#122 借地借家法(難しいことは僕もよくわかりません!)-⑧

昨日のブログ(こちら)の続きです。

今日はちょっと体調があまり良くので,軽めにします。

毎日つづけていると,調子良い日も悪い日もありますよね。休んでもいいんでしょうけど,それでも続けるのが,好きなことということだと思います。

(実は,今週の月曜日から出勤しています。本当にただ「出勤」するだけで,仕事はまだしていません。出勤の練習です。朝の9時から2時間だけ在所して,それで帰るということをやっています。こんなことしかできないのは非常に悔しいし,もっとできそうな気もするのですが,このうつ病という病気は,本当に前触れなく(しかも,自分の意思とは全く無関係に)症状を起こしやがるので,極力ゆっくりと慣らしていこうと思っています。とはいえ,なるべく着実に前に進みたいとも思っています。これまでの人生は,根性や精神論で乗り越えてきたきらいがあるのですが(しかも,なまじ能力があるばかりに,根性と気合でどうにかなっていてしまい,それが,より状況を悪化させてしまっていたのですが),根性や精神論ではどうにもならないことがあることを知りましたので,精神論には頼らず,着実に前に進めるようにやろうと思っています。でもやっぱり,なんか足踏みしているみたいで悔しいですね。「無駄な時間じゃなかった」なんて思えるのは,やっぱり月日が経った後なんでしょう。今は,この足踏み感が悔しくてしょうがない。とはいえ,無理して後退してしまうほうがより悔しいから(もちろん,今のペースでも後退してしまう可能性もあるのですが,無理せず進んだ結果として後戻りしてしまうのであれば,それはそれで,まだ時期尚早だったことが判明するわけですから,納得できるところです。),やっぱり,ぼちぼちやるしかないようですね。)

閑話休題。昨日の続きです。

昨日は,対抗要件を備えた人は備えていない人に勝てる理由についてお話しました。①対抗要件を誰が備えているかは「誰でもわかるようになっている」ので,対抗要件の確認ミスした人が負けてしまうのは仕方ない,②対抗要件を備えた人が勝てるようにしておかないと,「誰でもわかるようにしておく」という対抗要件のシステムへの信頼が保てない(「誰でもわかるようにようにしておく」という対抗要件の役割は,その対抗要件が信頼できるもの(対抗要件に示されている権利者が,本当に権利を持っていると信頼できること)が前提となっている),そういった理由をお話しました。

昨日は,不動産(土地と建物)の所有権の対抗要件である登記(登記名義)をメインにお話しましたが,借地権・借家権の対抗要件でも同じなんですね。

つまり,借地権・借家権の対抗要件も,権利者が誰なのか「誰でもわかるようになっている」のです。

(対抗要件を備えた人が勝てるようになっていること(↑の②の理由)は,借地権・借家権の対抗要件を備えた人が,新しく土地・建物を買った人に,借地権・借家権を主張できる=勝てるということを,このブログで繰り返しお伝えしてきているので,ここで言うまでもないことだと思います。)

「誰にでもわかる」について,まずは借家権から説明したいのですが,借家権の対抗要件は「引渡し」=「鍵の受け渡し」でしたよね。つまり,その建物を使っていることそれ自体が対抗要件になるわけです。だとしたら,ある建物を買おうとする人は,その建物を直接訪れたり,その建物宛に手紙を送ったりして,その建物を誰かが使っているかどうか,確認することができます。そして,そういった確認作業の結果,持ち主とは違う人が「この建物借りてますよー」とか言ってくれれば,借家権の存在は確認できます。こういう形で,「引渡し」さえ済んでいれば,借家権の存在は「誰にでもわかるように」なるので,引渡しを借家権の対抗要件にしても良いわけです。

(まあ,普通は,建物を買おうとしたら,持ち主が誰かに貸していることは教えてくれますけどね。教えないまま売ってしまったら,それは詐欺罪の可能性が出てきますし,後でトラブルになるのはわかりきってますから。ここで説明しているのは,世の中,ちゃんとした持ち主ばかりじゃないので,悪い持ち主から買おうとする場合であっても,自分で調査して借家権の存在を確認する手段があるよ,ということなんです。)

じゃあ,次は借地権です。

借地権の対抗要件は,「登記された建物を借主が所有していること」でした。これが「誰にでもわかるようになっている」に,どうやってつながるのか。

ちょっと民法の原則の話に戻りますが,民法の原則では,借地権の対抗要件は,その土地の登記事項に「賃借権設定登記」を付け加えることでした。これをすれば,借地権の存在は「誰にでもわかる」ようになりますよね。だって,土地を買おうとする人は,誰でもその土地の登記事項を確認できるわけですが,土地の登記事項を確認したら「賃借権設定登記」と書いてあるわけですから。「賃借権設定登記」なんて登記事項に書いてあれば,借地権が設定されているのはすぐわかります。

しかし,借地借家法に書かれている「登記された建物を借主が所有していること」という対抗要件の場合はどうでしょうか。この場合,借地権があるのに,土地の登記事項には「賃借権設定登記」とは書かれていません。だから,土地の登記事項をいくら見たって,借地権があるかどうかはわかりません。

じゃあ,借地権が「誰にでもわかる」ようになっていないじゃないか!とも思えそうですが,そうじゃないんです。

実は,法務局では,「この土地の上に建物ありませんか?もし建物があったら,その登記事項も確認したいんですけど」と言えるんですね。つまり,土地がわかっていれば,その土地の上に建物が登記されているかどうか,そして,その建物の登記事項はどうなっているか(その建物を誰が所有しているか)を確認することができるわけです。

そうすると,その建物の所有者が誰なのか判明することになるわけですが,そしたら,建物所有者と土地所有者を見比べます。見比べた結果,土地所有者と建物所有者が違うのなら,それは借地権が設定されていることが確認できるわけです。なぜなら,他人の土地に,勝手に建物を所有することはできないからです。自分の土地に自分の建物を所有することはできますが,自分の建物を自分以外の人の土地に所有するには,何らかの契約関係(借地契約)などがないと説明がつきませんよね?

こういう形で,土地の登記事項とその土地上の建物の登記事項を見比べることで,誰でも借地権の存在を確認できるようになっています。

そして,土地を買おうとする側からすれば,法務局で土地の登記事項を確認し,その後に,その土地上の建物の登記事項を確認しようとしたら,法務局の職員が「この土地の上に登記されている建物はありませんよ」と言ったら,安心していいことになります。なぜなら,「登記された建物を所有していること」が借地権の対抗要件ですから,仮にその土地上に建物があって,借地権が設定されていたとしても,その借地権は対抗要件を備えていないので,土地を購入した人に,その借地権を主張することはできないからです。

という話なんですが・・・・

まあ,ここからは少し高度な話になってしまいますが,ちょっと書きます。

そもそも,「土地の上に建物があるかどうか」を法務局はどうやって判断しているのでしょうか。実は,建物の登記事項の表題部(「表題部」については,「不動産登記 表題部」でググってください。そしたら,画像検索で,不動産登記事項証明書の画像が出てきますので,それを見ると,「表題部」「権利部(甲区)」「権利部(乙区)という3つの欄がありますので,それで確認してください)に,「所在」を記入する欄があります。

この「所在」の欄には,土地の地番が書かれています。

例えば,「東京都港区青山1丁目1番」という土地の上にある建物の登記事項の「所在」の欄には「東京都港区青山1丁目1番地」と書かれています。この「所在」の欄で,その建物が,どの土地の上にあるのか,判断するのです。

だから,「東京都港区青山1丁目1番地」と「所在」欄に書かれている建物は,「東京都港区青山1丁目1番」という土地の上に存在しています。このデータが法務局に登録されているので,「東京都港区青山1丁目1番」という土地の登記事項を確認した際に,「この土地の上に建物ありますか?」と聞いたら,「ありますよ」と法務局は答えてくれるのです。

こんなこともあります。

建物の登記事項の「所在」欄に,「東京都港区青山1丁目1番地,2番地」と書かれている場合もあります。これは,その建物が,「東京都港区青山1丁目1番」という土地と「東京都港区青山1丁目2番」という2つの土地にまたがって建っているということです。

この場合,土地の所有者と建物の所有者が違うのであれば,「ああ,東京都港区青山1丁目1番と2番の両方に借地権が設定されているんだなぁ」と知ることができます。

ちょっと今日は時間がきましたので,ここまでにしますが,この先に本題があるのです。

これまでの説明だと,法務局では,建物登記の「所在」欄で,どの建物がどの土地の上に建っているのか管理しているので,土地の登記事項を確認する際に,「その土地の上に建物があるかどうか」を教えてくれて,「ありません」と教えてくれたら,安心していい=借地権を気にすることなく,土地を買っていい,ということでした。

だって,借地権の存在は,建物の登記事項の「所在」欄で「誰にでもわかる」ようになっているわけですから。登記以外の事情によって,借地権の勝ち負けが決まってしまうと,登記という対抗要件への信頼が下がってしまうので,誰も怖くて土地買えなくなりますよね。それはよくないということでした。

でも,本当に,建物の登記事項の「所在」欄のみで,勝ち負けを決めてしまっていいのか,そういった話があるのです。

これは,最高裁まで争われた有名なガソリンスタンドの話があるので,明日はそれをお話したいと思います。また,僕自身も,実際に,この話を扱ったことがありますので,それも少しお話したいと思います。

それではまた明日


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