#149 利益相反取引-⑥

Switchをメルカリで売ることができ,おかげでやっとポケモン動画をYou Tubeで見ることができるようになった古田です(これまでは,Switchも新作ポケモンも買ったのに全然やってなかったので,なんか悔しくて好きだったポケモンの対戦動画を全然見なくなっていました)。

さて,昨日のブログ(こちら)の続きですが,昨日は,取締役が会社の保証人になること(取締役にお金を貸し付けている貸主との間で会社が保証契約を締結すること)が間接取引に含まれることを説明しました。保証契約は借主本人=取締役が契約当事者にはならないので,「取引相手が取締役本人」ではなく,なおかつ,保証契約を締結する際に銀行の窓口となる人物も,銀行に勤務する従業員が担当するので,「取引相手の窓口が取締役」でもありません。だから,会社が取締役の保証人になることは「直接取引」に該当しない。

けれども,取締役本人の返済が滞ると,会社が代わりに返済しなければならなくなり,そうやって会社が貸主に返済したら,今度は会社が,取締役本人に返済した金額ぶんを請求することになります。これを「求償」と呼びますが,この求償は,会社が取締役に直接お金の支払いを請求するわけです。こういった直接請求が発生する可能性があるので,保証契約は,会社と取締役の利益が相反する可能性が出てくる。だから,直接取引には含まれないけれども,間接取引として,利益相反取引に含めるわけです。

で,今日は,「じゃあ,どこまでが間接取引に含まれるの?間接取引の基準は何?」という話をしようと思います。

これまで紹介してきた保証の例だと,「取締役本人への直接請求」が間接取引の理由になっていました。この理由が当てはまる場合に限定すりゃいいのか。

例えば,「債務引受」というやつについて考えてみます(これまためちゃくちゃ難しそうな単語です)。その名の通り「債務を引き受ける」ことが債務引受なのですが,これだけ書いても意味がわからないので,具体例を書きます。

また日産自動車の例を出しますが,今度は,金遣いの荒い古田が,もっと大胆な手段に出ます。「保証」だと,当古田自身が返済する必要があります(当たり前の話ですが)。古田自身も返済する必要があるのだけれど,それだけじゃ心配だから,古田ともうひとり,返済の「アテ」を作り出すのが保証契約というやつでした。

でも,こんなこともできます。

古田は,「ああ,もう自分では返済したくないな。そうだ!本当はもっと役員報酬をもらっていいはずなのに,これだけしかもらえていないんだから,これはもう,本来自分に役員報酬として支払うべき金額分を会社はため込んでいることになるから,僕の代わりに会社に借金を返済してもらうべきだ!」という意味不明な理屈を持ち出します。要は,会社に代わりに借金を返済してもらおうということです。

これを思い立った古田は,この場合もやはり,ゴーンと対立する東川に働きかけます。その結果,東川は,銀行との間で,「古田が銀行に対して負っている借入金返済義務を日産自動車が引き受ける。これにより,古田自身の借入金返済義務は消滅する。」という契約を締結します。これが,「債務引受」という契約です。「義務」は「債務」とも言います。日産自動車が,古田の「債務」を引き受ける=肩代わりするので,「債務引受」と呼ばれます。

そしれ,↑のような,「古田自身の債務が消滅する」もの,つまり,債務引受の結果,もともとの債務者の債務が消えてなくなるものを,「免責的債務引受」と呼びます(今年の民法改正で新しく民法に条文ができました)。「免責的」が「債務引受」の頭にくっついているのは,もともとの債務者の債務が消えてなくなる現象を,「責任(債務)が免除される」と考えて,「免責的」と言っているんだろうと思います(多分)。

この免責的債務引受は,貸主と新しく債務を引き受ける人との2人だけで,することができます。ここで日産自動車の例に戻りますが,つまり,古田自身の借入金債務を日産自動車が引き受けるという話なのに,古田自身は,免責的債務引受(これも契約です)の契約当事者になることなく,銀行と日産自動車の間で締結することができるわけです。

だから,免責的債務引受も「直接取引」には当たりません。会社の取引相手は銀行なので「取締役本人」じゃないし,銀行の窓口も取締役じゃない(銀行の従業員が担当している)からです。

しかし,免責的債務引受って,古田自身にとってめちゃくちゃありがたい。というか,古田の債務を日産自動車に押し付けているわけで,一方的に古田にとって有利な話です。反対に,日産自動車にとっては借入金債務が増えるだけで,何も利益はありません。このように,免責的債務引受というのは,会社に不利益を押し付けることで,取締役個人に利益をもたらすものです。だから,会社と取締役の利益が対立しているのは明らかで,そりゃ,「間接取引」に含まれます。

こうやって,保証と(免責的)債務引受を見てくると,それぞれ,「間接取引」に含まれる理由は違っています。保証だと「会社から取締役に直接請求する事態が発生するかもしれない」が理由だし,免責的債務引受は「会社に不利益をもたらすことで取締役に利益をもたらす」が理由です。だとすると,取引ごとに,それが「間接取引」にあたるかどうか,逐一判断するしかない。

とはいえ,ケースバイケースとは違うんですね。つまり,↑の保証や免責的債務引受は,登場する人物や会社が変わっても,やっぱり「間接取引」にあたるわけです。なぜなら,保証や免責的債務引受なら,その取引の「仕組み」に照らして,必ず,間接取引に含むべき理由として既に書いたような現象が起きるからです。「直接請求が起きちゃう」とか「会社に不利益をもたらすことで取締役個人に利益が生じる」とかのことです。こういった理由は,会社が日産自動車からトヨタ自動車に変わっても,取締役が古田からスティーブ・ジョブズに変わっても,同じように当てはまります。

「当事者が変わっても同じように当てはまる」ということが,「間接取引の基準て何?」という話で重要と思います。よく「間接取引」の基準として「外形的・客観的に会社の犠牲において取締役に利益が生じる」ということが言われていますが,これだけ読んでも覚えても,意味不明です。その先が大事だと思います。

この定義って,何を言っているかというと,結局,この基準(定義)も,↑のような保証や免責的債務引受の事案が最高裁判所で判断されてから出てきた話で,保証や免責的債務引受の両方を包括する基準なんて,なかなか作り出すのは難しいわけで,そうなると,↑のようなふわっとした基準しか言えなくなる。でも,大事なのは,後で話すように,「間接取引」に該当すると,後から取引が無効になってしまう可能性が出てきます。

だとすると,取引相手としては,あらかじめ間接取引にあたるかどうか予測できなきゃこわくて仕方ないわけです。後から無効にされたら,せっかく返済してもらったのにそれを手放さなきゃいけなくなるかもしれない。

この「予測できるか」の観点から,↑の定義が出てくるんだと思っています。

ちょっと今日はここまでにします。尻切れトンボですみません!

それではまた明日!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※内容に共感いただけたら,記事のシェアをお願いします。

↓Twitterやっています。

古田博大(ふるたひろまさ)よければ,フォローお願いします。

アメブロにも同じ内容で投稿しています(リンクはこちら)。

※このブログの内容は,僕の所属する企業や団体とは一切関係ありません。あくまで僕個人の意見です。

サポートしてくださると,めちゃくちゃ嬉しいです!いただいたサポートは,書籍購入費などの活動資金に使わせていただきます!