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【小説】生かされているということvol.13

6月10日午後6時過ぎ、ドクターからの説明の後、妻と会った。

どんなことがあっても受け入れようと決意して会った。


本人は、
「きてくれたんだー」と喜んでくれた。

目の膿も少し良くなってきた様子。

「うっすら見えるようになってきた」と。


昼に、お義母さんや母や娘が来たことを伝えた。

言われて少し間があって。





「あー!ぼんやりしか見えていなかったからわからなかった!声は聞こえてたよ!」

「ただ、何を喋ったか覚えていない笑」と。


あっけらかんに喋る妻に、私が必要以上に心配して肩に力が入っていたのが馬鹿らしくなった。


まあ、私たちも昨日の夜ご飯なんだっけ?ってよくなる。


繋がれていた管も少し外れていた。低温治療も終わり、寒さも無くなった様子で血色もよくなっていた。


本当の意味で安心した。


記憶の心配はあるけど、対処はできる。
命さえあれば!
と覚悟ができた。


よし笑顔で乗り切ろう!
と秘かに決意した。


妻が倒れた状況や娘のことを話をした。何度でも聞かれても話をするつもりでした。



時間はあっという間だった。



午後6時15分面談時間は終わり帰宅した。

明日はもっとよくなると希望を持って。


その晩は安心して本当にゆっくり眠ることができた。




6月11日午前7時、再び妻の病室。

笑顔で妻が迎えてくれた。目の腫れも良くなっていた。むくみも見られず顔色も良さそう。

よかった。

次は記憶。

……

実は前の日、帰宅してから色々調べた。

記憶の訓練方法を。

その一つに、「思い出す」ことがあった。

妻の場合は、脳に酸素が供給されていないことによる脳細胞(ニューロン)損失が原因で短期記憶が保持できないと思われる。

であれば、新しくニューロンをつくれるようにすればいい。

だから「思い出す」訓練を秘かにしようと思った。

……

ということで、訓練を秘かにした。


「昨日目覚ましたね!どうだった?」

「視界がぼんやりしてたのは覚えている。だれか来てた!」

「朝、目覚ました時は、俺がいたよ。」
娘もいたよね!と妻。

記憶は多少あるが、混同している様子。
娘がいたのは、昼の面会時。朝はわたしだけ。


「昼の面会時は、お義母さん、母も来ていたよ。」と伝えると
私の母が来ていたことはわからなかった様子。

「いつ来てくれたの?」と妻。
妻が倒れてからいてくれてること、さらに1週間の休みをとっていてくれてることを伝えた。

そのあと沈黙。


「声聞こえた気がする!」と妻。
記憶がつながったのか思い出していた。

少しずつこうやって前の日のこと、前回の面会のことを出しながら「思い出す」ことをしていこう。100%元に戻れることはないかもだが、まだ若いし大丈夫!と信じて。

あっという間の面会時間。次に会うことを楽しみにして、病室を後にした。


時刻は、6月11日午前7時15分を過ぎていた。




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