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能率的税金?のアイディア⁉

『あまのじゃく』 1950/9/16 発行 
文化新聞  No. 45


水野越前守か? 仁徳天皇か?

     主幹 吉 田 金 八

 自動車を走らせるのに経済速力という言葉がある。
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 つまりガソリンの経済、車両の破損などを考慮して50キロの高速、10キロの低速より、25キロ位の中間速力がガソリンの消費も少いし車も傷まないと言うことである。
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 上野能率博士の研究によると、労働者の給料もあまり高給でもだんだん働かなくなるし、そうかと言って馬鹿安い賃金も決して事業主を利さない。高くなく安くなく中間(これもなかなか難しいことではあるが)の給与が一番能率を増進させると言う。
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 この筆法をもってすれば、 もなければならない。百姓と醤油粕は絞れば絞るほど出ると言う水野越前守の式で、アコギに税金を賦課するのが政治の得か、程の良いところで民福を先に考えた仁徳天皇の式が良いか、面白い課題である。
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 取れない税金を取るための差押さえ、差押さえ物件を引き取る自動車賃、倉庫料、売立費用、収税吏の人件費、加重税金のための商売意欲や購買力の喪失、絶望感による犯罪の増加、税金を取るために益々金が要り、また税金を増す、国民は愈々消沈する、果たして能率的税金であろうか。


 コラム『あまのじゃく』は、埼玉県西武地方の日刊ローカル紙「文化新聞」に掲載された評判の風刺評論です。歯に衣着せぬ論評は大戦後の困窮にあえぐ読者の留飲を下げ、喝采を浴びました。70年後の現代社会にも、少しも色褪せず通用する評論だと信じます。
 このエッセイは発行当時の社会情勢を反映したものです。内容・表現において、現在とは相容れない物もありますが、著作者の意思を尊重して原文のまま掲載いたします】

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