20200119_かわいい変性ヨロシ白血球

【考察】変性ヨロシ白血球はいかにして毒素に打ち勝つか?

◆重点◆書いた人は毒や免疫に詳しくありません。正確な医療情報を知りたい人は教科書を読むか専門家に相談しましょう◆健康第一◆


先日放送された「ドリームキャッチャー・ディジタル・リコン」#7で、サブジュゲイター=サンがとてもスケベ、いや大変なことになっていた。
すごかった。
ありがとうナウジア=サン、ありがとう……いい仕事をしてくれた。心置きなく爆発四散してくれ……

で、CEOがスパイシーだったのはさておき、彼の体内には「変性ヨロシ白血球」という胡乱な細胞が流れていることが判明した。
何なんだそれは。100歩譲ってヨロシ白血球はわかる。でも変性って何がどう変性してるんだ!?ナウジア=サンのベノムサメ・ジツをも無効化するすごい白血球……なのだが、なんなんだこれは……ヨロシ白血球のシャードが来たらどうしよう……

関係があるかもしれない過去記事:タケウチ・ウイルスについての考察(ニンジャの免疫システムについて)
……なんでニンジャの小説で免疫関連の考察が2つも書けてしまうのか?推しの白血球の話が出てくる小説が他にありますか?

✦サブジュゲイターの毒耐性
彼はニンジャの中でも毒に強いほうらしく、「オペレイション・レスキュー」でも空気中の毒を分解していたが、今回その仕組みの一端が明らかになった。瀕死でも隙あらばプロモーションを入れてくるCEOの鑑……
ヘッズ諸氏からも指摘されていたとおり、有毒バイオニンジャの脱走や、得体の知れない毒が撒き散らされたプラント事故現場での活動を考えて、毒への耐性を重点したのだと思われる。「もしグリーンオーガ=サンの毒ソードがサブちゃんに当たってしまったら……」と心配していたが、どうやら大丈夫そうだ。グリーンオーガ=サン本人にもヨロシ白血球が流れていそうで二重にごあんしんだ。

✦変性ヨロシ白血球って何だ?
どのあたりが変性しているのか?鎌状赤血球ならぬ渦巻き状白血球なのか?
たぶん遺伝子組換えの意味なんだろうけど……まあ、変性していてもとにかく白血球ではあるらしい。ここではベノムサメ・ジツの毒と、それを分解してくれる白血球について考察していこう。

✦ベノムサメ・ジツはどんな毒か
ジツの名称、そして生きたカエルを飲み込むという発動条件から、生物毒であろう。(venomとは:動物が刺したり噛んだりして注入する毒。ヘビとかスズメバチが有名だ。みんな大好きブラックマンバ=サンの毒もvenomな)

では、どういう作用の毒なのか?
リコナーが何もわからないまま体の自由を失って即死したことから、神経毒である可能性が高い。イモガイが作るコノトキシンは、ニューロンの伝達を阻害して獲物を麻痺させ、殺す。海で刺されると浜辺に辿り着くまでに倒れるとも言われているほどの猛毒だ。
さらに、サブちゃんが出血しているので、出血・溶血毒も含まれているだろう。ヤマカガシの毒は血液を固める物質(フィブリノゲン)を使い尽くさせるので、最終的に出血が止まらなくなって死ぬ。株券がアブナイ。
……うわあ、いろんなvenomの福袋だ!嬉しくない!

Q.服が溶けるのはナンデ?
A.わからない。殺すしかない
まあニンジャの毒だし超自然のなんかで溶けたんじゃないでしょうか。あとはほら、CEOのサービスシーン的な……

✦白血球の(すごい雑な)説明
白血球はとにかく種類が多い。顆粒球・単球・リンパ球の3大クランがあり、それぞれのクラン内に派閥があって、たくさんの構成員がいる。
詳しくは『はたらく細胞』を読もう!

◎顆粒球:好中球・好酸球・好塩基球の3種類がいる。
好中球→死ねェェェイ雑菌!ほかの仲間が来るまでの間、最前線で戦う兵士たち。体内に侵入した細菌や真菌をかぎつけ、ディスターブドめいてぬるぬると遊走し、集まってきて食い殺す。かわいいね!寿命は短い。
好酸球→寄生虫をやっつける。アレルギー反応に関わる。こいつを抑える抗体はアトピーとかの治療に使われているが、お値段がエグゼクティブだ。
好塩基球→アトピーや喘息などの慢性アレルギー炎症に関わるらしい。

◎単球:血管の外へ行ってマクロファージや樹状細胞などに分化する。白血球の中でいちばん大きい。
マクロファージ→でっかい。カワイイ。細菌やウイルスなどの異物などを食べて分解する。ポリモーフを食ったフロッグマンを思い描いてみよう。
樹状細胞→敵の生首(抗原)をニュービー(naïveT細胞)に見せて「こいつを殺すんだぞ♥がんばれ♥」と応援してイクサのやる気を出させて(活性化)くれる。

◎リンパ球:ここに挙げた以外にもいろいろいる。
キラーT細胞→上官(ヘルパーT細胞)の命令を受けてイクサに出動し、ウイルスにとりつかれた細胞やがん細胞などを殺す。スリケン(パーフォリン)を投げて敵の細胞膜に穴を開け、そこから毒(グランザイム)を注ぎ込んで核を破壊したりもできる。コワイ!
ヘルパーT細胞→免疫の司令官。きっとショーギが強いに違いない。はたらく細胞では2種類しか出てこないけど実はたくさんいるんだぞ。
Th1-細胞性免疫を担当。マクロファージやキラーT細胞のケツを叩いてイクサを指揮する。サワタリさんだ!
Th2-液性免疫を担当。B細胞に抗体を作らせる。
Th17-炎症を起こす。アレルギーや一部の自己免疫疾患に関わっている。(炎症を抑えるやつもいるらしい)
制御性T細胞(Treg)-免疫反応にブレーキをかける。こいつがサボると免疫が暴走してフレンドリーファイアを始めたりしてモー大変。
(ところで私は『はたらく細胞BLACK』のヘルパーT細胞くんが好きです。なんかサブみがある。好中球さんもセクシー&カワイイだからぜひ読もう)
B細胞→T細胞の命令を受けて抗体を作る。作れる抗体は1人1種類。敵と直接のカラテはしない。リツキシマブを投与すると死ぬ。
NK細胞→ニンジャ殺す細胞。敵をバトウで追い詰めてセプクさせる。上司の命令がなくても殺せる。スリケンをT細胞の10倍も持っており実際スゴイ。

これらの細胞たちはIRCの代わりにサイトカインという物質を出して「集まれ」「撃て」「どんどん増えろ」「ちょっとやめないか」「セプクせよ」などの命令をやり取りする。
詳しい説明は省くが、変性ヨロシ白血球、IL-464とか出してそう……もしやこれがバイオインゴットの成分……?

この中で、ベノムサメ・ジツの毒の中和に関わるものはどれか?
重要なのは、毒素に対する抗体を作ってくれるB細胞であろう。そういうことにして話を進める。

✦サブちゃんは毒をどうやって無毒化するか
みなさんは破傷風の予防接種を受けたことがあるだろうか?(私はある。受けていない人はできればしよう)
あれはトキソイドといって、菌そのものではなく、ヤツらが作る毒素を無毒化したものだ。打つと毒素をやっつける抗体ができる。ハブやマムシに噛まれた人の治療に使う抗毒素も、こんなふうにして馬に作らせている。
サブジュゲイターの体内でも同じように毒素を中和する抗体が作られたのだろう。(どうでもいいが、変換で「サブジュゲイターの胎内」と出てきて変な想像をしてしまった。ギャラクシー以下略の罪は重い)

この抗毒素は、毒素が細胞にくっついて悪さを働いてしまってからでは効かない。
変性ヨロシ抗体ちゃんが血液中の毒素を無毒化しても、すでにやられてしまったサブちゃん細胞はどうしようもないのだ。サブジュゲイター=サンが元気になるには、抗体産生と同時にものすごいスピードで細胞の機能を回復させなければならない。ニンジャ回復力にヨロシサンの素晴らしいバイオテクノロジーが合わさって回復も100倍なのだろう。

しかし再生力では忍殺最強クラスのはずのハイドラ=サンはショーユ毒にやられてからの回復が遅かった。あれは低分子の毒だからなのか?それともショーユがヤバすぎたのか?逆に、再生力が強すぎるのでその機能を阻害する薬物にはかえって弱いのかもしれない。サブちゃんにもショーユを飲んでもらって比較すれば研究が進むだろう。

✦なぜあんなに早く回復できるのか?
モータルの場合、初めて見た毒素の抗体を作るのにはそれなりに時間がかかる。インフルエンザが1日で治らないのはそのためだ。マスラダも初見の敵にはそこそこ苦戦するが、拳を交わすうちにだんだんわかってきて最後は勝つし、あらかじめカラテトレーニング(ワクチン)しておけばもっと素早くわかることができる。免疫もそれと同じだ。
だがサブジュゲイター=サンは毒の雨を浴びた直後からすさまじい勢いで回復しはじめている。起き上がれないほど弱っていたのに数分もするとふらつきながらも歩けるようになっていた。なぜなのか?

1.細胞のはたらくスピードがすごくハヤイ
個体差はあるものの、ニンジャはモータルに比べてはるかに回復力が高い。作中で最弱のニンジャと噂されるカナスーア=サンでさえもだ。もちろん免疫力も高く、めったに病気に罹りはしない。逆にその丈夫さを利用して作られたのがアンタイニンジャウイルス「タケウチ」である。
参考:シャード・オブ・マッポーカリプス(51):タケウチ・ウイルス
サブジュゲイター=サンはヨロシサンの最高傑作であるから、バイオテックでさらなる回復力ブーストが図られているだろう。実際スリケンを受けて負った傷がみるみるうちに治っていた。自分で投げたスリケンなのが笑える。

2.あらかじめいろいろな毒素に対するトキソイドを打ってある
ヨロシサンのプラントにうようよしてる毒物、正直そこで働いてる研究員も何なのか把握していないのでは?誰も知らない変な物質が人知れず誕生していそうだ。なのでどんな毒にも対応できるように、数打ちゃ当たる!と何でも片っ端から打たれるサブジュゲイター=サン。中間管理職は大変だ。
どれか1つぐらいは交差免疫で少しは効いてくれるかもしれない。

3.ヨロシ・ジツで自らの免疫システムを操っている
ヘルパーT細胞を介さずに直接B細胞を活性化!私が免疫システムだ!
そんなムチャクチャなことができるかは知らないが、何せヨロシサンなので……もしこれが可能なら、ヨロシ・ジツはがんに効くということになる。スゴイ!ノーベル賞だ!
……ヨロシ・ジツが効くようにするにはまずバイオ改造で造血幹細胞を入れ替えなくてはいけないので、普通にヨロシ医療技術でがんを治したほうが早いのだが。

✦ほかの細胞たちは?
B細胞に焦点を当ててきたが、それ以外の細胞たちはどうだろうか?
好中球やマクロファージは敵を食って細胞内の酵素で分解するのだが、抗体がくっつくと「わ~おいしそう!」と寄ってきてよく食べる。変性ヨロシ酵素を持っていてどんな毒も分解できるかもしれない。
キラーT細胞やヘルパーT細胞が自然の原則を無視して毒素を食っていてもおかしくないのがヨロシサンの恐ろしいところだ。何なら普通の細胞がウイルスを食っているんじゃないか。感染するはずが逆に食われてしまったウイルス、かわいそう……

✦抗体の可能性
何はともあれ、サブジュゲイターは一度生き延びた。
彼の体内には既に抗ベノムサメ・ジツ毒素抗体ができていると思われる。つまり、彼は素手でナウジアを殴れる唯一の戦力になっているかもしれない!

では、サブジュゲイターの血清をみんなに投与すればいいのでは……?
そう考えてはみたものの、彼の血液中には得体の知れないバイオインゴット成分などが含まれており、体に良いとは思えない。ニンジャならまだしもモータルに投与したら免疫がつくどころか命が危うくなりそうだ。

それなら、変性ヨロシ白血球そのものを投与するのはどうか(医療設備がないという問題は置いておく)。こちらもおそらく難しい。
まず、白血球にはHLAという血液型があって、自分と違う型、つまり他人の細胞を攻撃する。HLAの組み合わせは数万種類ともいわれ、兄弟でも合う確率は4分の1、赤の他人とはめったに一致しない。造血幹細胞移植のドナーがなかなか見つからない理由がこれだ。
ましてやヨロシ遺伝子を組み込まれているサブジュゲイター=サンのHLA(バイオニンジャだからBLA?)がそこらへんのモータルと一致する可能性はゼロに等しい。
もうひとつ、モータルの体はこの特殊な白血球に耐えられない可能性がある。モータルに使えるものだったらまずは社員に使うだろう。ナイン=サンも風土病に罹りはしなかったはずだ。

だが、もしもサブジュゲイター血清が効いたとしたら?
「ベノムサメ・ジツがあれば無敵だぜーッ」「総員、撃てい!」BLAMBLAMBLAM!「アバーッ!?」「バカナー!ジツが効かないだと!?」「サヨナラ!」変性ヨロシ白血球に包まれてあれ……
ダメだ、めちゃくちゃ面白い。本当にこうなったらどうしよう。ヨロシサンの株価が上がってタキがカネモチになってしまう……

考察しておいて何だが、T細胞やB細胞ではなく「ヨロシリンパ球」とかいう訳のわからない細胞がはたらいている可能性もある。顕微鏡で覗いたらヨロシサンのロゴが入ってたりして……

参考文献:
『医系免疫学』改訂14版
『細胞の分子生物学』第6版
私は偶然ここへ来て記事を書いており、利益相反は一切ない。イツデモヨロシサン!


フルツとか医学書とか買います