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【小説】生かされているということvol.3

6月8日4時57分

近づくサイレンの音を聞きながら、心臓マッサージを繰り返す。

すでに、心臓マッサージを開始してから5分が経過している。


映画だと、心臓マッサージを繰り返すと目が覚めるイメージ。


しかし、現実は違った。


まったく目を覚まさない妻。呼びかけても反応はない。


絶望を感じる間もないくらい必死に心臓マッサージをしていると、


「もうじき救急隊員が到着します。玄関のカギをあけてください」


実は、そこからの記憶がうっすらしかない。


子どもを連れて2階の寝室から降りたのか、どのタイミングで隊員と代わったのか、母親やお義母さんにいつ電話したのか。


ただ、はっきりとAEDの音が2回鳴り響いた記憶はある。

しかし、その後は、思い出せない。

気が付いたら、病院の待合室だった。


時刻は、6時。


………


こんなことが過去にもあった。人は、激しいストレス環境に置かれると自己防衛反応で、その時の記憶を奥深い場所に隠すらしい。


これまでに激しい経験、それは、3.11、東日本大震災であった。

幸いにして、津波の被害はなかったが、震度6強の地震を体験している。

「死ぬかもしれない」と初めて思った瞬間だった。

実家に帰省しているときだったが、その時・その後の記憶がうっすらしかない。

思い出そうとしてもズキンと頭が痛くなるだけ。

ただ、はっきりと地震の感覚は残っている。

画像はYuya Sekiguchiさんのを掲載。


………


今回もそう。気が付いたら、待合室だった。


治療室で治療をしているようだが、様子は見えない。

矢継ぎ早に、説明を受け、カテーテル検査・手術の同意書にサインをした。


時刻は、6時半。病院に入ってからすでに30分は経過していた。























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