の話なんだと思います。)

話を戻します。欠席が多すぎる多数決がよくない,という話です。欠席が多すぎる多数決はよくないのはわかるけれども,とはいえ,社会人の世界では,全員が株主総会に出席しないと多数決として認めないというのも,現実的に難しい(株主全員のスケジュールを調整することは難しい)。

だから,会社法では,株主総会に出席しとかなきゃいけない株主の数も,議決権を基準に決めています。「株主総会に出席した株主の議決権を合わせて,~%以上ならOK!」という感じです。「定足数」というやつです。「少なくともこれだけの議決権が株主総会に集まっていないと株主総会が成り立たない」という議決権の数が,法律上決められている。

で,もう1つ言っておきたいのは,「賛成多数で可決」されるとは限らないのです。これも,クラスの多数決とは違う。「賛成多数」では足りないものもある。そして,↑に書いた「定足数」も,いろいろと変わってくる。

じゃあ,結局,「何%が出席してれば定足数を満たしていて,そのうち何%が賛成すれば可決するの?」という話になるわけです。

・定足数はどれくらい?=何%の議決権が集まったら株主総会が成り立つの?

・株主総会に集まった議決権のうち何%が賛成すれば可決するの?

の2つがあるわけです。

この話は明日します!


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