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タクティクスは、常にポジションが良いプレーヤーの側から現れる 2020 J1リーグ第31節マリノス VS鹿島アントラーズ プレビュー後編

※本稿は前編を見ていなくても楽しめるように作られた前後分断プレビューです。

前節から中5日。どこまで頭と心と体が回復しているかというのは注目ポイントですが、これくらいの休みでは、エネルギーがMAXな状態にはならないとは思います。だからこそ、相手の力も使って賢く戦いたい。そんな試合になれば、最高です。

プレビュータイトルは、ポジショナルプレーの原典と言われる『チェス』の天才Bobby Fischerの言葉です。ふと今回のプレビューを書いていて、そのBobby Fischerの伝記映画『完全なるチェックメイト』を思い出したので、彼の言葉を使いましたが、実に今回にピッタリ。

次節の対戦相手である鹿島アントラーズは、今シーズンの序盤こそしんどい時期を味わいましたが、チームとしてやる事を積み上げてきています。
勝ち点も積み上げられる様になったのには、しっかりと理由があるという事です。
では、プレビュー後編!

1,【守備から組み立てる攻撃型のチーム】

チームを作る時に、攻撃から組み立てるか、守備から組み立てるかというのはよく話題に出るものですが、鹿島のザーゴ監督は、攻撃のために守備から組み立てる監督だと感じます。ちゃんと攻守は一体。

ザーゴ監督のチームのやり方には、間違いなくカウンタープレス、いわゆるゲーゲンプレスというのが存在します。
そもそも、サッキが言うように守備の種類というのはあまり多くありません。故に、ブロック時にボールを奪うやり方と、ネガトラ時のプレスのやり方もリンクしています。

反対に、攻撃の方法は非常に多く、そこから構築するのにはロマンがありますが、そればかりでは結果を出すのは難しい。(我がチームはそれで優勝しましたが)
なので守備から作るというのは、チームマネジメントとして、ある意味正しいと思います。
かといって、引いて守ってのカウンターサッカーでは、リーグタイトルは難しい。なので、攻撃の事を考えた守備を作り、その守備のための攻撃を作るという考えに行きつきます。

鹿島の特徴である『前向きに奪う』というのは、そのまま守攻の切り替えに転換させられる方法ですし、後述する攻撃時にボールを奪われた時の事を考えたポジショニングを形成するのは、攻守の切り替えにスムーズに移行するための方法です。
どちらにも、守備の原則が影響しています。

そしてこれは、攻守の切り替えの極大化であり、切り替えを攻撃時および守備時の中に存在させて、文字通り攻守を一体にしようという事です。
ロティーナのノントランジションの世界とは反対ですね。ロティーナも好きですが、私はこの切り替えを重視する選択の方が好みです。そう、トランジションを大事にするのは、マリノスも同じですね。

さて、これを忠実に実行しようとすると、選手にはピッチの中での勤勉さや真面目さが求められます。
鹿島といえば、強さから見える『ずるさ』にフォーカスされる事が多いですが、この勤勉さがあってこその柔軟なチームだと思います。今回の欧州化は、鹿島に合っているのではないでしょうか。知らんけど。

2,【トランジションの世界への準備は出来ているか?】

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鹿島は守備時に442、攻撃時には3142に変化します。裏側には、菱形の形成という事が見えたり見えなかったり。

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前回対戦からの変化で脅威的なのは、攻撃時にボールを奪われた時の準備が組み込まれている事です。

・【追加】縦にボールを入れる時、縦パスを受ける選手以外が、受け手の選手がボールを奪われる事を想定して、ネガトラプレスに行けるポジション取りを行う。受け手にボールが収まれば、そのままコンビネーションで崩せるし、ダメなら奪い返す。そのための準備をしている。

例図にしてみましょう。

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こんな風に奪われたときの事も考えて、パスを出した後のポジショニングを意識しています。
でも、全部の局面で準備が出来ているわけじゃないですし、立ち位置として、ここに立っていれば正解なんてものはありません。確率論が多分に含まれますしね。

ただ、攻守の切り替えの極大化が、対戦する相手チームに、俺達は準備が出来ているが、お前達は出来ているのか?と問いかける事にはなるでしょう。
しかし今回。
マリノスは『トランジション上等!』のチームです。

鹿島の攻略は、そのトランジションと、まだ固まりきらない攻撃の部分を狙う事で実現出来そうです。

3,【鹿島アントラーズをどう攻略するよ】

鹿島の攻撃に関しては、縦に速く攻めつつ、ボールを失った後のポジショニングを意識しているという素晴らしさはありますが、それは準備が出来ている場合の話です。

まず突っつきたいのは、GKも含めたビルドアップ隊。
ボールを繋ぐチームかどうかは関係なく、攻撃の始まりになるビルドアップ隊をどう潰すかは必ず肝になります。
なので、やる事は簡単。繋ぐチーム同様にプレッシングをしっかりかける事です。ビルドアップ隊の顔を上げる時間を消す事。
3142だとWGが絞れば自然と噛み合うので、後ろの数的同数を許容し、プレスをしましょう。プレススピードで、顔を上げさせないつもりで行くことが大事です。

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これは奪う事よりも、鹿島が取ったポジショニングを無意味にする事や、良いポジショニングがとれないほどの速い展開を作る事が狙いです。
良いポジショニングを奪ってしまえば、タクティクスは発揮されません。

続いて、仮にプレッシングが間に合わないなら、ボール保持者の近い距離にいる選手には厳しめに行くことが重要です。
むしろ、出し手から遠いところにいる選手には、パスコースが空いているように見せても良いでしょう。長い距離の安易な縦パスは、コースがズレやすくカットしやすいため、セカンド回収はこちらが有利になります。

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こうなると、受け手との距離が近くなるように、ボール保持者が持ち上がる可能性があるので、パスの出し手が前進するエリアは必ず潰す必要があります。

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凄く簡単なように書きましたが、まぁ難しい。これが出来るなら、プレスで奪えているだろうという感じもします。
なので縦だけは押さえて、横へのパスコースは放っておくという選択もあるでしょう。

続いて鹿島の守備に対してですが、人に付く前向きで奪う守備なので、ハイプレスでも、ゲーゲンプレスでも、ブロック(押し込む前)でも、付いてきた守備を剥がす事が大事になります。
これは個の力でやっても良いですし、ボールの繋ぎ方とポジショニングで剥がすでも構いません。個の力でやるなら出来るだけ前線でやりたいですが。

ゲーゲンプレス時ならば、複数の選手で囲んでくる事が想定されます。冷静にどこの選手が来ているかを認識し、その選手がいた場所は空いているはずなので、そこに受け手が素早く動いてあげる事が大事です。
とはいえ、鹿島は守備時の陣形と攻撃時の陣形が違うので、これも言うほど易くはなく、頭をフル回転する必要があります。

そして、最後に重要なのは、押し込み過ぎない事です。

サイドを使って奥まで侵入するとこの状況は発生しやすいので、外を使うにしても、中央に楔を入れるチャレンジが出来ていれば、押し込まずにスペースを狙えるでしょう。これは、その次の戦いにも生きるので、狙ってやるかどうかは注目して見てみたいと思います。

4,【マリノスみんなのプレビュー】

アップ時現在ではありませんでしたが、今回もozaさんが書いてくれるかな?

5,【最後に】

さて、スタメン。

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マリノスは、どうでしょう。畠中の代わりに伊藤と予想していますが、怪我人の復帰や松ケンのCB起用もあり得ます。なんせ、次の試合まで中7日なので。他のポジションは、疲労の数値がどこまで復活しているかですが、肉体よりも頭がクリアになっていれば良いなと思います。

鹿島は苦しい。中2日です。しかも、前節で三竿とSHを2名失いました。和泉の怪我と、アラーノのカードトラブルです。まぁ、ここがとてもしんどい。去年の選手権の主役である松村を使ってくるかも。あとは荒木ですね。
他のポジションは変更をしていません。ターンオーバーは十分あり得ます。遠藤を使われると、ザーゴのやり方に去年までの鹿島のエッセンスが加わるので、ちょっとやり方が変わるのですが、文字数的にもう書けない。

という事で、お送りしてきた後編。

ACLまでのリーグ4戦は、徐々にコンディションを上げていきたい。なんて悠長な事は言っていられません。怪我人は出さず、結果は出す。成功体験を多く積み、ACLの頂点を目指すための戦いです。
去年と変わらぬ思いで、盛り上げていきたいと思います。

ここまで読んでいただいた方、読後に何かのアクションを行っていただいた方に感謝いたします。

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