令和の歳時記 アケビ
秋の野山を散策する楽しみのひとつは、「自然からの贈り物」に出会うことである。数年前から目をつけていた場所を訪れると、今年もちゃんとアケビが実っていた。
アケビはツル性の植物で、他の木々を覆い隠すように繁茂している。アケビの実は生い茂った薮の空中で、ふんわりとぶら下がっていた。
まだ、若い実は黄色く、しかも3、4つ固まっているので、小さいバナナのようで可愛らしい。
ぽっかりと口の開いたアケビを見つけて、すかさず採取して食べた。「とても美味しい」から笑みが自然と溢れる。
ただ、それほど甘くはない。超薄い“砂糖水”って感じだ。
2つ目の房を手に取り、観察してみる。白い果肉に透けて見える黒い種子がキラキラしていて美しい。
果肉は食べるというより、少ない果汁を吸うように「飲む」のだ。そして、残りの種子は外に吐き出す。
一見、下品のようだがこれはアケビにとっては子孫繁栄のための戦略だと言えるのだ。
わたしや野鳥がそうすることでより広くアケビの生育範囲が広がることになる。
アケビの名の由来は「開け実」から。わたしからすれば「開け美」の方がピンと来る。
また、アケビの茎は木通(もくつう)とも呼ばれ、腎臓炎、尿道炎、膀胱炎などのむくみに利尿剤として利き目があると言われている。
また、地方によっては外皮にひき肉などを入れて食べたり、アケビ酒として嗜まれている。
ツルは頑丈で篭などの細工品として重宝されている。面白いことに、このアケビのツルは他の植物に左巻きに巻き付く習性を持っている。
以前マレーシアで見た寄生植物を思い出した。アケビは里山の日当たりの良い場所を好む。
そして花がまた美しい。秋は見られないが初春4~5月に咲く紫色の花はサクラより品があって心を和ませる。
まだまだこの季節里山へ行けばアケビに出会える。見つけたら里山の恵みに感謝しつつ来たる春の紫色の花を再び観察しにやって来るゆとりを持ちたいものだ。
「自然からの贈り物」に感謝する秋はまだまだ始まったばかりだ。
分布●北海道を除く、本州・四国・九州に分布。日当たりのよい山野、やぶ地に自生している。樹木に巻き付いて生育する。
繁殖期●花期は4 - 5月 果期は9 - 10月
大きさ●花は10mm
英名●chocolate vine, five-leaf Akebia
和名●アケビ(木通、通草、山女)
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