令和の歳時記 カラスウリ
晩秋も終わり、確実に冬がやってきたと実感する毎日だ。夕暮れの河川敷を歩くともう鳴く虫もいない。
替わって北から渡ってきた鳥たちの種類が増えている。寒い中で鳥のさえずりが聞けるのは、何となく心が温かくなる。
河川敷のススキ林の向こうに竹林があって、何やら赤い実がチラホラと見えていた。まさか「トマトでは?」と疑うほど鮮やかだ。
近寄って観察すると卵のような楕円形をしており、茶色い季節を迎えている現在では異彩を放っていた。正直、わたしはこの赤い実が何かわからなかった。
急いで調べてみるとカラスウリという植物だとわかった。
好奇心の強いわたしは、大抵の植物は触って観察するのだが、このカラスウリの放つ赤色に少々怖じ気ついてしまった。触ったりしたら、かぶれてしまうのではと勘ぐってしまった。
わたしにとっては警戒色と映ったのだ。ひと通り写真を撮って、家路について後悔した。
わたしに後悔には少々、人間の卑しい部分もある。何とこのカラスウリの種は“縁起物”と文献に書いてあったからだ。
形が大黒様に似ているからだそうだ。「しまった、採ってくれば良かった」と舌打ちをしてしまったのだ。カラスウリの種を財布に入れておくと金運が良くなるとのこと。
カラスウリの名の由来はカラスが食べるからだと言われていますが、実際は食べません。
または葉が大きく生育旺盛なので、絡みついた木を枯らしてしまうことから付いたと言われています。花期は夏です。
しかも花びらは糸のように裂けて、真っ白なレースを広げたように美しいとのこと。これは来夏絶対に見たい。
いまならドライフラワーにするには最適だと書いてあった。卑しいわたしは再度、河川敷へ行って、蔓ごと採集しようと思う。
たぶん、種を真っ先に採って財布に入れる。いつも他力本願のわたしの想いが叶った試しはないが、日々に楽しみを持つことは良いことだと思う。
分布●本州以南
生息地●平地、低山地の田畑、林縁
花期●6〜7月
大きさ●実は6〜8㎜
学名●Trichosanthes cucumeroides
和名●カラスウリ(烏瓜、唐朱瓜)
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