見出し画像

交通事故の被害にあった場合に弁護士の僕ならどうするか-8(買替差額)

【 自己紹介 】

プロフィールページはこちら

このブログでは、弁護士である僕が、もし仮に自分が紛争・トラブルの「当事者」となった場合に、「自分だったこうするだろうな」ということをお伝えしてしています。

僕自身、これまでの人生で大きな紛争・トラブルの当事者となったことがなく、今この瞬間、紛争・トラブルに直面されている方の苦しみや不安を代弁できるような立場にはないのかもしれません。

ただ、自分が紛争の当事者となった際の対処法を弁護士目線でお伝えできれば、それが、ご覧になった皆様のお役に立てるかもしれないと考えています。

あくまで、「僕だったらこうするだろうな」ということですから、ご覧になっている方々に必ずしも当てはまらないとは思いますが、僕のやり方をヒントに、自分なりに応用していただけたら、とても嬉しいです。

ご覧になっている皆様のお顔も名前も残念ながら知ることができませんが、アクセスしてくださり、ありがとうございます。本当に励みになっています。

【 今日のトピック:交通事故 】

昨日に引き続き交通事故について書いていきます。

ここ数日、交通事故の損害のうち、いわゆる「物損」について書いています。

ケガを理由とする損害を「人損(じんそん)」、自動車の損傷などケガ以外を理由とする損害を「物損(ぶっそん)」と呼びます。

「人損」は「人的損害」の略で、「物損」は「物的損害」の略です。

交通事故は、「物損」と「人損」を区別すると、考えやすいです。

この2つは、考えることが全然違います。

まあ、物損だろうが人損だろうが、交通事故によって発生した損害であることは同じなんですが、人損は、ケガの治療費や慰謝料がどれくらいかを考えなきゃいけなくて、物損は、自動車の修理代や、昨日話した評価損、そして、今日お話しする「買替差額」などについて考えるので、やってることが全然違います。

「修理代」といっても、修理工場が請求してきた金額が必ず正しいとも限らないんです。

「修理」といっても、その事故によって発生した損傷の修理「方法」は、いろいろと考えられます。

今回の設定だと、僕のプリウスが後ろから追突された結果、僕のプリウスの右後ろがへこんでしまいました。

リアバンパーの右側部分が凹み、テールランプも割れてしまいました。

この修理として、今回は、リアバンパーを交換し、テールランプを取り換えるという修理方法が採用されました。

しかし、修理方法としては、リアバンパーを交換するのではなく、バンパーの凹みを伸ばすという方法もあり得るわけです。テールランプが割れているのであれば、乱暴に言うと、その割れた部分にセロハンテープを貼り付けるだけでも、「修理」といえば「修理」です。

こんなふうに、「修理」といってもいろいろなのです。

でも、バンパーは交換が比較的簡単で、材料費もそこまで高くないので、バンパーの凹みを伸ばす作業を行うよりも、交換しちゃったほうが安上がりです。

だから、バンパーを交換すればいいのに、凹みを伸ばす作業を行った結果、修理代が増えてしまったら、その増えた分は「損害」には含まれないことになります。

テールランプにセロテープを貼るだけで修理として認められるはずもなく、割れているなら交換が必要となるでしょう。

それと、単純に、事故で損傷が生じていない箇所を修理しても、「損害」には含まれません。

例えば、今回の事故では、リアバンパーが凹み、テールランプが割れただけでしたが、元々ついていたキズを補修したり、リアガラスを交換したりしていたら、それはもちろん、「損害」に含まれません。


「物損」では、こんなことを考えなきゃいけないんです。

さて、そこで、昨日の続きで「買替差額」についてお話します。

交通事故によって自動車の価値が減少した場合に、「評価損」が請求できるということは、昨日お話しました。

フレームなどの自動車の構造部分が交通事故で損傷した場合、修理しても安全性への問題が払拭できなかったり、外装が元に戻らなかったりするせいで、価値が下落してしまい、その価値下落分が「評価損」という話でした。

でも、フレームなど、自動車の構造部分に損傷が生じていない場合は、評価損は請求できません。

買替差額(交通事故のせいで、売却代金が減額された)も、この話が少し絡んできます。

「買替差額」が請求できるケースは、判例上、↓の3つのパターンに限定されると最高裁が明言しています。

・物理的全損

・経済的全損

・買替えが社会通念上相当

順番に説明しますが、「物理的全損」は、どれだけ修理しても自走できないくらい自動車が大破してしまっているケースなので、自動車は買い替えるしかありません。

「経済的全損」の場合も、修理代が自動車の価値を上回っており、修理しても、自動車の価値分しか相手に請求できないので、修理するくらいなら下取りに出して買い替えたほうがいいです。

こんなふうに、物理的全損と経済的全損のケースでは、自動車に乗り続けることが非合理的で、買い替えるに決まっているので、買い替えた際の下取り価格が安すぎる、つまり、「交通事故に合わなければ、もっと高い値段で下取りに出せたはずなんだから、その差額をよこせ!」と請求できるわけです。

しかし、物理的全損でも経済的全損でもないにもかかわらず、「買替えが社会通念上相当」の場合も、買替差額が認められますが、これはかなりレアケースだと思います。

「買替えが社会通念上相当」というのは、「常識的に考えれば、自動車を買い替えるのもやむを得ないよね」という意味です。

物理的全損でもないし、経済的全損でもないわけですから、修理代は丸々相手に請求して、引き続き自動車に乗り続けられるわけです。

修理しても回復しない価値の減少があるのであれば、それも、「評価損」として相手に請求できます。

にもかかわらず、「買い替えるのもやむを得ない」というケースって、どれくらいあるのでしょうか。

そういうケースってほとんどないよね、ということは最高裁自身も十分理解していて、というのも、「買い替えるのもやむを得ない」と認めるためには、「フレーム等車体の本質的構造部分に重大な損傷の生じたことが客観的に認められる」のが必要だと明言しているからです。

ここで、「評価損」を請求する場面と同じ議論が出てきます。

フレームなどの構造部分に損傷が生じた場合は、修理しても回復できない価値の減少があるので、修理代とは別に、評価損を請求できるんでした。

ただ、こういった、フレームなどの構造部分に損傷が生じた場合は、自動車を売却して(下取りに出して)、その売却代金(下取り代金)と、事故に合わなかったとすればこれくらいの価値があっただろうという「時価額」との差額を請求できるわけです。

まあ、フレームなどの構造部分に損傷が生じた場合は、修理代がかなり高額になるので、修理代が自動車の価値を上回ってしまい、「経済的全損」となる場合も多いでしょう。

その場合は、自動車を修理せずに売却して(値段がつかなければ引き取ってもらって)、自動車の時価額を貰うことになります。

問題は、フレームなどの構造部分に損傷が生じているけれども、修理代が自動車の価値を上回らないケースです。おそらく、こういうケースは、かなり人気がある高級車で、中古でも高く売れる車種なんでしょう。

こういう場合、事故にあった被害者としては、2つの選択肢が考えられます。

A 自動車を修理して評価損をもらう

B 修理せずに自動車を売却して、時価との差額をもらう

おそらく、中古でも値段が落ちない人気の高級車であれば、Bのほうが、もらえる金額は高くなるでしょう。もちろん、ケースバイケースですが。

評価損を請求できるようなケースは、自動車の構造部分にダメージが発生しているので、僕だったら、乗り続けたくはないと思ってしまいます。

下取りに出して、新しい自動車の購入代金に充てたほうがいいような気がします。

でも、思い入れがあって、乗り続けたいのであれば、修理して評価損をもらって乗り続けてもいいでしょう。

ただ、よくよく考えると、

C 修理して自動車を下取りに出して時価との差額をもらう

という選択肢もあり得そうですが、これだと、時価+修理代をもらっちゃうのでもらいすぎですし、売却しなければ、修理代+評価損しかもらえないはずなので、得しすぎています。だから、認められません。

結局、買替差額(売却額と時価との差額)は、

・物理的全損

・経済的全損

・フレームなどの構造部分に損傷が生じ、買替えもやむを得ない

この3つだけ、ということになります。

ちなみに、自動車の「時価」は、インターネットで年式や走行距離を指定して検索し、実際の販売価格を参考に算出します。

今日はこの辺で。

それではまた明日!・・・↓

*:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:**:;;;:*:;;;:*

TwitterFacebookでも情報発信しています。フォローしてくださると嬉しいです。

昨日のブログはこちら↓

ブログの方針を転換したきっかけについてはこちら

僕に興味を持っていただいた方はこちらからいろいろとご覧ください。

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

※内容に共感いただけたら、記事のシェアをお願いします。

毎日記事を更新しています。フォローの上、毎日ご覧くださると嬉しいです。

※心身への負担を考慮し、「書き始めてから1時間くらいでアップする」という制限時間を設けています。



サポートしてくださると,めちゃくちゃ嬉しいです!いただいたサポートは,書籍購入費などの活動資金に使わせていただきます!