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令和の歳時記 クズ

秋の花が咲き乱れている。車を降りて歩いてみると、芳醇な香りが漂ってくる。気持ちが和らいでいくのがわかる。その香りの正体は「クズの花」だ。

いま、秋の山道や川辺を歩くとクズの花に会うことが出来る。わたしはクズの花は真夏というイメージがあったが、今年はどういうわけが九月中旬に最盛期を迎えているようだ。

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夏の長雨の影響なのかわからないけれど、いつもより遅いことは間違いない。

クズという名前が悪いのか、自然散策をする人もあまり興味を示さない。紫ピンクの花びらはとても美しい。大抵は大きな葉っぱの下に隠れるかのように咲いている。

クズの根っこを利用して葛粉や葛餅などで用いられる通り、とても栄養価が高い。「お花はどうか?」このクズの花の香りはジャスミンの香りに近い。

手のひらで軽く揉んでみると更なるリラックス効果を与えてくれる(以前紹介したヘクソカズラと違う)

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そしてクズの花は「秋の山菜」として楽しめる。抜群に美味しいのは天ぷらだ。出来れば若芽がオススメだが、お花の方も結構美味しい。

その際は花びらだけを集めて揚げるのがベストだ。ほんのりとした甘みと野草独特の苦味が良い。クズのお花はお茶にもなるそうだ。乾燥させてお湯を注ぐだけ。イソフラボンが多く、二日酔いに効くそうだ。

葉っぱは怪我をして際の止血どめにも使っていたそうだ。

とても有効活用できる植物なのに、アメリカでは嫌われている。「ジャパニーズ・ギャング」あるいは「グリーンモンスター」と異名を持っている。

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最初にアメリカに持ちこまれたのは1876年のフィラデルフィア万国博覧会の時だった。美しいお花に人気が集まり、さらに土壌にしっかりと根を張るので、河川や山野の土砂流出をふせぐ植物としてアメリカ全土で奨励されたそうだ。

しかしながらその繁殖力の強さは尋常ではなかった。アメリカ在来の植物にも多大な影響を与えて、「侵略的外来種として君臨」している。

クズを除草する費用は年間600万ドルを下らないそうだ。もはや根絶不可能だそうだ。

でも、冷静に考えてみるとクズにとっての戦略は成功していると言えるのだ。すべての生き物は自身のDNAを広く伝えることを使命としているからだ。

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つまり日本人の手を介して、アメリカへ上陸したのである。その地で花を咲かせて、アメリカ人から「お気に入り」を頂き、全土へ運ばれ行く。

さらに「良いね」を拡散させていったのである。

その結果として、生き残ったのだ。とても逞しい。出来れば「頑張って欲しい」と言いたいが、さすがにアメリカでは猛威となっているため口をつぐむことにしている。

クズの花を何本か摘んで持ち帰って、枕元に置いてみた。リラックス効果があるのか、その日は良く眠れた気がした。わたしにとっては良いことばかりのお花だ。

分布●温帯および暖帯に分布。北海道から九州までの日本各地。中国からフィリピン、インドネシア、ニューギニアに広く分布している。
生息地●山野の林内や林縁、河川、荒地など。
繁殖期●5~9月

大きさ● ツル性で繁茂して10メールを超える
学名●Pueraria montana var. lobata

和名●クズ(葛)
英名●kudzu

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