見出し画像

チェルシーと兄弟クラブになったRCストラスブール

2022年ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて、プーチン大統領と関係性が近いことで問題視されていたアブラモヴィッチ氏がチェルシーを売却して早1年が経ちました。

次なるオーナーはアメリカの投資グループ「BlueCo」のトッド・ベーリー氏となりました。今シーズンは彼の傲慢さも目立って成績は振るいませんでしたが、連日報道されているニュースを見ると、チェルシーファンは心の安らぎを見つけるのにかなりの時間と労力を要しているのではないでしょうか。

活発な動きを見せているベーリー氏ですが、就任してから着手し続けてきたのはグループ化。いわゆるマンチェスターシティとジローナやパレルモの関係性のように共同オーナーで経営の幅を世界規模に広げ、ネームバリューの向上と世界中から優秀な人材を集めるための策です。

そこで見出されたのがRCストラスブール。ドイツに近いアルザス地方のクラブで、川島永嗣選手と鈴木唯人選手の2人の日本人が在籍しています。

フランスではマンチェスターシティの共同クラブとしてトロワが、今年1月には前の月にボーンマスのオーナーとなったビル・フォーリー氏がロリアンの株主を買収して共同オーナーとなりました。

トロワがシティフットボールグループのコネクションを活かしてメルボルンシティからキスノルボ監督を招聘したり、ロリアンがボーンマスへウアッタラを高値で売ったりといった動きが今シーズンありました。おそらくストラスブールとチェルシーの間でも今後はこのような活動が行われていくかと思います。

ここからは特にチェルシーファンのために、ストラスブールというクラブを街や歴史、今シーズンの振り返りなどを紹介していきます。



ドイツとフランスの混合となっている都市

パリから見て、東に位置するのがストラスブール。この地図を見てもらうとわかるように、直接ドイツと国境を接しており、ドイツ人も多く住んでいます。大まかな比率としてはフランス人が6割、ドイツ人が4割といった感じです。国内では8番目に人口の多い都市であり、割と豊かな都市に住む人々は「ストラスブルジョワ」とも言われたりします。

ストラスブールが位置するアルザス・ロレーヌ地方はかつてドイツ領だったこともあり、独仏和解の象徴としても名高いです。また、ブリュッセルやルクセンブルクに並ぶ「欧州の首都」とされ、欧州議会や欧州人権裁判所、欧州評議会などの多くの欧州機関が置かれています。国内ではパリに次いで、2番目に国際会議が開催される都市でもあります。

ストラスブールというのはアルザス語で「街道の町」という「ストラテブルグム」から由来しており、その名の通り交通の便が栄えていることでも有名です。

気になる街並みですが、写真で見る限りでも相当美しいです。メルヘンチックな建築物はドイツの香りを漂わせますが、実際に街中を歩いてみるとおしゃれなカフェが並ぶなど、フランスらしさも感じることができます。その美しさから1988年に市街ごと世界遺産に登録され、2017年にはその範囲が拡大されました。

一番の魅力はクリスマスで間違いないでしょう。起源は1570年からあるようで、モミの木のクリスマスツリーはストラスブールが発祥であると古書に記述があったり。クリスマスの時期は人も多く集まって何かと費用がかかるかと思われますが、街全体でクリスマスの気分を味わうには世界で最適の場所でしょう。マーケットも魅力的であり、ストラスブールでクリスマス気分を盛大に味わってみてはいかがでしょうか。

クリスマス時のストラスブール

ストラスブールの街並みについては、私が日頃フランス文化の勉強のためにお世話になっている方の動画をご覧ください☺️



RCストラスブールというクラブの歴史と概要

ストラスブールの歴史は、1906年まだドイツ占領下であったことから「FCヌドルフ」という名前から始まりました。その後フランスへ返還されて「ラシン・クリュブ・ドゥ・ストラスブール」という名前が正式名称となりました。

1933年からプロリーグに参加し、これまでにリーグ優勝1回、クープ・ドゥ・フランス3回、クープ・ドゥ・ラ・リーグ3回のタイトルを誇っています。全盛期を決めるのは難しいですが、各年代ごとに主要タイトルを獲得するなど、コンスタントに結果を残しているクラブです。

輝かしい功績がある一方で、2009/10シーズンには成績不振で初の3部降格を味わいます。翌年には財政問題のために行政処分を受けて、プロ資格を剥奪されました。2016年にプロリーグに復帰して、2017年にリーグアンに復帰、2018/19シーズンにはリーグカップで優勝して欧州の舞台への切符を獲得しました。

クラブOBとしては日本でも馴染み深いオシムやヴェンゲル、元フランス代表監督のドメネク、監督としてバロンドーラーのジャン=ピエール・パパンが在籍していました。

以前の記事でもお伝えした通り、会長は地元にゆかりのあるアルザス人のマルク・ケラーが会長を務めています。今回の買収に関してもマルク・ケラーは引き続き会長を務めることが正式発表されています。

マルク・ケラー会長


リーグアンのオーナー&会長に関しては以下の記事から👇👇


スタジアムは1906年に開場したスタッド・ドゥ・ラ・メノー。収容人数は26,109人とやや少ないですが、ほとんどの試合で満員となり、応援もドイツ風でかなり熱い雰囲気になるスタジアムです。

Stade de la Meinau


そして、ストラスブールの最大のライバルクラブがFCメス。同じアルザス・ロレーヌ地方の主要クラブであり、[Derby de l’Est]イースタン・ダービーとも言われたりします。同じ地方のライバルクラブという立場でありながら、川島永嗣選手や現監督のアントネッティなどはメスからストラスブールに加入した人たちであり、禁断の移籍となるほどそこまで関係性はひどいものではない雰囲気はあります。しかしながら、過去にはこの関係性を利用して事件も起こっているため、やはりダービーなので熱くなるものがあるみたいです。来季はメスが1部に復帰するため、このダービーが1部で2年ぶりに実現します!!
(補:メスはロレーヌ地方のナンシーとのロレーヌ・ダービーもあり、このダービーの方が熱くなる印象です。)


ストラスブールのサポーターの雰囲気に関しては、パリ侍しゅんすけ先生の動画をどうぞ😁😁



2022/23シーズンの振り返りと日本人選手

2021年からフランス代表アシスタントコーチ、ギー・ステファンの息子であるジュリアン・ステファンが監督になり、1年目は6位と大躍進を果たしました。相手の時間を耐えながら、地道に自分たちの流れに持っていき、効率よくチャンスをものにするイタリアンチックな戦い方で上位に入りました。

しかしながら、ステファン体制2年目の今シーズンはその躍進の魔法が切れたかのように、選手たちの動きから自信のなさが感じられ、降格圏内に陥っていました。クラブは1月にステファンに見切りをつけて、ル・スコルネコーチが間を引き継いだのちにアントネッティが就任しました。

これが功を奏して見事V字回復。戦い方の根本はあまり変わらないものの、冬に獲得した選手や、若手とベテランの良いバランス配分でチームが一体化して活気を取り戻してリーグアン残留を勝ち取りました。

今季の主要フォーメーション

ステファン体制から根付いているストラスブールの戦い方は、基本的に中盤を経由せずに早い段階でFWに長いボールを当てて、セカンドボールを拾って相手陣内で攻めるという戦い方。守備時は自陣では低いブロックを敷きながら、相手陣内では圧をかけてボール奪取を目指します。

最前線のディアロは185cmの長身で空中戦にめっぽう強く、競り合った溢れをサンソンやベルガルドゥなどのテクニシャンが攻撃に厚みをもたらします。3バックは対人に強いジクを中心に、足元の技術に優れている選手を並べて前線に質の高いボールを供給します。

一見ネームバリューの低い選手たちが集まっているかもしれませんが、ここに載っていない選手を挙げると、セビージャで活躍したガメイロや、PSGからレンタルされたダグバ、トリノやレバンテにいたプルチッチなどはわかる人にはわかる選手たちなのではないでしょうか。


川島永嗣(左)と鈴木唯人(右)

2018年から在籍している川島永嗣選手に加え、冬には清水エスパルスから鈴木唯人選手がやってきてくれました。川島永嗣選手は出番がなく、鈴木唯人選手も3試合のみの出場となりましたが、両者が来季もストラスブールに在籍するかは微妙です。

川島選手は今月末で契約満了となり、鈴木選手はレンタルの加入ながら、他のレンタルの選手より買い取りの必要性が低いというのが現地メディアの予想です。特に鈴木選手は今季はチームが残留争いしている影響で、海外の若手選手起用には消極的だったという背景がありましたが、アンダー世代にも選出されているため、今後の代表活動継続のためには移籍先を吟味する必要があるかもしれません。ただ、デビュー戦のゴールでサポーターの心を掴んでいるのは事実かもしれません。



チェルシーに注目してほしい選手たち

今後この繋がりが強化されることは予想できるのですが、是非ともチェルシー陣営に目をつけてほしい選手がストラスブールにはいるのです!20ゴールを決めて残留に貢献したエースのディアロばかり注目されがちですが、今回は若手中心に3人厳選して紹介していきます!!


ジャン=リスネル・ベルガルドゥ

1998/06/27 ハイチ🇭🇹国籍
170cm

今季の成績 30試合 2ゴール6アシスト
ポジション: インサイドハーフ、アンカー、右サイドハーフ

今季のストラスブールの心臓といったら間違いなくこの人物が満場一致で挙がるでしょう。前半戦低迷したステファン体制においても輝いていたのはディアロと彼ぐらい。小さな体ながら大柄の相手に寄せられても簡単に奪われず、高度な推進力で相手陣内に侵入していく力はリーグトップクラスです。個人的にはPSGのヴェッラッティ、ロリアンのル・フェと並んで「リーグアンの小さな三銃士」に彼を挙げたい気持ちがあり、またプレースタイルも似ているためプレーを見て応援したくなる選手の1人です。しかしながらあまり移籍の噂が出ないのは寂しく、中盤の人員整理が目立つチェルシーにとってはうってつけの人材なのではないでしょうか。

ベルガルドゥのプレー映像がこちら⤵️⤵️



ムアマドゥ・アビブ・ディアラ

2004/01/03 フランス🇫🇷国籍
179cm

今季の成績 29試合 3ゴール2アシスト
ポジション: インサイドハーフ、右サイドハーフ

アントネッティ体制になってからブレイクした選手の1人。チームのエースは「アビブ・ディアロ」であり、同時に出場すると実況者泣かせの選手になることは致し方ない事実です。元々は中盤の選手でしたが、アントネッティによって右サイドに転換されるとドリブル力とスピードで右サイドを一気に突破してエリア内に侵入します。中盤の選手だったこともあって、ネガトラ時にはデュエルの強さを活かして果敢にボール奪取を行い、その運動量も比較的長く維持できます。ストラスブールのスカッドの中では一番評価が上がった選手であり、複数ポジションをこなせることとまだ19歳と伸びしろが十分なことからそれも納得できます。

アビブ・ディアラのプレー映像はこちら⤵️⤵️



イスマエル・ドゥクレ

2003/07/24 フランス🇫🇷国籍
183cm

今季の成績 28試合 1ゴール1アシスト
ポジション: センターバック、ディフェンシブミッドフィルダー

彼もまたアントネッティに自信を与えられて伸びた若手選手。センターバックで出場時はカバーリングの素早さと足元の高い技術で前線に供給し、中盤で出場時は中盤の守備の強度を上げてトランジションの質の向上に貢献しました。そして対人のレベルも試合数をこなすにつれて着実にレベルアップしてきた印象があるので、将来のビッグネームになってもおかしくない人材であると思います。また、複数ポジションどちらのポジションもレベル高くこなせるため、どのようなクラブにおいても重宝されるであろう存在です。個人的にはセンターバックで出場した時の方がより彼に強みを活かしやすいのかなと感じます。

イスマエル・ドゥクレのプレー映像はこちら⤵️⤵️



「BlueCo」にストラスブールが買収されたニュースが報じられた日から、ストラスブールの有望株がイングランド人たちに注目され、偶然にもここで挙げた3選手が注目されていたのを見ました。やはり皆さんお目が高いですね😅



今後の両者の関係性について

今後両者の関係性が深まることが期待されるのは何度も言っていますが、ストラスブールがチェルシーの若手有望株の育て場所として活用されるのではないかというのが大方の予想です。

実際にチェルシーが冬に獲得したダヴィド・フォファナは経験を積ませるためにストラスブールへレンタルされるという報道が出ていました。バログンが活躍してスタッド・ランスに対するグーナーからの注目が集まったように、ストラスブールの名がもっと広まればと思います。

ご覧いただきありがとうございました🔵⚪️

この記事が参加している募集

#サッカーを語ろう

10,940件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?