REGES-レグス- 第3話
○本編
……五年後………
□軍事基地[朝]
雲ひとつない快晴。
教官が前に立ち、一般兵数百人を見回す。
教官[40代前半くらいの男性]「諸君。今まで過酷な訓練によく耐え抜いてきた。君たちは選ばれしものたちだ。今この場に立っていることを誇りに思ってくれたまえ。ここ数年間のレグスの討伐数は我らがネラルマーニ帝国に限らず、全世界で減少している。レグスの絶対数が少なくなっているからか?それも確かにあるだろう。しかし!主な原因はあの男と言わざるを得ない!約五年前、かの日本国で起きた大事件。その大事件を起こした張本人にして、現在はレグスの大多数を従え率い我々人類にとって最も損害を与える者。レグスの王、伊座目有栖。この男を必ず我々ネラルマーニ帝国が殺す。そして、いつの日かレグスを絶滅させる。何より市民の平和を守る!これらの思いを胸にこれからもネラルマーニ帝国の兵士として誇り高く仕事に励むように!以上だ!」
一般兵「はい!よろしくお願いいたします!」
教官「よし!訓練に入る。小隊ごとに別れろ!」
□食堂[基地の中][昼食]
ジェルミ・アモル[18歳くらいの男性。以降、ジェルミ]「よう。飯は喉通ってるか?」
ジェルミは一人で昼食をとっていた女性の前に行き話しかける。
アンナ・エルティオ[18歳くらいの女性。以降、アンナ]「あんまりよ…。お腹は空いてるのに疲れすぎて…」
ジェルミ「だよな。何がよく頑張っただよ。ちょっと期待させてすぐこれだ」
アンナ「確かに訓練兵だった時と比べても少しハードになったわね。実戦に投入されることになるんだから、訓練の時より大変になって当然だわって自分を納得させてる…。はぁ…」
「おっ。ここにいたか」
男はそう言うとジェルミの隣に座る。
ジェルミ「お前はどうだ?レイド。飯は喉通りそうか?」
ジェルミが少し意地悪そうな顔を浮かべながら聞く。
レイド・バーン[同じく18歳くらいの男性。以降、レイド]「ん?おう大丈夫だな。腹が減って仕方がないくらいだ」
ジェルミ「…だってよ。アンナ」
アンナ「はぁ…より一層食べる気無くしそう。この体力お化けめ…」
カチャカチャと三人が無言でご飯を食べ続ける。
レイド「そういえば知ってたか?今日やっと戦闘機械服[読み方:フォートアルムム]を着させてもらえるようになるらしいぞ!」
アンナ「へえー」
ジェルミ「ふーん」
レイド「え?なんでそんなに消極的な返事なんだ?訓練兵時代に着ていた練習用じゃなくて本物だぞ!本物のフォートアルムムを着て、さらにパワー型、スピード型、バランス型のどれにするか選べるんだぞ?ワクワクしないのか?」
アンナ「しない」
ジェルミ「説明ありがとよ。まあ、俺もそこまで興味ねえかな」少し残念そうな顔をするレイド。
ジェルミ「…おっ。そろそろそのフォートアルムムの試用の時間じゃねえのか?」
レイド「あ…ああ…。行こうか…」
レイド「俺がおかしいのか…?ワクワクしないものなのか?」[小声]
三人とも立ち上がり、昼食に使ったトレイを片付ける。
□外[運動場]
教官「さっきぶりだな。お前たち。今回のフォートアルムムの試用訓練も俺が担当する。では、小隊ごとに別れろ」
ジェルミ、レイド、アンナが集まる。
(小隊は基本的に四人一組である。そのため…)
他の小隊は大体集まっている。
ジェルミ「アイツはどこだー?」
ソフィア・アメリア[18歳くらいの女性。以降、ソフィア]「お待たせ…」
レイド「お、来たな。よし!これで全員揃ったな!」
ジェルミ(コイツ乗りたい欲が溢れ出てるなー)
教官「よし。全員揃ったな。それでは一人ずつ着ていくことになる。順番を決めろ」
レイドが目を輝かせながらジェルミ、アンナ、ソフィアを見る。
ジェルミ「いいぞ先で」
アンナ「私もお先どうぞ」
ソフィア「…どうぞ…」
レイド「ありがとう!みんな!じゃあお先に!」
ジェルミ(過去一嬉しそうな顔してらぁ)
レイドがフォートアルムムを着る。
着るとはいうが実際には乗り込むと着るの間くらい。もっというと包み込まれるというイメージ。
レイド「うおーすっげー!思い通りに動くぞ!」
レイドが走る。シャドーボクシングをする。ジャンプするなどで興奮している。
教官「練習用を着てきただろうからその感覚を思い出しながらバランス型、パワー型、スピード型、どれが自分に合うか試していくように」
(戦闘機械服、通称フォートアルムム。レグスと戦うために人類が生み出した戦闘用兵器だ。型は合計で三つあり、バランス型はその名の通りバランスよく自分の持つ身体能力を跳ね上げてくれる。そして、パワー型はバランス型と比べてスピードが落ちたり細かい動きがやりにくくなるが、圧倒的破壊力とタフさが売りだ。そして、最後にスピード型。バランス型と比べコイツは防御力が落ち、パワーも落ちる。が、その代わりに圧倒的なスピードと細かい動きを手に入れることができる。使い勝手はバランス型がよく次にパワー型、スピード型に至っては難しすぎて使う人はほとんどいない。そのため使用比率はバランス6.5、パワー3、スピード0.5といったところだ)
ジェルミ「まあ、なんだかんだ言いつつコイツに俺たちの命預けることになるんだから、レイドみたいにもっと興味持たねえとな」
アンナ「まあねぇ。けど、アレははしゃぎ過ぎだと思うわ…」
アンナの視線の先ではレイドがはしゃぎ過ぎた結果、教官に怒られるという図が映し出されている。
それを見たジェルミ。
ジェルミ「……だな………」
□食堂[夕食]
またもさっきと同じ場所で三人で夕食をとっている。
レイド「いやー最高だったな」
ジェルミ「お前メンタル強えな」
レイド「へっ?そうか?」
アンナ「私なんかさっきの時間の記憶、アンタが教官にこっぴどく怒られてたことしか残ってないよ…」
レイド「あーまあそんなこともあったな」
ジェルミ(コイツは恥という感情を母体に置いてきたんだろうな…)
アンナ「はぁ…」
レイド「んで結局、俺がパワー型、ジェルミとアンナがバランス型、ソフィアがスピード型で決定だったよな?」
ジェルミ「ああ」
レイド「珍しいよな。スピード型」
アンナ「うん…けど使いこなしてた。すごいよ。彼女。」
レイド「いやー良かったよな。俺たちはバランス二人にパワー一人、スピード一人で四人一組としてバランスいいからメンバー変更なし。これからもよろしくな!」
ジェルミ「ああ、よろしく」
アンナ「よろしく」
□基地内
ジェルミとレイドが二人で歩いている。
ジェルミ「悪い。レイド。俺今から図書室行ってくるから先に部屋に帰っててくれ」
レイド「おう。分かった。また明日な!おやすみ」
ジェルミ「おやすみ」
ジェルミとレイドが分かれ、ジェルミは一人で図書室へ向かう。
(ここネラルマーニ帝国レグス討伐軍基地本部では、比較的成績優秀者が全国から集められている。そのため、レイドもああ見えて実は成績優秀者だ。そして、そんな優秀者が集められるこの本部には国内最高峰の図書室が完備されている。中には重要機密事項なんかもあったりするとの噂だ。だからこそ俺はここに来なければ行けなかった)
図書室に入り本を物色するジェルミ。
(俺の親父はフリーライターだった。そんな親父が四年前失踪。そして約一年後死体となって見つかった。親父が失踪する前日何かに怯えていたことを覚えている。
そして、失踪当日俺に言ったことを今でも覚えている。
私に何かあっても必ず詮索するんじゃないぞ。
そして失踪した。
親父の死の真相を知りたい…なんていう綺麗事じゃない。ただ知りたい。親父が何を知り何を見たのか。俺も知りたいんだ。国に消されてしまうような何かなんて面白すぎるだろ。
そんな思いでこの本部へと入隊した
けど…)
ジェルミ(手掛かりなし…か…)
ジェルミは図書室を後にする。
自分の部屋へと向かう。
ジェルミ(親父が調べていたことはこの国の歴史だ。突然現れたとされるレグス。そんな非科学的な事ありえない。だが、それがあり得てしまっているという世界が語る事実のみで多くの者は満足してしまっている。俺以外にももちろん歴史の真実を知りたいと考える者は聞くが結局誰も辿り着けていないままだ)
ジェルミが自分の部屋のドアを開けベッドへと倒れ込む。
ジェルミ(この国の真実を知ることは同時に世界の真実を知ることにもなるんじゃないかと思っている。なら尚更面白い。必ず知ってみせる。どんな手を使ってでも…)
ジリリリリリリリ
警笛が鳴り響く。
ジェルミ(寝てたのか…俺…。てか、なんだこの音?)
「総員直ちにミーティングルームに集まってください」
ジェルミ(ただ事じゃないな…)
□ミーティングルーム[かなり広い][時計があり時間は23時を示している]
教官含めほとんどの兵士が集まっている。
六十代ほどの男性が一番前であるモニターの前に立つ。
ジェルミ(本部長!?事実上軍のナンバー三の人じゃないか…中々お目にかかれないって噂の…)
本部長「夜分遅くに申し訳ない。ただ仕事の時間だ」
第4支部から遠征に出ていた一団があったんだが先ほど援護要請が入った。
位置的に一番近いのがこの本部であるため君たちの中から大隊を組み援護に向かってもらいたい。
どこの小隊を連れて行くかはもう決めてある。
モニターに援護に向かうメンバーが映される。
その中にはジェルミたちの名前もある。
本部長「そして、今回一番重要なことを伝える。伊座目有栖、通称レグスの王が現れた。みな心して援護に向かってくれ」
戦場で成長した有栖の睨みつける顔が映し出される。
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